「さとりをひらいた犬/ほんとうの自分に出会う物語」

 

無料公開です。

 

もう読んだ方も、そうでない方も、お楽しみいただければ嬉しいです。

 

★Amazonのレビューでは5つ星の4.6、レビューは152レビュー(2022.8.11時点)頂いています。

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5つ星のうち5.0 読んでいるうちに心が自然と楽になる本

2022年6月2日に日本でレビュー済み

Amazonで購入

目から鱗、さらに心からも鱗雲が落ちたように感じております。後半のクライマックスは言葉では表せない面白さ。身体、心、魂の3つの奥の深いお話です。この本は、YouTubeで知りました。推奨します。

 

 

★お読みない方は、学識サロン(登録者51万人)さんが作ってくれたこの画像(約10分)をご覧いただけると、どんな本かお分かりになると思います。(感謝!)

 

 

 

最初からお読みになりたい方は、こちらからお読みくださいね。

 

それでは、お楽しみください。

 

 

 

第3話『冒険への旅立ち』

 

 

あの日から数週間が経った。

 

僕は相変わらずご主人様と狩りの毎日だったけれど、ダルシャに会ったあの日から、狩りに熱中できなくなってしまった。

 

なにより、大好きだったご主人様の笑顔も、ごほうびの干し肉も、あんまりうれしくなくなってしまった。

 

 

僕の働きは日に日に悪くなって、ご主人様も僕がどこか怪我したんじゃないかって心配してくれていた。

 

僕は、前ほど狩りに喜びを感じなくなってきたことを、僕自身で認めざるを得なくなった。

 

僕はあの日、変わってしまったんだ。

 

 

 

ご主人様のお屋敷の大広間の窓から見える、剥製になったダルシャの顔を見るたびに、

 

今は青色のガラス玉が入れられたその瞳を見るたびに、

 

僕の胸の奥から何か熱いものがせり上がってきて、

 

何とも言えない悲しさと焦りにかられてしまう。

 

 

 

獲物にトドメを刺す時、どこからかダルシャの暖かい声が聞こえてくる。

 

(そいつらに、なんか恨みがあるのかい?)

 

ご主人様からご褒美をもらうとき、またダルシャの声が響いてくる。

 

(お前さん、たったそれっぽっちの存在なのかい?)

 

 

 

 ああ~…どうすればいいんだ…

 

 

あるとき、ハリーが心配して話しかけてきた。ハリーはとても思慮深くて、いろんなことを知っている。

 

僕が頼りにしている親友で。副リーダーでもあるんだ。

 

 

 

「どうしたんだ、ジョン、最近おかしいぞ。あの狼の日からずっとだ。何かあったのか?」

 

察しの良いハリーは何かうすうす感づいているようだった。

 

 

 

「なんでもないさ。気にするな。そのうち治るから」

 

そう強がってみたももの、いっこうに気分は良くならなかった。

 

 

ある日のこと、もんもんと眠れなくて空が赤く染まってきた夜明け、ついにハリーに打ち明けることにした。

 

 

「ハリー、実は相談したいことがあるんだ」

 

 

横で丸くなって寝ているハリーに話しかけた。

 

ハリーはうっすらと目を開けて、ニコッと笑った。

 

 

 「いいとも、話してくれよ」

 

 

僕はダルシャとの出来事、そして最近頭の中でささやいているダルシャの声などを一気に話した。

 

何も言わずにじっと聴いていたハリーは、全部聞き終わるとしばらく黙っていたが、静かにゆっくりと言った。

 

 

 

 「やめておけ」

 

 

 

 

 「え?」

 

 「やめておけって言ったんだ」ハリーは僕を強い目で見つめた。

 

 「ジョン、お前はここを出ていくつもりだろう?」

 

 「ああ、このままだと…いずれはそうなるかもしれない」

 

 

 

 「俺たちが外で生きていけると思っているのか? 俺たちはご主人様から毎日えさをもらって生きているんだぞ。

 

外に出て、どうやって生きていくつもりだ? 

 

無理だよ、無理」

 

 

 

 「そ…そうかな? 森にはたくさん獲物だっているし…」

 

 「確かに獲物はいるし、俺たちは猟犬だ。だが万一、獲物が獲れなかったらどうするんだ? 

 

獲物がいつもいるとは限らないんだぜ。

 

それに俺たちはチームで狩りをする猟犬なんだぜ。

 

一匹では何もできない。それが分かってんのか?」

 

 

 

 「…でも…」

 

 

 

 「でも何だ。

 

俺たちは所詮飼い犬なんだよ。

 

毎日決まった時間に決まった場所でおいしいご飯にありつける。

 

それのどこに不満があるんだ。

 

自分の仕事をまっとうにさえしていれば、何の苦労もなくご飯が食べられるんだぜ。

 

毎日、毎日だ。

 

外の連中はいつも腹ペコだ。

 

何かに襲われるんじゃないか、飯にありつけるのかって、常に不安な毎日だ。

 

外は弱肉強食と飢えが蔓延する過酷な世界だ。ここは違う。

 

こんないい暮らし、外に出たら出来ないんだぞ。

 

一回でも外に出たら、もう二度と戻れないんだぜ。

 

どうしてこのラクで快適な暮らしを捨てる必要があるんだ?」

 

 

 

 「でも、ここには本当の自由がない」

 

 

 

 

 「自由? 自由ってなんだ? 

 

与えられた役割をこなして、その合間に好きなことをする自由ならあるだろう?

 

 それが俺たち飼い犬の自由ってもんだ。

 

俺たちはご主人様という大きな囲いの内側で守られているんだ。

 

所詮俺たちは囲いの中の犬なんだよ。

 

囲いの中にだって自由はあるじゃないか。

 

自由なんてそんなもんだ。

 

何に不満があるってんだ、それに満足していればいいじゃないか」

 

 

 

 「ハリー、それは、ほんとうの自由じゃない気がするんだ」

 

 

 

 「ほんとうの自由なんて求めるのは間違っている。

 

自分を守ってくれるものを否定してまで得られる自由なんて、甘ちゃんの幻想さ。

 

そんなことも分からないのか? 

 

お前が求めるほんとうの自由ってのは、外に出たら死ぬっていうことなんだぞ」

 

 

 

 「じゃあ、ハリー、お前はいま、自分がほんとうの自分らしいって感じるか?

 

 自分らしい自分で生き生きと生きていると、感じることが出来るのか?」

 

 

 

 「はっ、なんだよそれ。ほんとうの自分? 

 

じゃあ、いまの俺はニセモノの俺ってことか?

 

ほんとうもニセモノもありゃしない。

 

俺は俺だ。

 

俺はハリーで、猟犬、それだけだ。

 

お前も同じだ。

 

お前はジョン、猟犬、俺たちのリーダー。

 

それだけ、それだけさ。いいかジョン、余計なことは考えるな。

 

何も考えずに役割だけこなしていれば、ラクに幸せに、そこそこの自由を満喫して何の不自由なく生きることが出来るじゃないか」

 

 

 

 

 「何も考えないなんて、出来ないよ」

 

 

 「バカ言うな、『無知は幸福』って言葉を聞いたことがあるだろう? 

 

前のリーダーがいつも言っていたことだ。

 

もうひとつ「眠りは至福」とも言っていたよな、覚えているだろう?」

 

 

 

「ああ、なんとなく覚えてる。でも意味は考えたことはなかった」

 

 

 

 

「これはな、余計な知恵をつければつけるほど、不幸になっちまうってことなんだよ。

 

苦しくなっちまうんだよ。

 

何も知らないほうが幸福なんだ。

 

考えないほうが幸せなんだよ。

 

眠っているほうが幸せなんだよ。

 

だって俺たちは今まで幸せにやって来たじゃないか。

 

俺たちは考えちゃいけねえんだよ。

 

俺は何かを知って不幸になるより、何も知らないで眠ったままの幸福のほうがいい。

 

お前もそうだ、悪いことは言わねえ、余計なことは考えるな、ジョン」

 

 

 

 

無知は幸福…確かにそうだ。

 

それはいままでの僕だ。

 

でも、僕は知ってしまったんだ。今までの無知な僕の奥底に、ほんとうの僕がいて、

 

そのほんとうの僕が

 

「違う、今の僕はほんとうの僕じゃない!」

 

って叫んでいるのを知ってしまったんだよ。

 

もう眠ったままでなんて、いられないんだ。

 

 

 

 「わかったよ、ハリー。しばらく考えてみるよ」

 

 

 「ああ、くれぐれも早まったマネをするんじゃないぜ。

 

お前はここのリーダーなんだからな。

 

俺だってみんなだって、お前がいなくなったら困るしな」

 

 

 「了解…」

 

 

 僕はハリーに背を向けて目をつぶった。

 

 

 

 そうだ、ダルシャが言っていたっけ…魂にきいてみるんだ。魂はすべてを知っているんだから。

 

 

 魂よ、君はどこにいるんだ? 

 

 僕は目をつぶったまま、身体の中に問いかけた。しばらくすると、胸のあたりが“ほっ”と温かくなってきた。

 

 

 

 ここか、ここにいるんだね

 

 僕は温かくなった自分の胸に問いかけた。

 

 

 

 どうしたい?

 

 どうしたいんだい?

 

 君の話を聴かせてくれよ

 

 君は何て言いたいんだい?

 

 

 

すると、温かい胸の真ん中が熱く鼓動し始めた

 

 

 これが、魂の返事?

 

 

 

 

 僕は魂に向かって語りかけた。

 

 

「いまの僕は自由じゃない気がする。

 

そう、今の僕はほんとうの僕じゃない。僕は自由になりたい、ほんとうの僕になりたいんだ」

 

 

 

 すると胸の真ん中がとてつもなく熱く、激しくドキドキと高鳴り始めた。

 

 

 これが…魂の声なんだ。

 

 これが…魂の返事なんだ。

 

 

確かにハリーの言うことは常識的には当然のことだ。

 

冷静に考えれば、当たり前の選択。

 

でも、いっかいでも魂の声を聴いてしまったら、もうそこには選択の余地なんてない。

 

 

 

常識的じゃないかもしれない、頭が狂ったと思われるかもしれない。

 

いや、僕はほんとうに狂ってしまったのかもしれない。

 

でも、もう、そうするしかないんだ。

 

 

そう、これは頭の選択じゃない、魂の選択なんだ。

 

 

 

 

胸の奥からせり上げてくる高鳴りは、僕を駆り立てるように強く激しく鳴り響いていた。

 

 

 

 

僕は、腹の底から悟った。そう、それは理屈を超えた確信に近い理解だった。

 

 

 

僕は、行かなければ、ならない!

 

 

 

 

朝日が昇り、いつものようにご主人様が僕たちを引き連れて狩りに出かけた。

 

犬たちは口々に吼えながらご主人様の後を追って走り始めた。

 

 

 

僕は大広間の窓から見えるダルシャの蒼い目と視線を合わせると、心の中でつぶやいた。

 

 

 

「ダルシャ、ありがとう、僕は行くよ。

 

ほんとうの自由、ほんとうの僕を見つけに行く。

 

あっちの世界で見ていてね」

 

 

 

 

ご主人様を先頭に、みんなはかなり先まで行っていた。

 

僕は走り始め、時々振り向いては、小さくなっていくお屋敷や自分の小屋を見ながら、速度をトップギアに入れた。

 

 

 

さあ、今日でこの場所ともお別れだ!

 

 

 

今日も足は絶好調。速度がぐんぐん上がり、風にように走り始めた。

 

そしてあっという間にご主人様たちに追いつき、そしてあっという間に追い抜いた。

 

 

 

 

向かう先は分かっている。

 

北だ!

 

 

 

 

僕は北に向かって全速力で走り抜けていく。

 

 

 

後ろからご主人様の

 

 「ジョン、どこへ行くんだジョン!」

 

という叫び声や、あわてた仲間たちの吼え声や

 

 「ジョン、バカなマネはよせ! 戻るんだ!」

 

ハリーの声も聞こえた。

 

 

 

 

僕はそれらの声を背に、北に向かって風のように走り去っていった。

 

「❹いのちの循環」へ続く

 

 

 

 

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その①

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その②

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「がん」を含めて(ガンでなくても、もちろん歓迎)、病気や気持ちや環境など、その中で感じていること、悩んでいることなどを語り合える仲間がいるだけで、心が軽くなります。

人は、話すことによって癒されるのです。
(カール・ロジャース談)

 

7月26日は約55名の方がいらっしゃいました。

本音で語り合える仲間って大事だと思います。

 

 

 

その③

「時空の杜」リボーン(再誕生)・リトリート

9月2日(金)~4日(日)

生きているうちに、1回死にましょう!

リボーン・リトリート案内

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その④

またまた長崎に行きます。

 

 

その⑤

「時空の杜」サレンダー瞑想キャンプ

10月20日(木)~23日(日)

サレンダー瞑想キャンプ案内

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