サントリー美術館で「その名は蔦屋重三郎(後期)」展を観た! | とんとん・にっき

サントリー美術館で「その名は蔦屋重三郎(後期)」展を観た!

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サントリー美術館で「その名は蔦屋重三郎(後期)」展を観てきました。会期は12月19日まで。表示版に「あと9日」と出ています。僕が観に行ったのは12月9日でした。「その名は・・・」の前に、「歌麿・写楽の仕掛け人」と付いています。蔦屋重三郎、画家ではなく、版元に焦点をあてた展覧会です。


「内容は、歌麿、写楽はもとより、他の多くの浮世絵師の作品をはじめ、絵草紙、狂歌本、黄表紙など多彩な出版物、風俗図屏風などをそろえて、豪華であると同時に個々の画家だけではつかみ切れない幅広い江戸文化の一面をよく伝える贅沢な展示となっている。秀逸な企画と言うべきであろう」と、高階秀爾は朝日新聞で述べています。

前にも書きましたが、やはり歌麿と写楽の作品が中心の展覧会です。従って、前期だけではなく、後期もこの展覧会を観ておくべきであろうと、再度サントリー美術館に観に行ってきました。「大首絵」は蔦屋重三郎が歌麿とともに発明し、写楽とともに展開した、と田中優子は図録で述べています。


蔦屋重三郎の数々の仕掛けを、田中は以下のように整理しています。

1、吉原の年中行事を核に、吉原を「文化の別天地・発信地」とした。

2、本を、本であるとともに、江戸の出版物と吉原と江戸文化の宣伝媒体とした。

3、連(れん)のなかに入って人と人をつなげ、連を出版に結びつけ、その結果、後世の日本人に「連」の存在を知らしめた。

4、横のつながり、縦(世代間)のつながりの両方において、その間に立つ「橋渡しの人」を重要視し、そのような人々と連携した。

5、江戸文化を担うスターを生み出すことで、日本中の「江戸っ子」と「江戸文化」に確かな位置を与えた。

6、作品の中に「キャラクター(個性を持った独自の存在)」を立ち上げる仕掛けを作った。


展覧会の構成は、以下の通りです。
第1章 蔦重とは何者か? ― 江戸文化の名プロデューサ―
第2章 蔦重を生んだ<吉原> ― 江戸文化の発信地
第3章 美人画の革命児・歌麿 ― 美人大首絵の誕生
第4章 写楽“発見” ― 江戸歌舞伎の世界

吉原遊女の一日を一刻十二図に描き分け羅揃い物「青楼十二時」は、歌麿による全身図の美人風俗画の代表的な傑作です。今回のものは川崎・砂子の里資料館所蔵のものですが、僕が「青楼十二時」を揃いで観たのはいつ、どこでだったか、いずれにせよ遊女の通常は客に見せない日常の姿が描かれているのは、たいへん興味深いものでした。例えば「卯の刻」、午前6時頃、帰り支度をする泊まり客に羽織を着せようとしていますが、その羽織裏には達磨の図が見えます。普段は見えないところに贅を尽くすのが陶磁の通人の流行だったそうです。


また、写楽ですが、来年4月から5月にかけて「写楽展」が、東京国立博物館・平成館で開催されるようで、今から待ち遠しいのですが、「写楽のほとんどすべての作品を網羅する」と強気で言います。「寛政6年(1794)5月、江戸三座の役者を描いた大判雲母摺りの豪華な作品28図を一度に出版するという華やかなデビューを果たした東洲斎写楽は、翌年正月に忽然と姿を消しました。その間10か月、写楽画残した版画は140図以上確認されており、・・・」とチラシにあります。今回の「蔦屋・・・」も、前期、後期合わせると、写楽の作品は20点、これほど纏まって写楽の作品を観ることは少なく、なかなか見事なものでした。


第1章 蔦重とは何者か? ― 江戸文化の名プロデューサ―




第2章 蔦重を生んだ<吉原> ― 江戸文化の発信地






第3章 美人画の革命児・歌麿 ― 美人大首絵の誕生






第4章 写楽“発見” ― 江戸歌舞伎の世界





歌麿・写楽の仕掛け人 その名は蔦屋重三郎
18世紀後半、安永・天明・寛政期の江戸には、浮世絵の喜多川歌麿、東洲斎写楽、戯作の山東京伝、狂歌の大田南畝(なんぽ)といった江戸文化を彩る花形スターが登場します。このスターたちの作品を巧みに売り出し、江戸文化の最先端を演出・創造したのが、版元の蔦屋重三郎でした。江戸吉原の人気ガイドブック『吉原細見』の独占出版、狂歌と浮世絵を合体させた豪華な狂歌絵本の刊行、当時の情勢を風刺した京伝らによる戯作の出版、歌麿の才能を存分に開花させた美人大首絵の発明、謎の絵師・写楽の“発見”など、次々と流行の最前線を創り出し、リードした人物です。本展では、この名プロデューサー「蔦重」の出版物を通して、多様な“江戸メディア文化”の華をご紹介します。

「サントリー美術館」ホームページ


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