三井記念美術館で「超絶技巧!明治工芸の粋」を観た! | とんとん・にっき

三井記念美術館で「超絶技巧!明治工芸の粋」を観た!


三井記念美術館で「超絶技巧!明治工芸の粋」を観てきました。観に行ったのは5月11日でした。そういえば思いだしました。もうすぐ台北故宮博物院の「翠玉白菜」や「肉形石」が東京国立博物館へ来るんですね。超絶技巧の原点ですね。それが観たくて台湾へ行ったことを思いだしました。2007年3月のことです。

国立故宮博物館を観る!

この展覧会の“前振り”である山下裕二監修の「超絶技巧美術館」を読んだ時に、このブログに以下のように書きました。

山下裕二監修「超絶技巧美術館」を読んだ!

僕が「超絶技巧」を初めて知ったのは、泉屋博古館での「幕末・明治の超絶技巧」展でした。そこでは主として「金工」、「自在金物」などの「超絶技巧」作品でした。そこでの金工や自在金物が気になって、その後、京都の清水三年坂美術館を訪れたりもしました。毎年のお正月には、東京国立博物館で、自在金物を観ています。先日も、大倉集古館で自在金物が何点か出ていました。

泉屋博古館分館で「幕末・明治の超絶技巧」展を観た!
清水三年坂美術館で「鍛鉄の美 鐙、鐔、自在置物」を観た!


「超絶技巧美術館」では、大胆にも「超絶技巧」の意味するところを拡大して扱っています。「時流やマーケットの動向などとはさらさら関係なく、ただひたすら修行僧のように、自らの表現を突き詰めている作家たちがいます」。読者が本書を通じて初めてその存在を知る人です。「どうぞ、まずは何の予備知識もなくその作品のビジュアルに接して、ガーン、とショックを受けてくださいますよう」と、山下裕二はいう。岡本太郎や赤瀬川原平を例に出し、戦後美術の歴史の中で、「うまくて、きれいで、ここちよい」日本画などは、ほとんど絶滅しました。私は超絶技巧を追求するそんな作家たちと出会って、その凄さを多くの人に知って欲しいと思ってきた、という。


もちろん美術館での展覧会と書籍化されたものでは、テーマは同じでも、その取り上げた作品は異なるのは当然のことです。「超絶技巧美術館」の方は、池田学を筆頭に、現代作家を多く取り上げているところが特徴でしょう。また円山応挙や長澤芦雪、伊藤若冲や河鍋暁斎など、山下裕二の専門とする分野の画家も細かく取り上げられています。今回の三井記念美術館にその所蔵品を出している“清水三年坂美術館”も数ページですが取り上げられていますが、今回のようにそれが主たる取り上げ方ではありません。しかし山下が言う「超絶技巧を追求するそんな作家たちと出会って、その凄さを多くの人に知って欲しい」ということについては同じです。


背景には日本工芸の歴史があります。明治政府が工芸を輸出産業として育成したこと、そして帝室技芸員制度があります。三井記念美術館、ということで、展示室1には当然、優品がガラスケースに入って展示されますが、展示室2には何が展示されるのか、興味津々でした。結果は安藤緑山の牙彫「竹の子、梅」が展示されており、結局これが今回の展覧会の目玉ということになるでしょう。 なにしろ展示室に1点のみ、ガラスケースに入って展示されていたのですから・・・。今回の展示で予想も付かなかったのは「刺繍絵画」でした。実際に観てみると、絹糸が光のかげんで反射し、得も言われぬ美しさを醸し出していました。



村田理如氏とそのコレクションについて

村田理如(まさゆき)氏(1950年生まれ)が明治工芸と出会ったのは、1980年代後半。出張で訪れたニューヨークのアンティークショップで購入した印籠がきっかけでした。その後もしばらくは会社員として国内外に勤務していた村田氏ですが、47歳で当時、専務を務めていた村田製作所を辞め、明治工芸の収集に邁進することを決意します。印籠、蒔絵から始まったコレクションは、以来またたく間に膨大なものとなり、2000年には清水三年坂美術館を設立。以後もさらに質の高いコレクションが増殖しつつあり、現在総数約1万点を越す作品が所蔵されています。間違いなく世界最高の明治工芸コレクションが築き上げられているといえるでしょう。


本展では様々なジャンルの最高のクオリティーの作品、約160点を選りすぐって、村田コレクションの粋、明治工芸の粋を展観します。出品作には、国内ではほとんどみ紹介である、驚くべき精緻な刺繍絵画も含まれます。近年コレクションに加わったこれらの刺繍絵画は、本展に先駆けて開催された英国のアシュモリアン博物館での展覧会で公開され、注目を集めました。


これらの瞠目すべき超絶技巧の作品の多くは、万国博覧会などを通じて輸出され、長らく海外のコレクターが所蔵していたものです。村田氏は、ここ四半世紀ほどの間に、オークションなどを通じてそれらを買い戻し、明治工芸の驚くべき達成を日本人に知らしめたいという熱意を持って収集を続けてきました。本展を通じて、多くの観客に村田氏の熱意が伝わり、明治の工人たちに対する敬意が、ひいては日本人のものづくりの真の底力が検証されることを望んでいます。


今回展示された作品は、すべて清水三年坂美術館の所蔵品です。

ジャンルを並べると、図録によれば以下のようです。

七宝

金工

漆工

薩摩

刀装具

自在

牙彫・木彫

印籠

刺繍絵画

絵画



七宝




金工



漆工



薩摩



刀装具




自在



牙彫・木彫




印籠



刺繍絵画



「超絶技巧!明治工芸の粋 村田コレクション一挙公開」

近年、美術雑誌・テレビ番組などで、頻繁に取り上げられるようになった明治の工芸。なかでも、超絶技巧による、精緻きわまりない作品が注目を集めています。しかしながら、それらの多くが海外輸出用であったため、これまで日本国内でその全貌を目にする機会は、ほとんどありませんでした。本展では、村田理如氏の収集による京都・清水三年坂美術館の所蔵品のうち、並河靖之らの七宝、正阿弥勝義らの金工、柴田是真・白山松哉らの漆工、旭玉山・安藤緑山らの牙彫をはじめ、驚くべき技巧がこらされた薩摩や印籠、近年外国から買い戻された刺繍絵画など、選りすぐりの百数十点を始めて一堂に展観いたします。質・陵ともに世界一の呼び声が高い、村田コレクション秘蔵の名品が三井記念美術館に勢揃いします。

これぞ、明治のクールジャパン!


三井記念美術館」ホームページ


gikou1 「超絶技巧!明治工芸の粋」

図録

編集:広瀬麻美(浅野研究所)

    小林祐子(三井記念美術館)

    藤田麻希(明治学院大学大学院)

    朝山衣恵(清水三年坂美術館)

発行:浅野研究所






zetu5 「超絶技巧美術館」

発行日:2013年12月25日第1刷
監修:山下裕二

編集:高橋実和、望月かおる、来嶋路子、

    安田美樹子(美術出版社)

発行:株式会社美術出版社

*「美術手帖」2012年10月号「超絶技巧!」

  を再編集し、記事を増補・改訂の上収録。








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