「さとりをひらいた犬/ほんとうの自分に出会う物語」無料公開です。

 

もう読んだ方も、そうでない方も、お楽しみいただければ嬉しいです。


 

最初(第1話)からお読みになりたい方は、こちらからお読みくださいね。

 

 

いやや我慢できん、すぐ全部読みたいぜ~という方は…(笑)

 

 

 

㉑リーダーの「資格」

 

「ガジョ、どうしたんだ、君らしくなじゃないか。仲間が生きていると分かったんだ。戻ればいいじゃないか」

 

 

「そんな資格など、私にはない」

 

 

「ガジョ、君自身がどう思おうと、君は赤鞍のリーダーだ。じゃあ、いったいどんな資格が必要だというんだ?」

 

 

「私は逃げた。“恐怖”によって我を失い、その場から逃げ出した。我を失い、恐怖にかられ無我夢中ですべてを捨て、走り去った。そのような役立たずは、リーダーなどでは決してない。リーダー以前の問題だ」

 

 

 

 

「いや…それは…」

 

 

 

 

「私は臆病風に吹かれ、部下たちの生命を犠牲にし、部下たちが殺されている隙に自分だけ逃げ去って生きながらえたのだ。

 

私は卑怯者で、臆病者で役立たずだ。

 

私の罪は永遠に消えない。

 

私が生きていること自体が恥であり、罪なのだ」

 

 

 

 

僕は、ゾバックのあの圧力と恐怖を思い出した。

 

 

あの恐怖の中、僕も逃げ出した。

 

僕もきっと、ガジョと同じで仲間を置いて逃げ出しただろう

 

 

 

そうだ、

 

ガジョは僕なんだ!

 

 

 

 

ガジョはあのときに逃げ出して、

 

そのまま魂の声が聞こえなくなってしまった、

 

もうひとりの僕なんだ。

 

 

 

 

「ジョン、ほっておいてくれないか。

 

私の人生はおしまいなんだ。

 

ここで終わりなんだ。

 

こんな役立たずの私など、生きる意味はないのだ。

 

生きる場所などないのだ。

 

出来ること、生きる価値などないのだ。

 

私を置いて出て行ってくれ」

 

ガジョは吐き捨てるように言うと、うずくまって下を向いた。

 

 

 

 

「ガジョ、君は僕だ」

 

「なんだって?」

 

 

 

 

「君は、もうひとりの僕なんだよ」

 

そう、逃げてしまって、ほんとうじゃない自分になってしまった、もうひとりの僕なんだよ。

 

 

 

 

「何を言っているか、わからない」

 

 

 

だから、放っておくわけにはいかない。

 

君は、僕なんだよ。

 

僕はその言葉を飲み込んだ。

 

 

 

 

「おせっかいなヤツだな」ガジョが迷惑そうに視線を上げた。

 

 

ここで僕がゾバックにもう一回会いに行った話をしたら、逆効果になりそうだ。

 

 

 

そうだ! いい案を思い付いたぞ。

 

 

 

 

「ガジョ、君は自分が役立たずで、何もできないって言ったね」

 

「ああ、言った」

 

「でも、君が役に立つこと、出来ることがひとつだけある」

 

「なんだ?」

 

 ガジョは疑い深そうに、視線を向けた。

 

 

 

「僕はアマナ平原のチカルという街に行きたいんだ。知っているか?」

 

ガジョはうつむいたまま答えた。

 

「ああ、近くまで行った事がある。ここから東にまっすぐ一週間ほどで着く」

 

「ガジョ、僕をチカルに案内してくれないか? 僕には君の助けが必要だ」

 

 

ガジョは少し顔を上げ、怪訝そうに答えた。

 「私の助け? 私が君に出来ることなんか何もない、あるはずがない。東にまっすぐ行けばいいんだから」

 

 

 

「いいや、もう一回言う。僕には君の助けが必要だ。

 

こう見えても僕はすっごい方向音痴なんだ」

 

僕は、少し誇らしげに言った。

 

 

 

「は? 方向音痴? 君が? まさか…」

 

「そうさ。自慢じゃないけど、実は最高レベルの方向音痴なんだ。

 

朝に東へ歩いているうちに、いつの間にか夕方には太陽が沈む方向に歩いているんだ」

 

 

 

確かに僕は方向音痴だったんだ。でもこれは内緒だ。

 

 

 

「ウソをつくな。それで猟犬がつとまるものか。

 

鷹の羽のジョンが方向音痴なんてうわさは一度も聞いたことがない。私は騙されない」

 

 

 

「そうりゃ、そうさ。そんなうわさ、僕が流させるもんか。僕の名声が傷つくだろ。

 

だから方角に関してはいつもハリーに確認してもらっていたんだ。ハリーを知っているだろ?」

 

 

 

「ああ、君のところのサブリーダーだな」

 

「そうさ。僕は他の事は全て自信があるけど、昔から方向だけは全くダメなんだ。

たぶん、そこの部分の脳がダメなんだろうね。だから、ハリーがいない今、僕には君の助けが必要だ」

 

 

僕は、ガジョの目をまっすぐに見つめた。

 

「ガジョ、君は古くからの知り合いの僕がこんなに困っているのに、ほうっておいてここでうずくまって、僕を見捨てるつもりなのかい? 

 

このままだと、僕はチカルにも行けないし、君と同じように野垂れ死んでしまうかもしれないんだぜ。

 

君は死んでもいいかもしれないけれど、僕は死ぬわけにはいかないんだ」

 

 

 

ガジョは僕の視線をはずし、うつむいて黙ってしまった。

 

 

「……」

 

 

しばらく沈黙が続いた。

 

 

「ガジョ…」

 

 

話しかけようとすると、ガジョがおもむろに顔を上げた。

 

「分かった。チカルまで案内するとしよう」

 

 

 

 

ガジョはヨロヨロと立ち上がった。

 

「ありがとう、ガジョ」

 

 

 

こうして僕とガジョは、一緒にチカルに向かうことになった。

 

 

 

 

㉒『ガジョの「生きる苦しみ」』へ続く

 

ううう、もう我慢できん、最後まで一気読したいぜ~の方は…(笑)

 

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