山下敦弘の「オーバーフェンス」を観た! | とんとん・にっき

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テアトル新宿で、山下敦弘の「オーバーフェンス」を観てきました。

今日は「サンクスデー」、毎週水曜日は全作品1100円均一、それもあってかけっこうな人の入りでした。


オダギリジョー、蒼井優、松田翔太の三人はそれぞれに適役でした。松田翔太はただオダギリジョーに蒼井優を進めるのにはなにか訳があるのか、その辺が描かれていない。蒼井優の函館弁、南北海道の方言は、イントネーションが難しそうでしたが、オダギリジョーはほとんど標準語で、それはどうしてなのか、方言は出てなかったように思います。結婚して東京にいたという設定だからかな?オダギリジョー、朴訥な台詞、控えめな演技がよかった。それにしても蒼井優、やたらオダギリジョーにむかって怒鳴る、というところがよくない、興ざめだと思いましたが、なぜそんなに怒鳴るのか、それだけ鬱屈した心理状態だということで理解しましょう。鳥の鳴き声や踊りなどは、原作にはないシーンだという。


映画の中で、それぞれの配役の個性やその人となりを、全部描くのは無理だとしても、もうちょっと掘り下げてもらいたかった人が数人いました。例えば、背中に入れ墨をしている人や、喧嘩して職業訓練校を退学した人など、もうちょっとその背景が知りたかった。オダギリジョーの家族、父や母については、同じ函館に住んでいながら、ほとんど描かれていません。以前妻であった女性もそして子供も、もう少し描いてほしかったと思います。


映画の製作とその背景になった町が協力し合う、タイアップするということが始まったのは、いつ頃のことでしょうか。「函館」は二度ほど行きましたがいい町です。映画の背景としてはどこをとっても絵になる、最も適した町です。「海炭市叙景」「そこのみにて光り輝く」、そして「オーバーフェンス」はもちろん、これら「函館三部作」は背景として函館をしっかりと使っています。それにしても監督によって、函館の描き方にはそれぞれ特徴があります。1990年に41歳で自ら死を選んだ佐藤泰志、自分の小説が3作も映画化されたことを知ったら、どう思うでしょうか。


佐藤泰志の本、文庫本で買ってない本、さっそく購入しました。

7篇の短篇作品をあつめたものです。解説は堀江敏幸です。

「大きなハードルと小さなハードル」

川出書房新社(河出文庫)

2011年6月20日初版発行


佐藤泰志原作「オーバー・フェンス」

東京で幸福な結婚生活を送るはずだった白岩は、育児ノイローゼにかかった妻と離婚し、故郷の海峡の街で、職業訓練校の建築科に通う。実家に戻らず、アパート暮らしの彼は、毎夜350ミリの缶ビールをきっちり2本飲み、元妻を追いつめた自分を責めつづけた。そんな生活を見かねた建築科の代島から、前の男との間にできた子どもを堕ろし、傷心のサトシを紹介され、2人は付き合う。職歴も年齢も様々な建築科の生徒たちと、春のソフトボール大会に向け、練習に明け暮れるなか、シャブ中の元自衛隊員、左手の小指がない原さん、海底トンネル事故など、彼らの挿話や、アパートを訪れる妹夫婦との会話を基に、白岩は街との距離を測り直す。サトシとの関係も、傷を舐め合うのではなく、青春の終わりをむかえた2人の出立として描かれる。元妻の回復を信じ、バッターボックスに立つ白岩は、超えなければならないものを前に、350ミリ缶ビールに象徴される生活との決別を誓う。

「佐藤泰志 生の輝きを求めつづけた作家」福間健二監修より


以下、「シネマトウデイ」より引用


チェック:オダギリジョー、蒼井優、松田翔太らが顔をそろえ、佐藤泰志の小説を映画化したラブストーリー。『海炭市叙景』『そこのみにて光輝く』に続く「函館3部作」の最終章として、愛をなくした男と愛を望む女の出会いを描く。監督を務めるのは、『松ヶ根乱射事件』などの山下敦弘。41歳で他界した作家の実体験を基につづられた原作の魅力が光る愛の物語に心奪われる。


ストーリー:これまで好きなように生きて来た白岩(オダギリジョー)は妻にも見放され、東京から生まれ故郷の函館に舞い戻る。彼は実家に顔を見せることもなく、職業訓練校に通学しながら失業保険で生活していた。ただ漫然と毎日を過ごしてしていた白岩は、仲間の代島(松田翔太)の誘いで入ったキャバクラで変わり者のホステス聡(蒼井優)と出会い……。


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「オーバー・フェンス」公式サイト


山下敦弘監督で佐藤泰志「オーバー・フェンス」映画化!「海炭市叙景」「そこのみにて光輝く」に続く函館3部作最終章


sato 「佐藤泰志 生の輝きを求めつづけた作家」

2014年2月28日初版発行

観衆:福間健二

発行所:川出書房新社








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