ホークアイ(2021)
(ドラマシリーズ)
個人的評価:A
※ネタバレなし
【前回までのホークアイ】

アベンジャーズで最も格好良いヒーローは誰でしょうか。各々にそれぞれの意見があることでしょうが。私は、それはホークアイだと思います。個人的な推しはキャプテン・アメリカですが、格好良さについてはホークアイに軍配が上がると思います。
というのも理由がありまして、正直、ホークアイはあまり強くはありません。
人間としては最強レベルの身体能力を誇り、判断も的確、弓矢というアイコニックな特技もありますが比較対象はアイアンマン、ハルク、ソー、キャプテン・アメリカと、そうそうたる面々が並びます。戦う相手も異星人、ロボット軍団、これではホークアイを「強い」ヒーローと認識することは難しいでしょう。
しかし、いや、だからこそ彼の格好良さが際立つのです。異星人やロボット軍団といった規格外の敵を前にして彼は一切臆することなく戦場に赴きます。家族に心配されてもなお、その家族の未来を守るためにこそ、弓を片手に、自虐的な冗談を言いながら、常に勝利を見据えて先頭に立ち続けます。
時にピエトロやワンダといった若手をフォローし、時にロキのようなトリックスターに、トリックアローで文字通りの一矢を報い、ヒーローたちの激戦の中にあって等身大の格好良さを体現するホークアイはアベンジャーズの最重要人物と言っても過言ではありません。
アクション面で言ってもホークアイは重要です。アイアンマンやハルクが超人的なアクションを披露し画面が盛り上がりつつも現実感が欠如すれば、そこにホークアイ、そしてブラックウィドウの等身大アクションが挟まり映画にリアリティを取り戻す。ホークアイやブラックウィドウがいたからこそ、アベンジャーズのアクションは説得力を持てたのではないかと思います。
【クリントとケイト】

さて、そんなホークアイをついに主役へ迎えた、待望のドラマシリーズはどのように彼の魅力を引き出すのでしょうか。本作の冒頭、彼は戦いに傷ついた一人の男として登場します。エンドゲームの戦いを勝利で終えたものの払った犠牲の大きさがのしかかり、家族との平穏を過ごす中でも心の虚無感は拭えません。
そんな彼を再び戦場に引き込むのは、彼に憧れヒーローを志す、若き弓の名手、ケイト・ビショップです。ひょんなことから裏社会の暗殺ターゲットとなってしまったケイト。それにクリントの過去の罪がかかわっていたことからクリントは家族とのクリスマスを返上し、陰謀の渦中に飛び込み、ケイトと共に事態の収拾に取り組みます。
本ドラマの最大の魅力は、ケイトとクリントの化学反応です。若く、希望に溢れ、純粋な正義を体現するケイトは
数々のトラブルを呼び込みながらも正義感を行動で示し、停滞した状況を前進させ、時に現実論にとらわれがちなクリントに原点たる正義を思い出させます。未熟ながらも勢いを持った、魅力的なキャラクターです。
一方のクリントもまた、そんな未熟なケイトをフォローする中で、彼の本質である面倒見の良さといった魅力をいかんなく発揮します。
「アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン」(2015)や「シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ」(2016)の際もそうでしたが、ワンダやピエトロといった未熟な若き面々との組み合わせでクリントの渋い魅力に一層磨きがかかるように思われます。
更には「アベンジャーズ/エンドゲーム」(2019)の際のローニンに端を発する、過去の罪と向き合い多くの憎しみを一身に引き受ける、ダークな大人の魅力も掘り下げられ、贖罪にまつわるドラマは引き込まれます。
積み重ねある既存のキャラクターと未知数の新規キャラクターの組み合わせというのは、映画でも基本的な手法ですが本作はその王道的手法の一つの完成形と言えるでしょう。
【もう一人の主役、ケイト・ビショップ】
筆者はもともとクリントの活躍目当てで視聴したのですが、想像以上にケイトにも引き込まれました。
彼女のヒーローとしての原点は第1作目の「アベンジャーズ」(2012)です。その戦いのさなか、父親が犠牲となり、自分も巻き込まれそうな時、彼女を救ったのはホークアイの一矢でした。その雄姿に目を奪われたケイトは父のような犠牲を出さないため、一心に弓矢の技術の研鑽に努めます。そして現代、大学生となり弓矢の名手としての名声も得たケイトは遂に憧れのクリントと対面します。
王道中の王道ヒーローと言えるケイトは意外とアベンジャーズには珍しい存在と言えるかもしれません。
ヒーロー映画の金字塔として君臨するアベンジャーズシリーズですが、一方で王道への挑戦を絶やさないシリーズでもありました。大富豪のプレイボーイでありながらヒーローのアイアンマン、過去の正義を背負い、現代によみがえるキャプテン・アメリカ、宇宙規模の視点を持ち地球に飛来するソー
王道から少し距離を置いたヒーローを送り出してきたマーベルにおいて、ケイトのようなヒーローに素直に憧れるヒーローはシリーズにおけるいわば特異点であり、魅力的な活躍を見せつつ、地に足の着いた堅実なクリントを良い意味で振り回し、物語のボルテージを上昇させます。
(アベンジャーズの戦いをきっかけとして大きく人生が変わった存在としては「シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ」(2016)のバロン・ジモと共通しますが、彼がヒーローの影響の闇を体現する分、光の体現のケイトのまぶしさが際立ちます。)
【ノンストップのアクション】
アクションも素晴らしい。クリントとケイトのドタバタ劇で展開するアクションは多種多様なトリックアローで更に煌びやかに彩られます。
爆破、氷結、感電、磁力、散弾・・・アローだけでも見ごたえがあるのに、その上、戦いが車上やビルの側面で展開されるのですから目が離せません。また、アクションを通して洗練されるケイトとクリントのコンビネーションは二人のチームとしての成長を描写します。「キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー」(2014)で顕著だった、アクションを通して人間ドラマを表現するというマーベル得意の手法が如何なく発揮されます。
【総括】
全体としては堅実に纏まったアクションドラマでした。ドラマ冒頭のアベンジャーズミュージカルシーンはマーベルの世界観を鮮やかに再生させ、一部トリックアローのルーツはシリーズにまつわるあのヒーロー達とホークアイとの絆を表現します。そして、中盤から終盤にかけ登場するあのキャラクター・・・
マーベルの醍醐味たるクロスオーバー要素も満載です。何より、キャラクターの魅力を引き出すという点では満点のドラマと言えるでしょう。






