「当たり前じゃない」ということ | 龍馬と夢紀行

「当たり前じゃない」ということ

竹田城跡・福知山城を訪れた後、

舞鶴若狭道に車を乗り入れての帰路途中で舞鶴市へ。

 

舞鶴市に行くと必ずと言ってよいほど立ち寄るところは、

日本遺産にも認定されている赤れんが倉庫群の「赤れんがパーク」。

カフェやお土産売り場、そして展示施設という構成の施設となっています。

そして「赤れんがパーク」周辺で遅めの昼食を済ませると、

5kmほど舞鶴湾沿いに北上したところに「舞鶴引揚記念館」が現れます。

こちらも舞鶴では個人的にマストな施設になります。

 

過日、パリ五輪のメダリストの早田ひな選手が会見で、

「鹿児島の特攻資料館に行って、自分が卓球を当たり前にしていることを、

当たり前じゃないという風に感じ取りたい」という趣旨の発言がありました。

 

〝特攻資料館〟というところだけを切り取られて、

軍国主義を是認していると解釈されて中国や韓国で炎上したそうですが、

いうまでもなく、ご本人的には過去の苦しみや悲しみを理解し、

今、卓球ができていることへの感謝を込めた純粋な思いからでしょう。

そんな過去と現在の回路が繋がっている認識の上での発言のようです。

 

さて、「舞鶴引揚記念館」はシベリア抑留の一次資料を展示している博物館。

収蔵品のうち570点がユネスコ記憶遺産に登録されているとのこと。

 

戦争を知る世代が徐々に社会から消えかかっている現代、

こうした戦争関連の施設は戦争の悲惨さや平和の大切さ、

命の尊さなど様々な感情が重畳折りなす場所となります。

 

個人的に鹿児島の「知覧特攻平和会館」も観覧していますが、

こうした戦争ミュージアムに訪れると、

それまで何百万人の命が戦争で奪われたという活字から受ける重みと、

展示された名も知られていない一人の戦死が等分に感じられます。

 

ここを嚆矢として何百万人の戦死を掛け合わせれば、

その重みは想像を絶することになり、自ずと戦争に対する思いも変わるはず。

 

この「舞鶴引揚記念館」は戦争による死という側面よりも、

海外収容所で過酷な労働を強いられた日本兵たちの辛酸難苦が胸を打ちます。

 

昨年、辺見じゅん氏の『収容所からの遺書』を原作とした

映画『ラーゲリより愛を込めて』が上映されていましたが、

「舞鶴引揚記念館」からの資料などを参考に製作されたように思えます。

 

〝戦争ミュージアムなんて〟と興のうすい人はいわれるでしょう、

でも機会があれば一度足を運んでみてください。

きっと「当たり前じゃない」ということを感じられると思います。