キャプテンアメリカ/ザ・ファーストアベンジャー(2011)

 

※ネタバレあり

【アベンジャーズシリーズ最重要作!】


数々の作品で世界観を共有するアベンジャーズシリーズ。連続性はあるものの、どの作品から見ても楽しめるよう1話完結の原則で制作されているのが本シリーズのポイント。自分の好きな作品、ヒーローから歴史をたどれる自由度こそアベンジャーズシリーズの魅力とは言えますがその中でも作品世界の要となる最重要作品は存在します。

「ファースト・アベンジャー」この作品を見ているのといないのではアベンジャーズシリーズの理解度に大きな差が出てしまいます。そこで今回は本作品をネタバレありで解説します。その上で是非、この作品にも触れてほしい。そんな思いで執筆します。

【キャプテン・アメリカ誕生】


時は現代よりさかのぼり第二次世界大戦下のアメリカ、主人公は強い正義感で従軍を希望するスティーブ・ロジャース。しかし、生まれつきの体の弱さが災いし従軍検査では不合格の連続。そんな中、彼の正義感を評価したアースキン博士から、軍で秘密裏に行われていた「超人兵士計画」の被験者として抜擢されます。

「敵を倒したいのではない」
「戦いを終わらせたいのです」

そう語るスティーブは命の危険を伴う実験に志願。超人の肉体を得て、世界の破壊をもくろむ秘密結社ヒドラとの戦いに身を投じます。

幼少期からの唯一無二の戦友バッキー・バーンズ。戦友にして惹かれあうペギー・カーター。天才科学者にして後のアイアンマンの父ハワード・スターク。心強い仲間を助力を得てスティーブは戦います。

戦いの中、多大な犠牲を払いつつもスティーブは遂にヒドラ首領レッド・スカルと対峙します。しかし、レッド・スカルが放った兵器を満載した飛行機はすでにアメリカ大陸を目指して突入態勢に入り、停止も不可能。

終末のタイムリミットが迫る中、彼に立ちふさがるのは超常の力、四次元キューブを手にするレッド・スカル。人々を救うため、スティーブの下した決断は・・・

【丁寧な王道、そして「毒」】


正義感の強い青年が戦いの中で成長し、ロマンスの兆しを見せながらも、大勢の命を救うための彼の自己犠牲で幕を閉じる。切なくも、王道の冒険活劇です。アベンジャーズシリーズ世界の起点となることから、よく言えば王道。悪く言えば凡庸なプロットです。

しかし、ディテールへのこだわりが王道のプロットを傑作へ押し上げます。

ペギーとのロマンスバッキーとの友情のドラマは細やかで丁寧な心理描写の積み重ねで観客の心をつかみます。更に、正義感の強い青年が危険な人体実験の素材となる。スーパーヒーローが国債の宣伝のための広告塔として利用される。四次元キューブというオカルト的テクノロジーが野望のための原動力、その象徴とされる・・・

等々、人間や組織への闇の部分へのシニカルな洞察ある「毒」のある描写が本作の作風を引き締め、単なる王道ヒーロードラマで終わりません。

(本作でスティーブに芽生えた組織への懐疑は続編「キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー」(2014)で決定的なものとなり「シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ」(2016)でのスティーブの選択へ繋がります。正義の意味を問うという点で、どちらもアベンジャーズシリーズ屈指の傑作です。ぜひご視聴をお勧めします。)

誰でも楽しめる王道ドラマでありながら、細かい点でこだわりぬいた脚本。そして盾を中心とする斬新なアクションシーン。第二次大戦下の時代の風景や衣装の描写。何より、スティーブを始め、魅力的なキャラクター描写。アベンジャーズシリーズに触れたことのある方には是非ご覧いただきたい傑作です。


また、本作のヒロイン、ペギーの活躍に目を奪われた方にはマーベルドラマ「エージェント・カーター」がお勧めです。本作の完結後、スティーブを失ったペギーがアイアンマンの父親ハワードにかけられた冤罪を晴らすための奮闘が描かれます。

その過程で、後のシールド設立への導線が敷かれます。また、彼女の協力者ジャーヴィスは後のアイアンマン搭載のAIのモデルです。また、ペギーのその後は「アントマン」(2015)でも語られます。

本作登場の「四次元キューブ」は「アベンジャーズ」(2012)の最重要アイテムとなるだけでなく、その後の所在を「キャプテン・マーベル」(2019)でも語られます。