「さとりをひらいた犬/ほんとうの自分に出会う物語」

 

無料公開始めました。

 

もう読んだ方も、そうでない方も、お楽しみいただければ嬉しいです。

 

★Amazonのレビューでは5つ星の4.6、レビューは152レビュー(2022.8.13時点)頂いています。

 

★トップレビュー

5つ星のうち5.0 読んでいるうちに心が自然と楽になる本

2022年6月2日に日本でレビュー済み

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目から鱗、さらに心からも鱗雲が落ちたように感じております。後半のクライマックスは言葉では表せない面白さ。身体、心、魂の3つの奥の深いお話です。この本は、YouTubeで知りました。推奨します。

 

たんぽぽ

5つ星のうち4.0 私も泣けました

2022年5月21日に日本でレビュー済み

Amazonで購入

登場するのはすべて動物ということで、狼好きな私には嬉しかったです。
美しい風景描写も印象的でした。
個人的にはシャーレーン様の観音菩薩を思わせる存在に憧れます。
読後すぐにもう一度読み返したくなりました。

 

★お読みない方は、学識サロン(登録者51万人)さんが作ってくれたこの画像(約10分)をご覧いただけると、どんな本かお分かりになると思います。(感謝!)

 

 

 

 

最初からお読みになりたい方は、こちらからお読みくださいね。

 

それでは、お楽しみください。

 

 

第2話『魂の声を聴く』

 

 

「お前さんは、ほんとうの自分を知らない」

 

ダルシャの蒼い目が僕を貫いた。

 

 

 

 ほんとうの、自分???

 

 

 

 僕は、心に湧いた疑念を振り払うように言った。

 

 

 

 「それがどうしたと言うんだ。何が悪い。お前もご主人様に撃たれたじゃないか」

 

 

 

 「いやいや、そういうことじゃない。

 

まあ落ち着け。

 

じゃあ聞くが、お前さんはトドメをさした獲物たちに何か恨みでもあったのかい? 

 

その獲物を自分が生きるための糧として狩ったのかい? 

 

その者たちのいのちは、お前さんのいのちになったのかい?」

 

 

 

 「いや…そんなことはないけれど…」

 

 

 

 「恨みも無い動物たちを殺し、人間さまに届け、ご褒美のえさをもらう…お前さんは、たったそれっぽっちの存在なのかい?」

 

 

 

 それっぽっち? 

 

 たった、それっぽっち…?

 

 それって、たったそれっぽちのことだったの?

 

 

 

 

 いや、いや、いや、そんなことない。

 

 

 

僕の仕事が、たったそれっぽっちなんてことは、絶対にない、ありえない。

 

もしもそれがその通りだったら、僕はいったい何なんだ。

 

僕の人生は何だってんだ。

 

 

 

だから、それっぽちなんかじゃない、絶対にそんなことない。

 

 

僕は猟犬、ご主人様に愛されている、とっても優秀で有名なあの、猟犬ジョンなんだ!

 

 

 

 「そ…それが僕の仕事だ! それが僕だ」

 

 

 

一所懸命に頑張って答えたけれど、でも、なんか言葉に力が入らなかった。

 

 

 「もう一度言う。俺たちの本質は『自由』だ。

 

俺たちが生まれたのは、誰かに飼われるためでも、誰かに仕えるためでもない。

 

ましてや、誰かに利用されるためでもない」

 

 

 

 「…」

 

 

 

「お前さんは、自分以外の誰かにご褒美をもらって生きているだけの、そんなちっぽけな存在なんかでは断固としてない。

 

俺たちは自分で自分の人生を選択し、自分の意志で生きる力を持っているんだ」

 

 

 

自分の意志? 

 

自分の選択?

 

 

 

そういえば、今まで自分で選択したことなんてあっただろうか?

 

いつも決まったレールの上を進んでいて…

 

与えられた役割をこなしているだけで…

 

ご主人様に期待されたことに応えているだけで…

 

それが普通だと思っていて…

 

 

 

 

そこに“僕”はいただろうか?

 

 

 

 

「思い出すんだ、ジョン。ほんとうの自分を

 

 

 

僕?

 

僕?

 

 

 

ほんとうの僕?

 

 

ほんとうの僕って、なんだ??

 

 

 

 

 

ダルシャの深い声が僕に響く。

 

 

それはまるで、何かを突き動かすドラムのように、低く、強く、ずんずんと胸の奥底に響いてくる。

 

 

 

 なんだ、なんだ、この感じは? 

 

 

 

 「お前さんが今の生き方で十分に満足なら、それに越したことは無い。だが、よく自分に聴いてみるんだ」

 

 

 「な…何を聴くんだ?」

 

 

 

 「今の自分は“ほんとうの自分”なのか? “私は、私の人生をほんとうに生きている!”と言うことが出来るか?」

 

 

ダルシャはそこで一度言葉を区切ると、僕の目をじっと見つめながら、さらに聞いた。

 

 

 

 「 “これが私だ。これがほんとうの私なのだ!”と、

 

いまの自分をひと筋の疑念もなく、

 

自分という存在に対して、胸を張って言い切れるか?」

 

 

 

 「そ…それは…」

 

 

 

 それは…言えない、と心のどこかで声がした。その瞬間、涙が出そうになった。

 

 

 

なんだ、これは!

 

 

 

 「ジョン“生存している”と“ほんとうに生きている”とは、存在の形態が違うのだ。

 

今の君は生存しているだけだ。生きてはいない。それに気づくんだ」

 

 

 

 「僕が、生きていない?」

 

 

 ダルシャはそれに答えずに、話を続けた。

 

 「ほんとうの自分とは何なのか? ほんとうの自由とは何なのか? それを知りたくはないか?」

 

 

 

 ほんとうの、自分…?

 

 ほんとうの、自由…?

 

 

 

ダルシャはそこまで話すとゴフッと咳をした。ダルシャの口から血があふれてきた。

 

 

 「大丈夫か…」

 

 

思わず声をかけてしまったけれど、それは猟犬が獲物に言うセリフじゃなかった。

 

ダルシャは大きく深い蒼色の目を細めながら言った。

 

 

 

 「いいんだ。俺の命はもうすぐ終わる。

 

それは気にするな。

 

だが、あまり時間がなさそうだ。

 

その前にお前さんに言っておく。

 

俺は北の大地から来た」

 

 

 

 「北の大地…」

 

 「そうだ。ここからはかなり離れたところだ。そこはハイランドと呼ばれている『俺たちの故郷』がある。

 

俺みたいな狼族だけじゃない。

 

お前さんみたいに人間に飼われていたやつらも、ほんとうの自分を探しにやって来る。

 

ハイランドは、ほんとうの自分、ほんとうの自由に目覚めた者のみが、たどり着ける場所なのだ。

 

ほうぼう旅しながら、そういうやつらへの【道案内】をすることが俺が選んだ生き方さ」

 

 

 「道案内…」

 

 

 「そう、道案内だ。だからもし、俺の話でお前さんの心の中が少しでもざわついたなら、お前さんに俺の最後の招待状が届いたってことだ」

 

 

 

 「最後の…招待状…」

 

 「ジョン、『魂の声』を聴いてみるんだ」

 

 「魂の声…?」

 

 「そして、もし、“ほんとうの自分”を探す決心がついたならば、ここから北へ進むとベレン山という山がある。そこに行け」

 

 「ベレン山? そこには何が?」

 

「焦るな、物事には順序というものがある。行けば分かる」

 

 

 

 そこまで言うと、ダルシャはまたゴフッと咳をし、大きな血の塊を吐き出した。

 

 「ダルシャ…」

 

 

 

 胸の奥深くに熱くほとばしる何かが、ごごご~っとこみ上げてきた。

 

 

 

 その熱いものは

 

「行け! 行くんだ、ジョン! ほんとうの自分を探し出せ!」

 

と駆り立てているようだった。

 

 

 

 これが、魂の声…?

 

 

 

 遅れてきた仲間たちの鳴き声が、遠くからだんだん近づいてきた。

 

ダルシャは深い蒼色の目で僕を見つめながら、優しく言った。

 

 

「すべては決まっていたことだ。

 

今日、俺がここで銃に撃たれ、お前さんと出会う、ということもね。

 

じゃあな、ジョン。お別れのときだ。いいか、迷ったときは魂に聴くんだ。

 

魂はすべてを知っている

 

 

 

 「魂は、すべてを知っている…」

 

 「そうだ、忘れるなよ、ジョン」

 

 

そこでダルシャはニコッとと微笑むと、澄み渡った大空を見上げた。

 

 

 

「俺はあっちの世界に行く。

 

俺は俺の人生を生きた。

 

ほんとうの俺を生きた。

 

精一杯、生きて生きて、ほんとうの俺を生き切った。

 

何て幸福な一生だったんだろう。

 

神よ、大いなる存在よ、感謝いたします、ほんとうに、ほんとうに、ありがとうございます」

 

 

 

そしてまた、僕を深く澄んだ蒼い目で見つめた。

 

 「ジョン、俺の最後の話を聞いてくれて、どうもありがとう」

 

 

 

 言い終わると、深い蒼色の目から生気が抜けていった。

 

僕はダルシャが死んだことを悟った。

 

 

 

 さっきまでダルシャだった存在は、生気をまるっきり失って、ただの物体になってしまった。

 

 

遅れてきた仲間たちが走ってやってきた。

 

 「ジョン、なんだ、コイツは。バカでかい犬だな」

 

息を切らしながら、親友のハリーが言った。

 

 

 「犬じゃない。狼だ」

 

 「狼か…でかいな。初めて見るな」

 

 

ちょっと元気の無い僕に気づいたのか、ハリーが問いかけてきた。

 

 「どうしたジョン、いつものお前らしくないな。もっと喜べよ。お前の手柄だぜ。どっかやられたか?」

 

 「いや、大丈夫だ。どこもやられてない」

 

 僕の声は、自分でもびっくりするほど、小さかった。

 

 

 

 仲間の犬たちは口々に大きな遠吠えを上げ、ご主人様に場所を教え始めた。

 

しばらくすると馬に乗ったご主人様が従者二人と、獲物を乗せる馬をもう一頭連れてやってきた。

 

 

 「おお、狼か、大きいな! これは上物だ。このあたりで狼は珍しいぞ。

 

毛並みもいいし貫禄もある。

 

何よりこの蒼い目がいい。

 

この目つき、こいつは相当な歴戦の猛者だな。

 

これは他の連中に自慢できる。

 

ジョン、またお前の手柄だな。帰ったらご褒美をやろう」

 

 

 

 そう言うと従者に

 

 「運んどけ」

 

そう言い残し、次の狩りに向かってまた走り去って行った。

 

 

 

仲間の犬たちは、ご主人様に遅れまいと口々に吠え立てながら、後を走っていった。

 

僕が走りながら後ろを振り向くと、従者が二人がかりでダルシャを粗雑に馬の背にほうり投げていた。

 

 

 

僕はそれを見て、とっても悲しくなった。

 

 

「❸冒険への旅立ち」へと続く。

 

 

 

 

 

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★講演会など

その①

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今年1月と2月に開催して大好評だった、心理学TA(交流分析)の無料ZOOM講座をまた開催します。

◎8月20日(土)13:30~16:30(zoom)

(同じ内容を2回開催します)

 

お申込みはこちらのページから出来ます。

https://strokefullife.org/application_form

 

前回参加された方は良くお分かりだと思いますが、この講座では、いわゆる無料セミナーによくある「ほかの講座の案内」や「広告宣伝」などは、ほぼありません。

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がっつり3時間、TAを学びます。

『心理学に興味がある、もっと自分を知りたい、自分のエゴの特徴を知りたい』

こういったことにご興味のある方は、ぜひいらしてください

 

 

その②

無料お話し会「リーラの会」

8月26日(金)20時~22時(ZOOM)

 

「がん」を含めて(ガンでなくても、もちろん歓迎)、病気や気持ちや環境など、その中で感じていること、悩んでいることなどを語り合える仲間がいるだけで、心が軽くなります。

人は、話すことによって癒されるのです。
(カール・ロジャース談)

 

7月26日は約55名の方がいらっしゃいました。

本音で語り合える仲間って大事だと思います。

 

 

 

 

その③

「時空の杜」リボーン(再誕生)・リトリート

9月2日(金)~4日(日)

生きているうちに、1回死にましょう!

リボーン・リトリート案内

お申込みはこちらから

 

その④

またまた長崎に行きます。

 

 

その⑤

「時空の杜」サレンダー瞑想キャンプ

10月20日(木)~23日(日)

サレンダー瞑想キャンプ案内

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