熊切和嘉監督の「海炭市叙景」を観た! | とんとん・にっき

熊切和嘉監督の「海炭市叙景」を観た!

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今年初めて映画館で観た日本映画です。海に囲まれた地方都市「海炭市」に生きる「普通の人々」を描いた作品です。「海炭市」とは架空の街ですが、原作者の佐藤泰志の故郷函館であることはすぐに分かります。この町が「海」(漁業、造船、連絡船の通う港)と「炭」(炭鉱)によって成り立っていることを示しています。人口35万人、町のどこからでも海が近く、港があり、路面電車が走っています。市場があり、競馬場があり、新しく作られてゆく工業団地があります。町の先端に海に突き出たような小高い山があります。そこから眺める夜景は素晴らしく、観光客が多く訪れます。僕は数年前に一度、そしてつい先日に「函館」を訪れました。ともに訪れた季節は冬でした。


佐藤泰志の原作「海炭市叙景」は、18の函館を背景とした物語が描かれています。その中から幾つかの人生が切り取られて、オムニバス形式で映画化されています。炭鉱(映画では造船所?)を解雇されて仕事を失った青年とその妹、土地の明け渡しを迫られている猫好きの老婆、家庭に問題を抱えるガス店の二代目若社長、あと2年で定年を迎える路面電車の運転手とその息子、妻との不和に悩むプラネタリウムで働く市の職員などがこの映画の主人公です。函館はかつては北海道を代表する都市でしたが、いまや多くの地方都市と同様に寂れてゆきます。若者はこの町へ帰ってきてもろくな仕事にありつけません。若者には生きにくい町になってしまいました。「町は観光客のおこぼれに頼る他ない」、そうした寂れていくばかりの閉塞状況の函館でも35万人の人たちが暮らしています。映画は市井の人々の悩み、苦しみ、哀しみ、喜び、そして希望を丹念に描いています。


以下、とりあえずシネマトゥデイより引用しておきます。


チェック:5度芥川賞候補に挙がりながら、41歳で自殺した作家・佐藤泰志の遺作を映画化したオムニバス・ストーリー。北海道・函館をモデルにした架空の地方都市を舞台に、さまざまな事情を抱えた人々が必死に生きる姿を描く。監督は『ノン子36歳(家事手伝い)』の熊切和嘉。『アウトレイジ』の加瀬亮、『おにいちゃんのハナビ』の谷村美月、『春との旅』の小林薫らが出演する。リアルな人間ドラマとオール函館ロケによる映像に注目だ。


ストーリー:北国の小さな町・海炭市の冬。造船所では大規模なリストラが行われ、職を失った颯太(竹原ピストル)は、妹の帆波(谷村美月)と二人で初日の出を見るため山に登ることに……。一方、家業のガス屋を継いだ晴夫(加瀬亮)は、事業がうまくいかず日々いら立ちを募らせていた。そんな中、彼は息子の顔に殴られたようなアザを発見する。


「海炭市叙景」公式サイト

とんとん・にっき-kaitan1 「海炭市叙景」

著者:佐藤泰志

2010年10月11日初版第1刷発行

2010年12月27日第5刷発行

小学館文庫

発行所:株式会社小学館









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