時代を越えた応援歌。ZARD「負けないで」 | よねともが気ままに思うブログ

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本日はZARD「負けないで」(1993年リリース) です。




1992年の「眠れない夜を抱いて」がスマッシュヒットしたこともあり、徐々にZARD、坂井泉水さんの名が世間に知れ渡るようになります。この当時のZARDは、まだバンド形式で、坂井さんはボーカル担当で、他にもバンドメンバーがいました。しかし、徐々にフェードアウトするような形でメンバーが一人、また一人と抜けていき、同年のシングル「IN MY ARMS TONIGHT」の頃にベースとドラムが抜けていくようになり、ZARDは「坂井さんによるソロユニット」の色が強く出るようになります。

「IN MY ARMS TONIGHT」はTUBEのギタリストで作曲担当の春畑道哉さんが作曲を手掛けるなど、それまで織田哲郎さんがシングルA面曲を手掛けていた路線から一度外れて、他者が作曲をするようになっていきます。坂井さんもスタッフも完成度に満足しており、ここから「坂井さんの詞に他のミュージシャンはどのような曲が付くのか」というワクワクさも加わります。とはいえ、多くの代表作を書いた織田さん、相性が良くヒット曲を多く出してきた栗林誠一郎さんの作曲作品が特に抜きん出ていたと私は思います。

そんなZARDで、後世に残る代表作となったのがこの「負けないで」です。

この曲は後にも触れますが、J-POP史に残る応援歌として幅広い世代に愛される曲ですが、実は元々はドラマ主題歌で、松雪泰子さん主演のフジテレビ系ドラマ「白鳥麗子でございます!」の主題歌でした。


「白鳥麗子でございます!」のワンシーン。左は松雪さん、右は萩原聖人さん。

ドラマ主題歌であることが知られていないほど、曲が独り歩きしていった名曲がこの「負けないで」。元々は作曲担当の織田さんが、自身の作品用に書いたメロディーでしたが、ちょうど制作時に楽曲提供の依頼があった際に、依頼のイメージとこの曲のメロディーがピッタリだった為、そのままZARDサイドに渡したそうです。そして渡った曲に坂井さんが歌詞を付けるとプロデューサーの長戸大幸氏が「これは売れる!!」と確信したそうです。また、坂井さんはここまでの作品が恋愛をテーマにしたものが続いており、ちょっと疲れていた時にこの織田さんのメロディーを聴いて「応援歌っぽいな」と思ったことから着想を得て、一気に歌詞を書き上げたといいます。また、長戸氏は歌詞を見て「恋よりも夢を選んで、遠くへ行ってしまう遠距離恋愛の歌」と思ったそうです。

現在では「応援歌」としてこの曲は愛されていますが、AメロやBメロの歌詞を見ると、あながち長戸氏の考察も合っているようにも思います。ここからは私の私見における「負けないで」の歌詞の考察といきましょう。

ふとした瞬間に 視線がぶつかる
幸運(しあわせ)のときめき 覚えているでしょ

ここで、「わたしはあなたに恋をした瞬間」が描かれています。何でもないような時にあなたに視線が合い、照れている姿が目に浮かびます。「幸運のときめき」はこの事を言っており、「恋した瞬間」をあなたは覚えているよね?と聞いています。

パステルカラーの季節に恋した
あの日のように 輝いているあなたでいてね

「パステルカラー」は淡い色彩を指したもので、具体的にどの季節かが明言されていません。恐らく季節でいえば薄ピンクの「桜」が咲く春と私は推測します。(勿論他の季節でも該当するはずです) わたしはあなたに対して「あの春の爽やかな季節のときみたいに、輝いていてね」とあなたに呟くのです。

負けないで もう少し 最後まで走り抜けて
どんなに離れてても 心はそばにいるわ

この「負けないで」は、あくまで他人と競って「負けない」というのではなく、「自分に負けないで」という意味合いだと思います。最後まで自分の夢を叶える為にもやり切ろうと鼓舞しています。そして、どれだけあなたとわたしが離れていようとも、いつでも心はそばにいるとあなたにエールを贈ります。

ちなみにこの「最後まで走り抜けて」は当初の歌詞は「最後まであきらめないで」という歌詞になっていましたが、これは岡村孝子さんの「夢をあきらめないで」と詞がダブってしまうために、ボツにしたといいます。

追いかけて 遥かな夢を

あなたの夢をずっと追いかけて!と恋よりも夢を選んで追いかけるあなたを応援しています。

何が起きたって ヘッチャラな顔して
どうにかなるサと おどけてみせるの

夢を追いかけるとわたしに打ち明けた時のあなたは「何が起きたってヘッチャラだよ」とわたしの気を軽くするように話していて、「どうにかなるサ」とおどけていました。

''今宵は私と一緒に踊りましょ''
そんなあなたが好きよ 忘れないで

打ち明けた時の夜は、おどけた態度から急に紳士になり、「一緒に踊りましょ」とエスコートしてくれました。色んな顔を見せてくれるあなたのそういうところがわたしは好きなのよと心を掴まれます。

負けないで ほらそこに ゴールは近づいてる
どんなに離れてても 心はそばにいるわ

「自分に負けないで」と再びあなたにエールを贈りわたし。もうすぐそこにあなたの目指すゴールが見えています。離れてても心はそばにいるんだから、頑張って!

感じてね 見つめる瞳

どんなに離れてても心はいつもあなたのそばにいます。もし挫けそうになったら、あなたを見つめるわたしの瞳を思い出してね、とあなたに「声援」を送るのでした。

織田さん作曲ではいつも「Bメロ」にフォーカスを充てますが、この曲は特に素晴らしいテクニックとなっており、どうやったらBメロは盛り上がるようになるのかを考えて作られています。盛り上がる最中に「あの日のように」の部分でマイナーのコードを必然的に使うことで、何処かに「憂い」を感じるような仕掛けが施されています。織田さんならではのテクニックと作曲技法だと思います。

アレンジは葉山たけしさんによるもの。ここまでシングルA面曲は明石昌夫さんによるものでしたが、ここに来て葉山さんが初登板しました。葉山さんのアレンジは至ってシンプルな5ピースのギターポップで、ギター・ベース・オルガン・ドラム・タンバリンのみで構成されています。しかしそのシンプルさがゴチャゴチャせず、リスナーにシンプルに音を聴いてもらえる、抜群のアレンジです。これ以上足すと聴きづらく、引くと薄過ぎるサウンドになるので、ダイレクトにシンプルなギターポップにした葉山さんのアレンジは見事だと思います。サビで出てくるコーラスですが、大黒摩季さん・栗林さん・生沢佑一さんが参加しています。

ZARDの全シングルで一番の売上となっているのは勿論ですが、現在でも世代を越えて愛されるJ-POP史に残る名曲であることに間違いありません。