三井記念美術館で「東山御物の美―足利将軍家の至宝―」を観た！

三井記念美術館で「東山御物の美―足利将軍家の至宝―」を観てきました。観に行ったのは11月14日、10月4日から11月24日までの、7期に分かれている展示期間の6期目でした。それにしても、あまりにも細かく分けすぎじゃないですか、と言いたいです。前期・後期ぐらいだと分かり易いし、行きやすい。国宝、重要文化財クラスを借りてくるのですから、そう長くは借りられない、というのは分かりますが…。

今年の5月に河添房江の「唐物の文化史―舶来品からみた日本」（岩波新書：2014年3月20日第1刷発行）を読みました。今回の「東山御物の美」と多くの部分で重なるところがあります。唐物交易の時代的変遷とその実体からみた異国との交流史を縦軸とし、それにとどまらずに、それぞれの時代の権力者たちの権威と富の象徴としての唐物のあり方にスポットを当てています。が、川添はそれを広げて、「広く異国からの舶来品全般を総称するものとなった」といいます。

河添房江の「唐物の文化史―舶来品からみた日本」を読んだ！

今回の展覧会は、室町文化は大陸から到来した唐物が崇拝されたこと、足利義満ら将軍家のコレクション「東山御物」がその頂点であったこと、それらは当時の中国的な感性を代表したものであったこと、そうした「東山御物」として伝えられている作品群が当時から高い評価を受け、その後の日本人にとって絵画・工芸を鑑賞する拠るべき基準となったといい、その後それらは各時代を通じて「古典」として理解されてきた、という。

東山御物の絵画は、大きく二種類に分けることができます。ひとつは、李迪や馬遠、梁楷など中国皇帝の愛した宮廷画院画家の作品。もうひとつは、牧谿と王濶に代表される禅宗の絵画です。これらのおおらかで繊細な水墨表現は、室町時代以降の日本絵画に大きな影響を与えました。

足利将軍家の会所では、唐絵とともにさまざまな唐物道具が飾られました。仏画の前には花瓶や香炉、棚には唐物漆器、茶湯棚には天目や茶入など、最高の品々が揃えられていました。後に「東山御物」と呼ばれて伝えられている茶具はその一部です。

室町殿が憧憬した唐物文化は、日本の空間を飾り、美意識の古典（クラシック）となった。

中世以降の美の規範「東山御物」、なにしろ「国宝」や「重要文化財」が次々と出てきて、我々の眼を楽しませてくれる展覧会です。

展覧会の構成は、以下の通りです。

皇帝の絵画・禅宗の絵画

将軍家の御道具

足利将軍家周辺での受容と展開

「三井記念美術館」入口

皇帝の絵画・禅宗の絵画

国宝「夏景山水図」（伝）胡直夫筆南宋時代、山梨・久遠寺

国宝「悪景山水・冬景山水図」（伝）微宗筆南宋時代、京都・金地院

左：重文「茉莉花図」（伝）趙昌筆南宋時代、常盤山文庫右：国宝「鶉図」（伝）李安忠筆南宋時代、根津美術館

左：国宝「秋野牧牛図」（伝）閻次平筆南宋時代、泉屋博古館右：重文「維摩図」（伝）李公麟筆南宋時代、京都国立博物館

国宝「出山釈迦・雪景山水図」梁楷筆南宋時代、東京国立博物館

左：第十二　那伽犀那尊者右：第五　諾距羅尊者重文「十六羅漢図」陸信忠筆南宋時代、京都・愛国寺

将軍家の御道具

左：重文「玳被盞　鸞天目」南宋時代、三井記念美術館右：国宝「油滴天目」大阪市立東洋陶磁美術館

左：重文「唐物肩衝茶入　北野肩衝」南宋時代、三井記念美術館右：重文「青磁輪花茶碗　銘馬蝗絆」南宋時代、東京国立博物館

左：重文「青磁筒花瓶　大内筒」南宋時代、根津美術館右：重文「青磁筍花瓶」南宋時代、根津美術館

重文「物かは蒔絵伽羅箱」室町時代、陽明文庫

左：「牡丹尾長鳥文堆朱香箱」明時代、徳川美術館右：「鳳凰牡丹文堆朱食籠」南宋時代

足利将軍家周辺での受容と展開

「足利義教像」景南英文賛室町時代、亨徳2年（1453）賛東京大学史料編纂所

重文「花鳥図屏風」能阿弥筆室町時代・応仁3年（1469）、出光美術館

「東山御物の美―足利将軍家の至宝―」

大陸から到来した唐物が崇拝された室町文化において、その頂点に君臨したのが義満らによって収集された将軍家のコレクション「東山御物」でした。それらは当時の中国的な感性を代表した絵画や工芸品であり、わが国では会所という公式の空間を飾り立てました。本展覧会は、現在「東山御物」と伝称される多くの作品群から、絵画・工芸各々のジャンルで当時から極めて高い評価を受けてきたもの、足利将軍家が確実に所有していたものを中心に構成いたします。「東山御物」に見える美意識は、その後の日本人にとって絵画・工芸を鑑賞する一つの拠るべき基準となり、桃山・江戸時代、さらには現代に至るまで「古典」として理解されてきたのです。中世以降の美の規範、「東山御物」の精髄を御堪能ください。

「三井記念美術館」ホームページ

「東山御物の美―足利将軍家の至宝―」

図録

平成26年10月4日発行

編集発行：

公益財団法人

三井文庫、三井記念美術館

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とんとん・にっき

来るもの拒まず去る者追わず、
日々、駄文を重ねております。

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