走りくる影は、明日への追い風。サザンオールスターズ「君こそスターだ」 | よねともが気ままに思うブログ

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本日はサザンオールスターズ「君こそスターだ」(2004年リリース)です。




この曲はトヨタ自動車の「MORE THAN BEST」キャンペーンソングとして書き下ろされた曲で、夏にはトヨタ自動車のアテネオリンピック応援ソングとして使われました。

これまで、多種多様の曲を作ってきたサザンオールスターズでしたが、この曲が出るまでは応援歌を作ったことはありませんでした。しかし、リリース年の3月に桑田佳祐さんの父親が亡くなったこと、またオリンピック開催年(2004年はアテネオリンピック)で、過去にオリンピックを観て感動したことなどの動機もあり、この曲を作ったそうです。ただ、選手を応援するという意味合いよりも、タイトルが「君」で対象が決まっていないこともあり、全ての頑張る人々に向けた歌詞となっています。ちなみにタイトルの「君こそスターだ」は桑田さんが神奈川・鎌倉市を歩いていた際に思い浮かんだもので、かつて放送されていたフジテレビ系オーディション番組の「君こそスターだ!」とは無関係としています。

稲村ヶ崎は今日も雨 海啼く南風


稲村ヶ崎。

有名なこの歌い出しは鎌倉市の観光スポットで、夏場には海水浴客で賑わい、それ以外の季節でもサーファーが多く訪れる場所です。桑田さんが1990年に監督した映画「稲村ジェーン」はここが舞台となっています。始まりは稲村ヶ崎が「今日も」雨であることから始まります。雨が多く、なかなか晴れ間を見せてくれないのでしょう。ちなみにですが、この歌い出しは桑田さんが影響を受けた内山田洋とクール・ファイブの代表曲「長崎は今日も雨だった」から拝借したと考えられています。

砂にまみれ見つめ合った 手をつなぎ泳いだ
そんな過去のほうが好きだよ

稲村ヶ崎での甘い想い出に耽る僕。南風に煽られながら記憶を呼び起こします。浜辺で砂にまみれて恥ずかしながらも見つめ合った時。手をつないで海岸へ走り泳いだ時。今の稲村ヶ崎の天気のような淀んだ気持ちを抱えた現在よりも、はしゃぎあった過去のほうが好きだったなぁと思うのです。

飛び立て 真夏の大空へ
輝け波しぶき Woo...

それでも僕はいつまでも過去にすがりついていられません。いつか未来へ飛び立つ時がやってくるのです。真夏の大空へ向かって走り出す僕。いつの間にか晴れ間が見えてきて、波しぶきはキラキラと輝いています。

いつも僕をそばにおいて 二度と離さないで
あの日に戻れたら

君が魅せてくれた過去の夏の想い出。本当は君とずっと居たかった。そばに居てくれていて、離れないで欲しかった。何度もあの日に戻れたらな、と思ったことでしょうか。そんな過去の僕を振り切って前へと走るのです。

走りくる影は 明日への追い風
永遠に見果てぬ夢

このサビのフレーズはメロディーと歌詞の相乗効果が抜群で、サザン屈指の名フレーズだと思っています。楽しかった過去という影が僕に迫りくるけど、それを振り切っていくことが、僕にとっての未来への追い風になっていくのです。それはずっと夢見ていた将来へと繋がっていきます。

終わりなき夏の 情熱の物語
惚れたよ 君が魅せたドラマに乾杯

そしてこれは僕の終わりなき夏の一つの物語なのです。それも全て君が居てくれたからこそ、そして導いてくれたのも君でした。その物語に全力で僕は向かっていくのです。

元々この曲はCMに合わせて作られたので、サビから制作され、その後にフルで制作されました。夏にリリースされたこともあり、サザン十八番の軽快なポップスになっています。クリーンな響きの小倉博和さんのエレクトリック・ギター、原由子さんのピアノ、間奏のハンドクラップ。どれをとってもフレッシュなサウンドです。松田弘さんはドラムの他に、持病の腰痛が悪化して満足にレコーディングに参加できなかった野沢秀行さんの代わりにパーカッションも担当しています。桑田さんがベースを弾くことが多かったこの時期の曲では珍しく関口和之さんの太く軽快なベースも聴けます。桑田さんはアコースティック・ギターとキーボードを担当しています。

しかし、この曲はサザン初の応援歌、そして翌年には選抜高校野球の入場行進曲に選ばれ、50万枚近い売上を誇るなど、2000年代のサザンを代表する曲にも関わらず、2004年の年越しライブ「暮れのサナカ」で披露された以降、一度もライブで演奏されず、2018年のプレミアム・ベスト・アルバム『海のOh, Yeah!!』にも収録されないなど、作った桑田さん本人が嫌っていることでも知られています。ラジオで度々言及されていますが、理由は語られていません。推測ですが、「TSUNAMI」以降、売れ線系の曲が多くなったこと、またその時期に作られたアルバム『キラーストリート』も桑田さんが納得いっていないこともあり、この曲はそうした背景から、売れ線を狙いすぎてポップになりすぎた、アレンジも突出した特徴が無いことが原因ではないかと思われます。2014年には同じ応援歌で「東京VICTORY」がリリースされていますが、恐らく「君こそスターだ」の反省を活かして、売れ線になり過ぎない、いい塩梅で作られていると思われます。事実、「東京VICTORY」はリリース以降全てのライブで披露され、『海のOh, Yeah!!』にも収録されています。

それでも私は「君こそスターだ」の方が好きです。リアルタイムで聴いたとき (当時小学5年生) の印象が未だに残っていますからね。夏のフレッシュなサザン・サウンドは色褪せません。



※自身のInstagramに掲載したものを再掲。

※2024.5.6に大幅加筆。