サントリー美術館で「その名は蔦屋重三郎(前期)」展を観た! | とんとん・にっき

サントリー美術館で「その名は蔦屋重三郎(前期)」展を観た!



サントリー美術館で「歌麿・写楽の仕掛け人 その名は蔦屋重三郎」展を観てきました。 目を引いたのは、4階から階段を降り、大きな吹き抜け空間の第2展示室でした。ただ一つ、「耕書堂」を再現した箇所です。府中でもちょこっとお店の感じが分かるようなしつらえはありましたが、今回は本格的な江戸時代の「耕書堂」のお店の復元(?)でした。並べられている、あるいは、吊り下げられている売り物の「浮世絵」が、買いたくなるようなディスプレーでこれまた素晴らしい。江戸時代はこうして「浮世絵」を売っていたのか、よく分かりました。


展覧会の構成は、以下の通りです。
第1章 蔦重とは何者か? ― 江戸文化の名プロデューサ―
第2章 蔦重を生んだ<吉原> ― 江戸文化の発信地
第3章 美人画の革命児・歌麿 ― 美人大首絵の誕生
第4章 写楽“発見” ― 江戸歌舞伎の世界

話は最初からずれましたが、各章のタイトルがまたいい。「蔦重とは何者か? 江戸時代の名プロデューサー」とか、「蔦重を雲だ<吉原> 江戸文化の発信地」、等々、どれを取っても分かり易い。しかし「蔦重」だけでは展覧会は成り立ちません。結局のところ浮世絵の作品は、「喜多川歌麿」と、そして「東洲斎写楽」の作品に多くを負っています。歌麿と写楽の作品は、もう何度も観たことがあり、かつ評価が定まっているので、僕がとやかく言うまでもありません。が、しかし、歌麿の「青楼十二時」は外すわけにはいきません。吉原遊女の一日を一刻ごと十二図に描き分けた揃い物です。


そうそう、今回の目玉を忘れていました。喜多川歌麿の「女達磨図」です。昭和11年に栃木県で発見され、その後行方が分からなくなっていましたが、平成19年秋に再発見され、大きなニュースになりました。修復されて栃木県で展示されたとき、観に行きたかったのですが果たせず、今回観ることができました。女達磨図は英一蝶が創始とされる図様、だそうです。一蝶の参考出品「吉原風俗図巻」、会場で確かに見た記憶があるんですが、また展示替えリストにもありますが、探し方が足りないのか図録に載っていません。「歌麿のライバルたち」に出てきた勝川春朗、この人葛飾北斎の若い頃の名前だったんですね。あるいは「北斎展」などで何度も出ていたかもしれませんが、僕は今回初めてその作品を、わずか数点でしたが意識して観ました。また、北尾政演は山東京伝、北尾政美は鍬形蕙斎、うーん、名前は難しい。


絵の中には、画と賛があったり、あるいは狂歌師との合作はあるでしょうが、一枚の浮世絵に3人で合作しているのが、目を引きました。異色の取り合わせの絵師たち、それは北尾重政と勝川春章と宋紫石、3人による合作で「福禄寿と二美人図」です。手前の美人は勝川春章と北尾重政が描き、背後の福禄寿は宋紫石が描き加えた、と言われています。それぞれの持ち味を活かしたコラボレーション、といったところです。アイデアとして面白かったのは、勝川春朗(葛飾北斎)の「新板七へんげ三階伊達の姿見」、いわゆる「着せ替え人形」というわけです。他に、北尾政美(鍬形蕙斎)の「浮絵東都堺町二町まち芝居之図」は、まさに西洋の透視図法の見本のようなものです。最後に、写楽の「大童山土俵入り」はご愛敬ですね!


第1章 蔦重とは何者か? ― 江戸文化の名プロデューサ―


第2章 蔦重を生んだ<吉原> ― 江戸文化の発信地





第3章 美人画の革命児・歌麿 ― 美人大首絵の誕生





第4章 写楽“発見” ― 江戸歌舞伎の世界





歌麿・写楽の仕掛け人 その名は蔦屋重三郎
18世紀後半、安永・天明・寛政期の江戸には、浮世絵の喜多川歌麿、東洲斎写楽、戯作の山東京伝、狂歌の大田南畝(なんぽ)といった江戸文化を彩る花形スターが登場します。このスターたちの作品を巧みに売り出し、江戸文化の最先端を演出・創造したのが、版元の蔦屋重三郎でした。江戸吉原の人気ガイドブック『吉原細見』の独占出版、狂歌と浮世絵を合体させた豪華な狂歌絵本の刊行、当時の情勢を風刺した京伝らによる戯作の出版、歌麿の才能を存分に開花させた美人大首絵の発明、謎の絵師・写楽の“発見”など、次々と流行の最前線を創り出し、リードした人物です。本展では、この名プロデューサー「蔦重」の出版物を通して、多様な“江戸メディア文化”の華をご紹介します。

「サントリー美術館」ホームページ


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