【映画評】マイ・インターン アン・ハサウェイのコスプレ映画 オジサンは特に希望は持てない
マイ・インターンでございます。
録画してあって観よう観ようと思っていて、今頃になってしまいました。
N.Y.でアパレルのネット販売会社を立ち上げた女性社長は、仕事は順調だがストレスも抱え、また彼女のために家庭に入った夫と小さな子供のことも気になりつつ、今は仕事中心の生活をせざるを得ない。
インターンとして雇われた御年70歳のベンは、その才覚と人生経験から、若者中心の会社の中で慕われる存在となり、やがて女社長の直属の部下として働くようになる。
あー憎たらしいね。ハリウッドの有名女優さんに、おそらく一流のスタイリストが付いて、シーンごとに違った衣装を見せる。これがいちいちカッコいい。似合う。絵になる。サングラスが映える。
N.Y.が舞台で、レンガ造りの古工場(まんまブルックリンスタイルじゃねえか)をリフォームしたオフィスでIT&アパレルのベンチャーやってて、社員はみんな若くて私服で仕事して。狙いすぎっちゃー狙いすぎです。
そいで都合よく、人柄が良くて人生経験豊富で気が利いて、ぜったいセクハラなんかしなさそうなオッちゃんが現われて、女社長の「立場上虚勢を張っていたけれどもホントはツライのよシクシク」的な悩みやらを聞いてくれて。最後は女社長は旦那と和解して大団円って、なんか安いドラマだなあ(笑)
そんなシナリオでも映画として観られるのは、やはり名優ロバート・デ・ニーロの存在感。この人ギャングのイメージ強いけど、こうやってどんな役でもこなしていけるところは、ベテランならでは。もう安心して見てられるし、そのことがこの映画の中での役どころでもいい効果を出してる。だからねー。このキャスティングはズルいですよ。ハイ。
だからね。これも気軽に見るべき映画ですよ。豪華な月9と思ってみれば。なんの問題も無い。
これ観るとどうしても「プラダを着た悪魔」を思い出しますが、あっちはもっと殺伐とした映画でしたね。
同じようでいて、目指すところは180度異なる。これもなかなか興味深いです。
【映画評】シャドウ・イン・クラウド ヒットガール主演のB級SFアクションは退屈しのぎにはなる…
シャドウ・イン・クラウドでございます。
「キック・アス」のヒットガール役で注目されたクロエ・グレース・モレッツが主演です。
この方、愛嬌のある顔でわりと好きなんですが、女優としてはあまり作品に恵まれてはいないというか、まあ正直言ってパッとしないです。「イコライザー」の女子大生役なんかはわりと地味だけど印象に残ってまして(「魚釣れた?」の名台詞がある)主役を張るより地味だけど光る脇役で活躍しそうなタイプに思いますが。
で、今回は主役です。
第二次大戦の爆撃機に、大事そうに荷物を抱え「密命を受けた」と言って突如乗り込んできた女性兵士は、一応空軍兵士としての経験があるらしいが、胡散臭いと言われて機銃座に押し込められる。
飛んでいる飛行機の翼に取り付く、コウモリのような謎の生き物を発見し、機内に通報するも相手にしてもらえない。そして一同は日本空軍機と謎の生物とに襲われ闘うこととなる。
映画の前半は、ほぼ機銃座に座るクロエの画のみで進行する。この辺、70~80年代の低予算B級映画を思い起こさせ懐かしい。この場合、役者さんが顔演技でがんばるしかないが、クロエは実に真面目にやっている。荷物の正体が分かってからの泣き芝居、見事日本空軍機を撃破する場面、機銃座を出てからの、翼を移動するトンデモ演出(いや、トム・クルーズがやるならわかるんだけどね)も、ラストの謎生き物とのガチのどつき合いに至るまで、クロエさんがんばってます。
密命とやらの正体も、女性兵士の必死の行動の理由としては十分説得力があるでしょう。あるんですけど、件のカバンの扱いが、それはもう荒っぽくて、んなわけねーだろ!!とツッコミたくなります。
いろいろとツッコミたくなることも全て含めて!土曜の夜にポテチとビールで観るには文句なし!の一本です。まあいいじゃないの!(笑)とは言え、テーマの一つが強い女性を描くことってのはわかるけど、エンドロールで延々移る女性兵士の姿はベタ過ぎて少々興ざめ。もう少し含みを持たせるというか、言外に語るということを、この監督さんは考えた方がいいですね。はい。
【映画評】トゥルーノース 北朝鮮の強制収容所ってひどいな! で、みんな次どうする?
トゥルーノースでございます。amazonprimeで視聴。
テーマが北朝鮮で全編英語ですが、日本とインドネシアの合作、監督は在日コリアンの方だそうです。
北朝鮮で暮らす4人家族、父親が逮捕。母と息子と娘は父の罪名も知らされず裁判も無く、強制収容所に送られ、そこから強制労働の日々が始まります。裁判もなければ罪状も無いので、刑期がありません。永遠にそこで働かされます。
こういうお話なので、おおよそのストーリーは想像がつきます。過酷な労働、乏しい食料、高圧的な刑務官、収容者同士の不信と密告、牢名主のようなベテラン収容者とそれによる支配。抵抗、諦念、一度は支配する側へ組するもやがて反省、人間性の回復、慈善と賞賛、そして脱出…
監督は10年もの月日をかけて脱北者からの取材を続け、この映画の実現にこぎつけたそうです。
逆に言えば、多くの方のエピソードを再構成したものでありドキュメンタリーとかノンフィクションでは無いわけですね。
この映画の価値は、このような非人間的行為が一国家によって行われていることを世に知らしめること。
しかしながら、ノンフィクションではないために、この作品をもってかの国を糾弾することは出来ない。
かの国は「これはフィクションであり妄想のようなもので、西側諸国のプロパガンダに過ぎない」と言うでしょう。
この映画を見せられた我々は、次にどうしたら良いのでしょう?
そこが見えないと問題提起にしかならない。公式サイトを見ても、この後について何らのサジェスチョンも無い(日本の大手製作&配給会社がこんなことに関わるはずもなく…)
アニメ作品として優秀で、説得力のある作品であるだけに、観るだけで次のアクションに何らつながらない状況が歯がゆい。
北朝鮮による拉致問題を我が国は抱えているわけですが、これも何ら進展が無く。
すぐ近くにあるのに、どれだけ遠くにあるんでしょう。かの国は。
そんな思いが交錯する、なかなかに複雑な感情を呼び起こす映画でした。