第一話⬇️

 

 

 

ある時から、

その小さい国の人々は、何も言えなくなりました。

 

何が変わったのでしょう。

 

空気です。

空気が、変わってしまったのです。

 

 

 

あるところに

その流行病を恐れず、

治してしまうお医者さんがいました。

彼は町医者でした。

 

怖いはずの流行病を、なんでもない薬で治して

多くの人を救いました。

 

でも、恐ろしい流行病が、

なんでもない薬で治っては、

つごうの悪い人たちがいたのです。

 

だから

「流行病がそんな薬で治るはずがない、うそつきだ!」

と言われてしまいました。

 

その町医者では、たくさんの流行病の患者さんをみましたが、

本当に、ひとりも死んでいませんでした。

 

ある程度時間が経ってから、

他の国から「そのなんでもない薬が効くかもしれない」

と、わかってきました。

 

その町医者には、

ある時から予防薬によって体がおかしくなった人々が、

次々に相談におとづれるようになりました。

 

そしてその町医者は、

一部の人に起こる副作用の強さから、

「予防薬はもう、つかわない」と、きめました。

 

 

その町医者は言いました。

「空気がこわい。本当のことを言ってはいけない、嫌な空気」

だと。

 

彼が、むかしに感じた空気。

それは戦争の時代の空気でした。

 

戦争はおかしいと思っても、口にしてはならない。

戦争反対というと、非国民のレッテルを貼られる時代。

そして「お国のために」と、

多くのわかいいのちが散った時代。

 

町医者は言いました。

「流行病に感染するのは、わるいことですか?」

「流行病になった人には免疫がつきます、

それはとてもおめでたいことです」

 

明るく笑う町医者のことばに、流行病でピリピリしていた人々も、

だんだんと、心がほぐれてきました。

 

そしてそんな考えがすこしずつ広まると、

静かに町の空気が、変わりはじめたのです。

 

 

 

おおくのひとびとは、深く眠っているように、

まわりの人を守るため、良かれと思って

えらい人の言うまま、

次々に予防薬を飲んでしまいました。

 

それはやはり、空気でした。

 

のまないといけない空気。

のむのがあたりまえの空気。

のまないとまわりに迷惑をかける空気。

のまない人は、おかしい人という空気。

 

でも本当にそうでしょうか?

 

予防薬の危険をいうと、

本当のことを言っている人までが

うそつき、あたまのおかしい人と言われる、空気。

 

それが怖くて、何も言えなくなる空気。

 

でも、こころの強い少数の人々だけは、

あきらめずに、ずっとずっと、声を上げ続けてくれました。

 

そのおかげで、ゆっくりとですが、

「ほんとうこと」が知れわたりました。

 

「うそつき」といわれても、

「デマをいうヘンな人」という空気に、

へこたれなかった少数の人々のおかげです。

 

ほんとうの勇気のある人たちです。

 

 

 

また別の町では、

予防薬の重い副作用で苦しむ人がでてきましたが、

本当にごく限られた少数の人でした。

 

本当に、ごく少数の人でしたから、

何でもなかった多くの人々は、

 

「自分は何でもなかったのだから、副作用はうそだ」

とか

「たまたま、病気になっただけ」

とか

「気持ちの問題」

などという人たちや医者もいて、

副作用で苦しむ人たちは、

ただでさえからだの具合もわるい中で、

何も言えなくなりました。

 

でも、それをまわりで見ていた、

ごく少数の人だけは、声を上げはじめたのです。

 

そのごく少数の人たちは、

ふつうのひとたちよりも、感覚が敏感だったり、

ふつうのひとたちが、

みていないことを素早くキャッチできる、

ひといちばい繊細で慎重な種族たちでした。

 

 

 

 

その小さな国では、

すこしずつ、空気が動いて、変化がはじまっています。

 

こころをとぎすまして、しずかに見つめてください。

 

そして

なにも言い出せない空気の中で、

ついに多くの医師たちもが、

声を上げ始めています。

 

予防薬は、本当に効いているのか?

効果に対して副作用は強すぎるのではないか?

 

流行り病で1人も死んでない小さい子供には、

予防薬は本当に必要なのか? 

 

しずかに、冷静に、

ゆっくりと、見つめてください。

あなたにも「ほんとうのこと」が、見えてくるはずです。

 

「ほんとうのこと」は、

地味で自然なことです。

目立たずそこにあります。

大袈裟ではなく、しずかです。

はなやかでないけれど、あたたかいのです。

 

いそがしくせいかつしていると、見逃してしまいます。

せいかつにすきまを、あけてください。

 

ゆっくり考える時間をつくってください。

時間をかけて、みつめてみてください。

 

そういうせいかつのなかでしか、

ほんとうのことは、みえてこないでしょう。

 

 

 

つづく

 

 

 

 

 

架空の物語とは関係ないですが。。。時間泥棒が出てくる物語です⬇️