名探偵ピカチュウ(2019)
個人的評価:A
※ネタバレなし
【意外なアプローチ】

突然ですが、皆さんは「ポケモン」
は好きでしょうか。
言わずと知れた大人気ゲームシリーズであり
代表的なメディアミックスの
テレビアニメシリーズは大成功をおさめ
サトシからリコ、ロイと主役交代を経て
現在まで継続しています。
そのようなポケモンがハリウッドで実写化。
果たしてどのように取り組みがなされるか
全世界からの注目が注がれます。
制作チームの出した答えは
実に意外なものでした。
「実写映画は『名探偵ピカチュウ ~新コンビ誕生~』を原作とする。」
映画スタジオからのアナウンスに全世界のファンは疑問符を浮かべます。
「名探偵ピカチュウ ~新コンビ誕生~」(2016)とは、ポケモンシリーズのスピンオフの3DS用ゲームです。ゲームシリーズにおいて番外編的な作品でした。
↓こちらです。

言葉を話すピカチュウが主人公の少年とバディを組み、探偵として難事件に取り組み、謎解きが展開されます。興味深い内容ではありますが、一般のポケモンファンにとっては知名度の高い作品ではありませんでした。
かくいう筆者も実写映画として大予算を投じ、全世界の映画ファンに向けてポケモンブランドをアプローチする作品の第一弾として、「名探偵ピカチュウ ~新コンビ誕生~」を選んだことの真意をつかみあぐねていました。
しかし、本作を視聴しその意図が分かりました
【ゲームとテレビアニメと実写映画】
そもそも、ポケモンの原作ゲームは独自の世界観で展開します。様々な個性を持つポケモンが草原や岩山、湖畔に暮らしており、主人公を始めとする「ポケモントレーナー」はポケモンたちと「モンスターボール」を軸に絆を結び
共に戦うパートナーとなり世界各地に点在する「ジムリーダー」達を倒して、ポケモンバトルの「チャンピオン」を目指すというのが、このゲームの大筋です。
(その旅の途上で、ポケモンを悪用する組織との戦いやポケモン博士への協力としてポケモン図鑑を完成させるなどの目的もあります)
そして、サトシ達を主人公としたテレビアニメシリーズも、これと近似したストーリーラインで展開します。ただ、このようなストーリーは十分な時間が取れるゲームやテレビアニメシリーズだからこそできること。映画でこの内容を扱うのは難しい。2時間前後の尺で、1作で起承転結を描き切る、そのうえで初めてポケモンに触れる視聴者にもリーチする内容を構成する。それが、実写映画製作チームが向き合う命題です。
そのために、彼らの出した答えこそ「名探偵ピカチュウ ~新コンビ誕生~」の実写化でした
【ミステリーの強み、映画のバランス】

「名探偵ピカチュウ ~新コンビ誕生~」を原作とした本作は、ポケモン達を画面上ににぎやかに散りばめつつ、不仲だった父の失踪の謎を、かつての父のパートナーのしゃべるピカチュウと共に追いかける主人公ティムの活躍を追う
王道のミステリーアドベンチャーとなりました。
ミステリーというのは物語の基本ともいえます。「謎」という物語上のハッキリした目的があり「犯人」というハッキリした悪役もいます。つまり、国籍、年齢、性別、文化問わず、誰でも見やすいジャンルの一つと言えます。
そんな王道プロットを主軸として「ポケモン」達の個性的なデザインと活躍を、画面上に所狭しと散りばめる。
ポケモンの「複雑なデザイン」とバランスをとるためにミステリーの「分かりやすい王道プロット」を採用する。ポケモンという巨大コンテンツを扱うにあたり、製作チームの取ったバランスの戦略は大成功と言えるでしょう。
【圧倒的ビジュアル力】
本作の大きな功績の一つは、ポケモンのデザインの可能性を押し広げたこと。数十年にわたりサトシの相棒として活躍を続けてきたピカチュウですが、その見た目は「裸一貫」。翻り、本作では「探偵」のコスチュームに身を包みます
これが、まあ、可愛い!
アニメ新シリーズにおける「キャプテンピカチュウ」、ゲームシリーズ「オメガルビー・アルファサファイア」の様々な衣装に身を包むピカチュウにも言えますがピカチュウは着せ替えで更に輝くポテンシャルがあります。
本作の舞台「ライムシティ」は「ブレードランナー」を思わせるネオン街。そこに住まうポケモンという不思議なデザインの相互作用も魅力。都会の風景でありながら、どこか幻想性を感じさせます。
本作、視聴前は日本のポケモンデザインをどこまでハリウッド映画に落とし込めるかの勝負と思っていたのですが、ふたを開けてみれば元デザインを活かしつつ、生物感を増しながら、実写的風景に落とし込むという、ハリウッド的な感覚で新たな魅力を掘り下げていました。
ポケモンのデザインの拡張性を世界に向けて広く知らしめたのは本作の大きな功績です
(惜しむらくは、ポケモン自身のデザインは魅力なものの、ポケモンのゲームやアニメの大きな魅力であるポケモンセンターなどの個性的な建造物デザインやアイテム等の小道具のデザインがあまり取り入れられなかった点でしょうか本作の舞台のライムシティは魅力的であるものの、デザインは写実的なものでした。)
(ゲーム的なデザインの風景や小道具を画面いっぱいに散りばめた点では後に公開された「ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー」(2023)が実に優秀な仕事を果たしたと言えます。)
【ゲーム実写化の最高クラス】
ゲームのデザインに最大限の敬意を払いほぼ原作そのままで日常風景に溶け込む画面のインパクト。CGチームの精密な仕事で背景に至るまで埋め尽くす躍動するポケモン達の生命感。主人公ティムとピカチュウの軽快な掛け合いとバディとしての成長物語。精密なバランス上に成立する数々の見どころ。
ポケモン経験者にも初心者にも広くアプローチする、ゲーム実写化の一つの完成形と言えるでしょう。





