ドキュメンタリー映画「書くことの重さ 作家 佐藤泰志」を観た! | とんとん・にっき

ドキュメンタリー映画「書くことの重さ 作家 佐藤泰志」を観た!


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厳しい冬と短い夏の街、函館。僕は「海炭市叙景」を読み、作家佐藤泰志を知ってから二度ほど函館を訪れました。


佐藤泰志は函館に生まれ育ち、20歳まで過ごします。 父母は青函連絡船を往復して、青森産の黒石米を運び、函館で売りさばく「担ぎ屋」として生計を立てていました。幼いころから作文を書いた佐藤は、中学2年の文集に「芥川賞作家になる」と将来の目標を書いています。 映画「書くことの重さ 作家 佐藤泰志」は、「きみの鳥はうたえる」が芥川賞候補になった1982年1月から始まります。佐藤の原稿、いわゆる金釘流、解読者が必要か、これほどまでに特徴がある字、やはり性格を表しているんでしょうか。


このドキュメンタリー映画を見て、僕は今まで断片的に知り得た佐藤泰志の全体像を、一気に理解したように思います。ただ時系列的に話を進めるのではなく、構成に工夫がなされています。やはり圧巻は、芥川賞選考会の様子を、詳細に描いていることです。瀧井孝作、開高健、中村光夫、安岡章太郎、吉行淳之介、丸谷才一、大江健三郎、等々、よくここまで選考委員に似た人を見つけたということだけでなく、その語り口をよくここまでマネできたかと、驚かされます。


開高健を筆頭に選考委員が佐藤の作品をなぜにけなすのか、それに対して丸谷才一がただ一人、良い評価をしていたことが人を通じて佐藤の耳に入ります。佐藤の作品が候補作になった会を含め8回中5回が「該当作なし」という不運。芥川賞作家、青来有一、堀江敏幸も、佐藤泰志に寄り添うように温かいまなざしでコメントしています。


この映画のつくられた背景には、“ 佐藤泰志追想集を発行する会”による佐藤泰志追想集「きみの鳥はうたえる」 があったことが上げられます。ちなみに佐藤泰志追想集の構成は、以下の通りです。

1. 岸壁にたたずみ、遠く連絡船を眺めていた頃(少年時代)
2. 屋上に立ち、フェンス越しに海の向こうを見つめていた頃(高校時代)
3. 机の前に座り、作家という生業を背負おうとしていた頃(東京時代以降)
4. 泰志の死を悼む文章のかけら(同人誌から)


北海道苫小牧市出身で自らも小説家を志していた稲塚秀孝監督は、同時代に北海道で生まれ、中央の文壇で活躍していた佐藤泰志にまばゆい憧れを抱きながらも、若くして命を絶ったその実人生に興味をもち、ドキュメンタリー映画の製作を思い立ちます。その趣旨に賛同するように集まったスタッフとキャスト。語りには日本を代表する名優、仲代達矢。ドラマ部分で佐藤泰志の母親役を演じる、歌手、加藤登紀子。また、仲代達矢が主宰する無名塾から結集した実力派俳優たちも、佐藤泰志の人生の再現に力を注いでいます。


映画「書くことの重さ 作家 佐藤泰志」の構成は、以下の通りです。

第一章 きみの鳥はうたえる
第二章 多感な青春
第三章 作家への道
第四章 海炭市叙景


以下、とりあえず「シネマトゥデイ」より引用しておきます。


チェック:『海炭市叙景』の原作者で、中上健次や村上春樹とも比較されながら自殺した昭和の作家、佐藤泰志の人生に迫るドキュメンタリー。生前の佐藤の映像、佐藤を知る故郷・北海道函館の知人や記者のコメント、歌手の加藤登紀子が母親を演じる再現ドラマなどで構成する。メガホンを取るのは、『二重被爆~語り部・山口彊の遺言』などの稲塚秀孝。ナレーションを名優・仲代達矢が担当する。青春時代から死ぬまで書くことにこだわった佐藤の繊細で壮絶な生きざまに、心を揺さぶられる。

ストーリー:「海炭市叙景」の作家・佐藤泰志は、北海道函館市で育つ。1982年、前年に東京から家族と帰郷し、職業訓練校に通っていた佐藤は、「きみの鳥はうたえる」が芥川賞候補になったことで再び東京に戻ることに。さかのぼって1966年。高校2年生の佐藤は、有島青少年文芸賞優秀賞を受賞。一方、学校では停学になるなど卒業が危ぶまれながらも、小説を書き続けていた。


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「書くことの重さ 作家 佐藤泰志」公式サイト


「書くことの重さ 作家 佐藤泰志」facebook


とんとん・にっき-satou 佐藤泰志追想集
「きみの鳥はうたえる」
発行:佐藤泰志追想集を発行する会
発行人:陳有崎
編集人:西堀滋樹・田沢義公
発行日:1999年9月20日
頒価:500円









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