キャプテン・アメリカ/ブレイブ・ニュー・ワールド(2025)

※ネタバレあり

【再始動が描かれる】


新たなるキャプテン・アメリカ=サム・ウィルソンの活躍を描くキャプテン・アメリカシリーズ第四作。本作を視聴しての感想としては、しっかりと纏まった堅実な一作だったという印象。

主人公をスティーブからサムへ引き継ぎ、新たな再始動が描かれる本作。スティーブの三部作の硬派なサスペンスの雰囲気は引き継ぎつつも、シンプルで見やすい構成でシリーズを再構築したと言えます。

本作冒頭、大統領となったロスを取り巻く陰謀により、冤罪を着せられたサムの友人にして、歴史に記されてこなかった超人兵士イザイヤ。彼の無実を証明するために、サムは時に政府へ反抗しつつも、事件の真相と黒幕に迫る・・・

【シンプルな構成で見やすくまとまる】


本作と比較することで分かったのは、スティーブの三部作は激動だったということ。一作目、二作目、三作目と彼の生きる時代や、世間の見る目など、目まぐるしく変化する激動の環境の中で展開されてきました。名作ではありましたが、見るに当たり、視聴者が疲れてしまう激動の展開と情報量の多さ。

対して、主人公をサムへ引き継いだ本作は、シンプルな構成で、とても見やすい。友人の無実を晴らすというはっきりした筋書きに加えて、登場キャラクターも少数へ抑えられているため、スッキリと視聴できる。

話の展開については、あらゆる作中の謎の説明を、「黒幕の洗脳技術の仕業だった」ということで力押しで進めてしまうなど、強引さを感じる部分があるものの、起承転結がはっきりとしているためテンポ良く視聴できます。

そして、シナリオについて、シンプルすぎて、もう一声、と感じる部分は、しっかりとアクションでカバー。

【盾のアクションと空中戦】


スティーブの得意とした盾のアクションをサムもしっかりと継承。更にはサムが過去にファルコンとして研鑽してきた空中戦の技術を盾の戦闘と掛け合わせることで、新たなキャプテン・アメリカとしての独自の戦法を確立。

サムのファイティングスタイルには、ただスティーブを継ぐだけではなく、自分なりのやり方を加えていくというサムの意気込みが息づいているかのよう。アクションを通じてドラマを描くというスティーブ三部作の魂は、本作においてもしっかりと息づいていると言えます。

そして、中盤の海上の戦闘シーンは圧巻。多数のミサイルを相手取る目まぐるしい空中戦が展開されます。ミサイルへ盾を投擲して、跳ね返った盾が次のミサイルを撃墜。更には足でミサイルに乗り、海中に沈めるなど多彩な方法で活躍。飛行能力に秀でたサムだからこそできるアクションです。

空中戦が可能なMCUヒーローというとアイアンマンを想起しますが、アイアンマンの敵はウィップラッシュ、エクストリミス、サノス等、地上戦で相手取る者が多く、アイアンマンの空中戦の機会は、実はそこまで多くはありませんでした。

臨場感とアイデアに溢れる本作のサムの空中戦はMCUで描かれるものの中でも最高峰のクオリティと言えるでしょう。

そして、クライマックスのレッドハルクとの戦いも良い。サムが生身の人間であるからこそ、レッドハルクの攻撃を一撃でも食らえば危険ということがはっきり伝わり、スリルに溢れた決戦となります。

【超人兵士ではないからこそできること】


シンプルなシナリオではありますが、心をつかまれるポイントも。ロス大統領と黒幕スターンズの間には因縁があったことが明らかに。病に蝕まれていたロスを治療することと引き換えにスターンズは自らの危険な研究にロスを協力させていました。世界にリスクを与える取引ですが、長年疎遠となっていた娘との和解のための延命を望むロスはスターンズと取引をしてしまいます。それこそ、今回の事件の発端だったのです。

超人では無い生身の人間ロス、それゆえの、ロスの心の弱さが生むドラマ。サムはロスの後悔に寄り添います。超人兵士ではない常人のサムだからこそできること。サムが主人公となった意義が、ドラマにおいてしっかりと描写されている点は好感の持てるポイントです。

また、サムが相棒の二代目ファルコンの安否を気づかう場面は「ウィンター・ソルジャー」(2014)にて語られた、サムとかつての相棒ライリーの別れを想起させ、シリーズの積み重ねを感じさせます。

キャプテン・アメリカの再始動を描く第一作として納得の内容でした。