サントリー美術館で「鈴木其一 江戸琳派の旗手」(後期)を観た! | とんとん・にっき

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サントリー美術館で「鈴木其一 江戸琳派の旗手」を観てきました。観に行ったのは10月21日のことでした。いわゆる「後期」にあたります。その日は、入口に大きく「あと10日」と掲示が出ていました。


出品目録を見ると、作品は合わせて201、すごい数です。図録も340ページと分厚いです。高いです。海外からも、メトロポリタン美術館やファインバーグ・コレクションが目立ちます。目玉はもちろん鈴木其一の「朝顔図屏風」ですが、前期に観られなかった「夏秋渓流図屏風」も「風神雷神図襖もよかったですね。が、しかし、小品ではやはり細見美術館が数も多く、優品が目立っていました。


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今回の「鈴木其一 江戸琳派の旗手」、展覧会の構成は、以下の通りです。


序 章 胎動~江戸琳派の始まり~

第1章 誕生~抱一門下の秀才~

第2章 躍動~其一様式の確立~

第3章 挑戦~絢爛たる軌跡~

第4章 継承~其一派と江戸琳派の展開~

第1展示室



酒井抱一・鈴木其一・谷文晁・渡辺崋山ほか画

「文政三年諸家寄合猫図」

72名の書家・絵師などが金泥で区切られた石垣形の中に書や絵を寄せる。うち5人に年紀があり、文政2年(1819)10月から文政3年4月までを含む数カ月の間に回覧して記されたものと推察される。文政3年は抱一の還暦の年にあたり、本図をその祝いの証とする説もある。中央下に抱一の宝珠図があり、そのすぐ下に、赤地に金泥で抱一の養子・鶯蒲の椿図、さらにその下には抱一が吉原から身請けした遊女・小鸞女史(妙華)が漢詩を記す。鶯蒲は小鸞女史の願いで養子に迎えたと伝え、文政3年には13歳、抱一と小鸞が上下を固めているのも若輩の鶯蒲を気遣ってのことだろう。

其一はその近くに、闇に潜む蟹を描く。25歳の草書落款を確認できるとともに、抱一一門のなかで、其一が家族に準ずる一であったことがうかがわれる。抱一門下では他に抱和(生没年不詳)が福寿草図を寄せる。ほか、絵師としては谷文晁やその弟子星野文良、渡辺崋山ら文晁一門。また宋紫岡、長谷川雪旦、さらに浮世絵師の歌川豊国、歌川国丸、鳥文斎栄之、蹄斎北馬。亀田鵬斎、菊池五山、中村仏庵ら書家の名前も見える。抱一が中央付近の宝珠を描いていることから、発案者は抱一に親しく、其一もまた、このような豊かな江戸の文化人ネットワークの一端にいたことが知られる。



鈴木其一「夏秋渓流図屏風」

檜が林立する山間を、渓流が勢いよく流れている。右隻には白い山百合の花、左隻には紅葉した桜を描きわけ、夏から秋へかけての季節の推移にtもなう自然の変化も巧みに絵画化している。気がつくと右隻中央の檜の幹には蝉が夏を惜しむ声をあげており、左隻の檜の葉には少しずつ枯れかかる様子がみてとれ、桜紅葉も、今しも紅葉が渓流にはらりと散りかかる瞬間を描いている。樹木の幹や岩肌に執拗なまでに貼りついた点苔は、美しさや心地よさよりも、どこか怪しい雰囲気を画面に醸し出す。




鈴木其一「風神雷神図屏風」

宗達、光琳、抱一という琳派の先達たちによって受け継がれてきた風神雷神という画題を、其一刃屏風ではなく襖の大画面に移し替えた。元は二曲一双の屏風から、それぞれ左右に余白を加えた襖八面に画面が拡張されている。制作された当初は風神と雷神が襖絵の表裏を成していたという。絹地の上に、滲みを利かせた黒雲を描くが、風神を載せる雲は下から勢いよく吹き上げる風を感じさせ、対する雷神を取り囲む黒雲は、いかにも稲光が走りそうな雨をはらんだ雲にみえる。





第2展示室


市川其融「四季草花虫図」

市川其融(生没年不詳)は其一の弟子で下総古河の藩士。作品は多くは知られないが、濃彩で鮮やかに描く画風に長けていたようだ。本図は一図に四季の花を描き込んだもの。紫陽花、透かし百合、芙蓉を中心に、藤や萩、石蕗(つわぶき)の花も描かれる。藤の下の片栗は其一の摺物にも取り上げられている。しろい芙蓉の花に止まるクロマルハナバチは、この絵の要の役割を果たしている。藤や萩の細い蔦や枝の上で蟷螂(かまきり)がバランスをとっているのは、抱一の「四季花鳥図巻」(東京国立博物館)中の蟷螂を意識したものだろう。他にも蜻蛉(とんぼ)、紋白蝶、鈴虫、蝸牛などが描き込まれており、四季の草花草虫を賑やかに配した作品となっている。





第3展示室






「江戸琳派の真打、其一登場。」

鈴木其一(1796-1858)は、琳派様式を江戸で再興した酒井抱一(1761-1828)の最も優れた弟子として知られています。その画風は琳派の華麗な伝統を継承しながらも、鮮やかな色彩対比や、ゆたかなデザイン性など、現代にも通じる斬新さにあふれており、近年、とくに注目を集めている存在です。国内外から其一の代表作品がかつてない規模で一堂に揃うこの展覧会は、其一の知られざる画業の全貌に迫る貴重な機会となります。

琳派は、江戸初期の本阿弥光悦や俵屋宗達、江戸中期頃に活躍した尾形光琳、尾形乾山により確立されました。光琳活躍期の約100年後に、江戸の地で琳派の再興を図ったのが酒井抱一です。若くして抱一に入門した其一は、早々と頭角をあらわし、信任を得ました。文政11年(1828)に抱一が没して以降は、次第に師風を超え、幕末期にかけて大きく変容を遂げます。其一の作品には琳派の枠組みを超えて、18世紀に京都で活躍した円山応挙の影響が指摘され、同時代に江戸を生きた葛飾北斎や歌川国芳の画風とも響き合う独自の造形感覚がうじゃがわれます。さらに其一はぬス子・守一や多くの弟子を育成して、近代から現代まで続く琳派様式の継承をうながし、まさに江戸琳派の旗手として目覚ましい活躍をみせました。


日本での公開は12年ぶりとなる「朝顔図屏風」(アメリカ・メトロポリタン美術館)は東京会場のみで全期間展示されます。その色彩の鮮烈さ、その構図のいさぎよいまでの大胆さ。伝統文化の雅なエッセンスを取り込んだ琳派様式に、黒船来航に象徴される日本の変革期ならではの先鋭な時代感覚を反映して、よどむところのない其一の絵筆が金地の大画面に冴えわたります。其一のいくつもの傑作に直に触れられる稀有な機会をぜひお見逃しなく。


「サントリー美術館」ホームページ


kiizu 「鈴木基一 江戸琳派の旗手」

図録

編集:

サントリー美術館

姫路市立美術館

細見美術館

読売新聞社

発行:

読売新聞社




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