※これは、架空の国のお話です。

 

 

 

 

 

 

 

ある時、架空の世界で未知の病気が流行りました。

数百人のうち、持病のある高齢者1人が重症化して死んでしまう病気です。

 

そのうち、予防効果があるかもしれないという薬ができました。

 

「2回薬を飲めば、流行病にかからないし、

まわりにうつすと迷惑をかけるから」

と言われて、

町人は、役場の言うまま、ほとんどの人が薬を飲みました。

 

その予防薬は数百人のうち1人は重い副作用が出て死んでしまいます。

副作用で亡くなるのは全年齢です。

 

大きい都市では、流行病でたくさんの人が亡くなりましたが、

その小さい町では流行病での死者も感染者も周りにはいませんでした。

 

予防薬を飲んでも、なんでもない人もいましたが、

数十人は熱が出たり、具合が悪くなりました。

数人は入院しました。

ひとりは薬を飲んですぐ亡くなりましたが、

持病もあったので、因果関係は分かりません。

 

半年くらい経つと、効果が切れるから

「3回目を飲め」と言われました。

遠い国では3回目でも効かず、

「4回目も飲め」と言われています。

 

遠い国では、その予防薬をえらい人が決めた回数で飲み続けないと

買い物もできなくなった国もあるそうです。

 

そして、流行病では死なない小さい子供にまで

その薬を勧めてきます。

 

 

新しくできた薬なので、副作用はわからないそうです。

どんな副作用が出るかは、沢山の人が飲んでみないとわからないようです。

 

そして、副作用が出た人たちは、色々検査しても異常が出ないので、

「たまたま」とか「気持ちの問題」と言われてしまいます。

 

様々な症状が出て病院へ行っても、

「そんな副作用は聞いたことがない」と、

いろんな検査をされても異常は出ず、病院をたらい回しにされます。

 

そしてそのうちに、医者は治療法がわからないので、

最後には精神科を案内します。

 

 

こんなこともありました。

まだはじめの頃予防薬を飲んで

心臓が痛くなって死んでしまう人がいました。

 

でも、飲み始めて間もない薬で、

同じ症状の人も少数だったために

副作用とわからず、注意喚起した人もいましたが、

その小さき声は、

「予防薬を飲んで心臓痛くなるなんて嘘」

と言われ、かき消されてしまいました。

 

時が経ち、心臓が痛くなる人がある程度多くなってから、

「心臓痛くなる人もいるかもね」

という注意書きが追加されました。

 

 

今はまだ何もわからないのです。

新しい薬ってそういうことです。

 

 

新しい薬を前にして、あるお医者さんは、

「とても効く薬が出ました!みんなで飲みましょう。

子供も妊婦さんも全員飲んでください」

と言いました。

 

一方のお医者さんは、

「新しい薬なので、効くかもしれないけど、

今はまだ何が起きるかわかりません」

という意見でした。

 

薬なのだから、稀に重い副作用があっても仕方がない。

という医者もいれば、

元々この流行り病では子どもは死んでないのだから、

稀とはいえ重い副作用があるなら、

今はまだ飲まないほうがいい、という医者もいます。

 

 

どちらのお医者さんを、信じたらいいのでしょう。

 

 

でも、予防薬対して悪い意見を言うと、

流行病や予防薬に詳しいはずの大学の先生までもが、

「陰謀論者や嘘をいう頭のおかしい人」

とレッテルを貼られました。

 

そしてもうすこし時が経った時に、

「この薬は2回では効果がなくなり、

これからも一年に数回飲み続けないと、その流行病は無くならない」

と、えらい人の言うことが変わってきました。

 

また、

「感染予防効果はなく、重症化を予防するだけ」らしいこと

「新しく出てきた型の違う流行病には効かない」こと

などが後になってわかってきたようです。

 

そして、副作用には、

「生理がおかしくなる人がいるらしい」

「呼吸が苦しくなる人がいるらしい」

「髪の毛が抜ける人がいるらしい」など、あるようですが、

ある程度の困っている人の数が多くならないと、

副作用としては認められないようです。

 

 

だから、今言えることは、

『何が起きるかは、わからない』

ということ、だけなのです。

 

 

大丈夫かもしれないし、大丈夫じゃないかもしれない。

大丈夫な人もいるし、大丈夫じゃない人もいる。

 

その副作用が出る人と出ない人の違いは、まだよくわかっていません。

 

予防薬を飲んで数ヶ月後に、体の不調が出てくる人もいて、

もう予防薬のせいなのか、持病のせいなのかすら区別できません。

 

予防薬で副作用が出ても、治る人もいますが、

すべての人が、すっきりなおる治療法はまだないようです。

流行病にかかって、後遺症になる人も一定数いるので、

一概にどちらがいいとも言えないかもしれません。

 

でも、テレビでえらい人達が、

「新しい薬で死んだ人はゼロ」

「副作用は数日で治ります」と言っていましたが、

 

 

それは、ほんとうのことですか。

 

 

えらい人は、絶対まちがえないんでしょうか。

えらい人は、絶対うそを言わないんでしょうか。

 

昔えらいひとが「想定外」という言葉で逃げたこともありました。

そういえば、昔「戦争」をはじめたのは、えらい人達でした。

 

そして、いまだに予防薬で「死んだ人はゼロ」なのですか?

 

 

。。。。

 

今もその小さい町には流行病での死者はいません。

そしてその国全体でも、小さい子どもは流行病で1人も死んでいません。

 

なにか「不思議な魔法」でもかかっているように、

その国の死者は、他の国と比べてとっても少ないのです。

まるで、さざなみのように。

 

。。。。。

 

でも

その国の中でも、少数ののひとたちだけは、

この国で起こる異様な騒動を、

静かにじっと見つめているのでありました。

 

 

 

 

つづく