東京都美術館で「生誕300年記念 若冲展」を観てきました。観に行ったのは4月30日のことでした。
「奇想」で知られる江戸中期の町絵師・伊藤若冲(1716-1800)。その生誕300年を記念する回顧展が東京・上野公園の東京都美術館で開かれ、連日長蛇の列ができている。近年にわかに注目され、日本美術では有数の人気画家に。平成の「若冲ブーム」は頂点を迎えている。(「朝日新聞」による)
若冲とは
若冲は京都の青物問屋の長男として生まれ、生活は極めて裕福でした。23歳の時に家業を継ぎますが、40歳の時に次男に家督を譲り画業に専念します。仏の教えを尊び、その一方で描くことを愉しんで、晩年まで作品を描き続けました。身近に存在する画題をじっくり観察し、精緻でユーモラスな生命力あふれた表現はいつの時代も多くの人を惹きつけてやみません。
若冲展で記憶に新しいのは、東日本大震災の報に接したジョー・プライス氏と悦子夫人の「東北の人々に美しいものをお見せしたい」という思いによって実現した、東日本大震災復興支援「若冲が来てくれました―プライスコレクション 江戸絵画の美と生命」でした。今回もプライスコレクションから9点が出ていました。なかでも「鳥獣花木図屏風」はいわゆる「モザイク屏風」で、デザイン性とモザイク手法の完成度の高さは圧巻でした。同様のものに静岡県立美術館蔵の「樹花鳥獣図屏風」がある。
僕の場合、2008年夏に東京国立博物館で開催された「対決―巨匠たちの日本美術」で、若冲は曾我簫白と「対決」していました。それが初めて若冲を意識するようになったきっかけです。「動植綵絵」30幅は「皇室の名宝―日本美の華」で観ました。「旭日鳳凰図」、「雪中遊禽図」、「石灯籠図襖風」は、「対決巨匠たちの江戸絵画」で観ました。他に、静岡、千葉美術館、細見美術館などで、若冲の作品は観てきました。
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今回の「若冲展」、「釈迦三尊像」(京都・相国寺)と「動植綵絵」(宮内庁三の丸尚蔵館)が目玉ということで、その他、展示作品の一部を下に載せておきます。
「動植綵絵」30幅は、明治22年、下賜金の返礼として相国寺から皇室へ献納され、現在宮内庁の保管となっている。彼がこの野心的な仕事にどれほどの時間を費やしたかは、くわしくは知られていないが、43歳に当たる宝暦8年(1758)、あるいはそれよりすこし前に30幅完成を目ざして着手され、宝暦11年には12福ができ、明和2年には24福に釈迦文殊普賢の三幅対をそなえたものが相国寺に寄進されている。そして大典の碑文によれば、若冲51歳に当たる明和3年(1766)11月には、30幅全部が相国寺に揃っていた。つまりは、40歳台のすべてをこの制作に投入したことになる。
綵絵(綵は彩と同義)とあるように、これらは、絹地に驚くほど細密な手法で描かれた濃彩画である。画題は、ニワトリをはじめ、クジャク、オシドリ、オウム、ツルなどの鳥に、ウメ、マツ、ヒマワリ、フヨウ、ボタン、ナンテン、アジサイなど、四季の木や草花を配した、中国画の画題分類でいう花鳥図、花卉図の類がおもである。ほかに、さまざまな魚や貝、昆虫から虫けらまでが登場するが、これらも画題形式の点からいえば、藻魚図、貝甲図、草虫図といった中国画の伝統的なレパートリー―これらも広義には花鳥図の仲間に入れられる―のなかに収まるものだ。大典の記述のとおり、ここには若冲が、相国寺をはじめ京都の各寺院に伝わる宋元明―とりわけ明―の花鳥画から、貪欲に手法を学び取ったあとが歴然としている。そうした中国画の素養を持つ彼が、ひとたび手本から離れ、<物>との独自な対話をはじめるとき、そこには、全く若冲自身のものとしかいいようのない、特異な映像の世界が現出するのである。
辻惟雄:「奇想の系譜」の中の「幻想の博物誌―伊藤若冲」より
「生誕300年記念 若冲展」
伊藤若冲(1716-1800)は、18世紀の京都で活躍したことで知られている画家です。繊細な描写技法によって動植物を美しく鮮やかに描く一方、即興的な筆遣いとユーモラスな表現による水墨画を数多く手がけるなど、85歳で没するまで精力的に制作を続けました。本展では、若冲の生誕300年を記念して 初期から晩年までの代表作約80点を紹介します。若冲が京都・相国寺に寄進した「釈迦三尊像」3幅と「動植綵絵」30幅(宮内庁三の丸尚蔵館)が東京で一堂に会すのは初めてです。近年多くの人々に愛され、日本美術の中でもきら星のごとく輝きを増す若冲の生涯と画業に迫ります。
「生誕300年記念 若冲展」
図録
平成28年4月22日発行
カタログ監修:小林忠、太田彩
編集:東京都美術館
日本経済新聞社
NHK
NHKプロモーション
発行:日本経済新聞社
NHK
NHKプロモーション
「ペン」史上最強の天才絵師 若冲を見よ。
2015年4月1日号 通巻379号
発行所:株式会社CCCメディアハウス
「目をみはる伊藤若冲の『動植綵絵』」
2000年8月20日第1版第1刷発行
2008年9月29日第1版第13刷発行
著者:狩野博幸
発行所:株式会社小学館
新潮日本美術文庫10
平成8年9月10日発行
平成19年5月15日6刷
編者:日本アート・センター
発行所:株式会社新潮社
「若冲」
著者:辻惟雄
2015年10月9日第1刷発行
2015年11月5日第2刷発行
発行所:株式会社講談社
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