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Thousand Days

さうざん-でいず【千日手】
1. 同一局面の繰り返し4回。先後入れ換えてやり直し。
2. 今時珍しく将棋に凝っている大学生の将棋系ブログ。
主に居飛車党過激派向けの序盤作戦を網羅している他、
雑学医学数学物理自転車チェス等とりとめのない話題も…

※大昔の前回『矢倉右四間飛車 #4』


日々研鑽を積む優秀な将棋ソフト諸兄は遂に、
人類の築いてきた定跡群をも書き換え始めた。
(千田先生とAperyの共同研究?が絶賛漏洩中)

角換わり腰掛け銀の後手を救う無数の新手も、
相矢倉自体を消滅させかねない新種の急戦も…
彼らにより掘り出された世界の新たな一面だ。

特に63銀型居角左美濃での急戦は出来が良く、
矢倉が嫌いな居飛車党への福音となっている。
(角換わりと割と近い感覚で指せるのも高得点)

ただ現状では駒組みの手順が定まっておらず、
プロもソフトも未だ手探り感が拭えていない。
そこで初手からの手順の叩き台をここに記す。




76歩 84歩 56歩 62銀 68銀 34歩
…(0)


矢倉/中飛車含みの上記オープニングでは、
四手目62銀が現時点で最も美しく感じられる。
五手目68銀は最も自然かつ手広い応手ながら、
その瞬間に34歩が利く。(55歩に54歩と突ける)

先手が矢倉に組むなら66歩77銀の二択だが、
いずれも悪形なので、後手は急戦を狙いたい。
前者に対しては63銀型左美濃が有力と思われ、
後者には矢倉中飛車などで薄い中央を攻める。

スマートな角交換向い飛車を目指す57銀なら、
北浜-糸谷戦に倣って85歩33銀64銀型に組み…
77桂を待って筋違い角からの桂頭攻めを狙う。

ご機嫌な五手目55歩には85歩~74歩~73銀。
後手でありながら超速(超早繰り銀)に組める。
銀対抗なら二枚銀急戦でも持久戦でも良いし、
66歩型には山田定跡風に仕掛けても互角以上。




76歩 84歩 68銀 34歩 66歩 62銀
56歩 52金右 48銀 64歩 78金 63銀
…(0')


先手が66歩から矢倉模様に進めてきたなら、
54歩を保留して左美濃急戦の含みを持たせる。
(まだ先手三間飛車の可能性も残っているため、
或いは八手目42玉の方が自然かもしれない)

48銀で美濃/穴熊系ノーマル振り飛車が消え、
それを確認してから64歩~63銀と形を決める。
右辺はこれで一段落とし、次に左美濃に囲う。

矢倉右四間は今回、単なる見せ球に過ぎない。
82飛73桂63銀型のままどこかで85歩を決め、
米長流急戦矢倉(速攻型)に似た仕掛けを狙う。
85歩の前に77銀と来れば右四間にシフトする。


※実際は六~八手目に85歩を決める人が多く、
77銀型に決めて貰う意味ではその方が良さげ。
(77角型を急戦で破ることは諦めた方が良さげ)




76歩 84歩 68銀 34歩 66歩 62銀
56歩 52金右 48銀 64歩 78金 63銀
26歩 32銀 25歩 85歩 77銀 42玉
…(0'')


85歩のタイミングは難しく定説がないものの、
25歩の直後に突けば先手の反応を見て動ける。

飛車先の切り合いはこの場合後手に利が多い。
角を引き難くなる77角には、33角から持久戦。
となると77銀が最も普通の応手と思われるが…
それなら飛車先を受けず42玉(~31玉)で良い。

36歩~37銀には54銀と出て、46銀には44歩、
26銀も45銀から中央を制して後手有利となる。

…横歩を取る34飛は恐れる必要がないらしい。
(24飛に銀冠狙いの33角~24歩もなくはない)
銀交換から23飛成の突破も恐れてはならない。
自玉に寄り筋はなく、従って何の不安もない。




76歩 84歩 68銀 34歩 66歩 62銀
56歩 52金右 48銀 64歩 78金 63銀
26歩 32銀 25歩 85歩 77銀 42玉
58金 31玉 67金右 74歩 69王 73桂
…(0''')


46角型で安定されると流石に攻略困難なので…
(83飛型で桂馬を支えながら攻めるのは大変だ)
74歩を後回しにして79角には54銀と上がり、
46角に63金や右四間飛車で対抗するのが良い。

57銀の瞬間、65歩と突っ掛けるのもポイント。
ただし六筋の位を押さえても銀桂交換しても、
それ単体では後手有利とならないため要注意。
(必要に応じて63金~64金の増援も考慮する)

仕掛けにあたって最も条件が良いのは69王型。
…左桂が浮き駒だし、49角のスペースもある。
先手が居玉の間は仕掛けを焦らない方が良い。
早い79王には14歩で後の13角を用意したい。


※77角型でも対雁木なら同じ構えで構わない。
54銀と44角だけ溜めてすぐ65歩と突く要領で…
66同歩は75歩。手抜きは 66歩 同角 33銀だ。
66歩に同銀右なら、86歩~85歩が筋となる。


~~~~~~~~~~~~




76歩 84歩 68銀 34歩 66歩 62銀
56歩 52金右 48銀 64歩 78金 74歩
58金 85歩 77銀 42玉 26歩 32銀
25歩 31玉 67金右 63銀 24歩 同歩
同飛 23歩 28飛 73桂 69玉 65歩
同歩 75歩…(1)


上図は森内-光瑠の叡王戦で現れた仕掛けで、
恐ろしいことに上図の時点で先手不利らしい。

実際、守備に定評のある某十八世名人ですら…
何もさせて貰えないままフルボッコにされた。

後手はこの局面を想定し駒組みを進めている。
33角や44歩や54銀や62飛などの余分?な手は、
先手が上図から逸脱した時に考慮すれば良い。




同歩 65桂 66銀 86歩 同歩 同飛
87歩 66飛 同角 同角 同金 77歩
同桂 同桂成 同金 88角…(1a)


75同歩には65桂から素直に十字飛車を決め、
駒の利きが足りていないがそこは気にしない!
あとは適当に殴っていれば大体何とかなる。

…先手陣の配置が見た目以上に悪いのである。

最初の66飛を別の駒で取ると、77歩を喰らう。
途中の77歩に金を逃げても状況は改善せず、
49角(~27銀)の筋や七筋の拠点が厳しく残る。


※66銀には64銀と力を溜めておく手も自然。
(銀の応援が米長流より早いとかヤバくない?)




66銀 86歩 同歩 76歩 55歩 74銀
…(1b)


66銀には86歩~76歩~74銀と自然に銀を進め…
65銀や継ぎ歩を用意しあとは流れに身を任す。

76金なら 75歩 同銀 同銀 同金 86飛 87歩 56飛
或いは 75歩 77金引 54歩 同歩 63金で良い。

実戦の順は 57銀上 85歩 同歩 65銀 46銀 86歩
これも垂れ歩の価値が莫大で後手優勢である。

結局、先手の飛車先交換が疑問だったようだ。




76歩 84歩 68銀 34歩 66歩 62銀
56歩 52金右 48銀 64歩 78金 63銀
26歩 32銀 25歩 85歩 77銀 42玉
58金 31玉 36歩 74歩 79角 54銀
24歩 同歩 同角 23歩 46角 63金
37桂 44歩 67金右 73桂 69玉 65歩
…(2)


46角とこちらから睨んだ方が後手も攻め難い。
62飛と廻ると攻め筋が限定されてしまうので、
63金からの45歩で敵角をどかし、角道を通す。
金が離れても、後手陣はまだそれなりに堅い。

以下 79玉 86歩 同歩 66歩 同銀 45歩 68角に、
85歩や65銀を急がず14歩と溜めるのが本手。
代えて 65同歩 45歩 68角 65桂 66銀 75歩も、
75同歩に66角~77歩があって相当うるさい。

途中37桂に代えて67金右なら45銀とぶつけ、
55角に54銀と千日手を見せて角の進退を問う。
…角を換えればバランスを保ち難いのは先手。
後手は44角と打てば仕掛けに困ることもない。


84飛~75歩~54銀~45銀~65歩~54飛と、
52金型のまま軽く捌くスマートな手法もある。
(読売新聞で連載されていたとの情報提供あり)
他には桂馬に紐をつけておく62金型も有力だ。




76歩 84歩 68銀 34歩 66歩 62銀
56歩 52金右 48銀 64歩 78金 63銀
58金 32銀 67金右 42玉 69王 31玉
36歩 74歩 57銀右 54銀…(3)


飛車先を突いていっても響きが薄いとなれば、
その手数を三筋方面に回す方が賢明といえる。
上図から単に46銀なら44歩で問題ないのだが、
先に35歩と突き捨てからの46銀が気になる順。

44歩から持久戦への移行も悪くはないものの…
袖飛車にされてみると後手は角の扱いに困る。
(銀矢倉+三手角まで組めればそこそこ指せる)

この場合は85歩を決めず、右四間で戦いたい。
辿り着く先は『矢倉右四間飛車 #3』の類形だ。


~~~~~~~~~~~~

私が研究記事を書くのは、将棋を忘れるため。
自分の課題局面に仮の回答を作っていないと、
仕事中でもふと思いを馳せてしまう時がある。

気になる戦型は色々あるが、今回はここまで。


p.s.
・この戦型はここやらそこやらあそこやらで、
異常にハイレベルな研究が乱発されており…
私はただ眺めているだけの人となっている。
(もちろん眺めているだけでも充分に面白い)

・五手目77銀相手に左美濃はリスキーだが、
駒組みの手順など色々工夫はできそうだ。
例えば限界まで早く繰り出す早繰り銀や、
65桂を見せて66歩を突かせる作戦もある。

初手から 76歩 84歩 68銀 34歩 77銀 62銀
56歩 74歩 48銀 85歩 78金 64歩
と組み…
64歩が間に合えば26歩・25歩・79角にも、
32銀・42玉・31玉の三手一組で対応可能。

なお85歩に26歩は 86歩 同歩 同飛で潰れ。
79角なら64歩とし、75歩~77角成を狙う。
先手は48銀のところ 78金 85歩 79角 32銀
26歩 42玉 25歩
…と左辺を優先すべき。


※次回『先手矢倉対中飛車53銀型』



開始日時:2015/12/23 棋戦:順位戦
先手:北浜健介 後手:糸谷哲郎


開始日時:2015/10/26 棋戦:叡王戦
先手:森内俊之 後手:阿部光瑠


開始日時:2016/06/01 棋戦:順位戦
先手:中田宏樹 後手:斎藤慎太郎
※本来の表紙『さうざんでいず』


夢はいつも朝の光とともに
記憶から静かに流れ落ちてゆく
微睡だけを後に残し二度と戻らない
だが枕許に小さなノートを用意しておき
決して逃すまいと毎晩待ち続ければ
極稀にこの世のものとなり得る
私の知る限り他に術はない



ラテン語では Septem=7, Octo=8, Novem=9, Decem=10であること等諸々の点を鑑みるに、
皆して今この時を元旦と呼ぶのが不思議でなりませんけど私だけですよね。あさげです。

一般にめでたいとされている日ですから近況報告はしません。(もちろん、私は元気です)
将棋からは概ね足を洗ったと言っても過言ではないです。チェスが少し強くなりました。

P v.s.NP予想が証明できないことを証明しようとして気付けば一日が経っていたなどの、
不毛で美しい時間も今はめっきり減りました。



最近、アントン・チェーホフの短篇が深い共感をもって読めるようになりつつあります。
…今の仕事に就いて一番良かったことの一つですね。

自分自身も、チェーホフの作品に違和感なく登場できる退屈な人間になりつつあります。
…今の生き様を選んだ以上は仕方のないことですね。

家族が近くにいない、子がいないとは一体どういうことか客観的に学ばされる日々です。
御遺体を前にすれば、こんな風になる前にやれることを全部やっておかねばと思えます。

…そんなこんなで一年前よりは人間らしい感覚が多少身に付きました。退歩でしょうね。



今は全てのことが水面下で進行中のままです。
ここで改めて語るべきことは特にありません。
皆様にとっても実り多き一年となりますよう。

2015年の目標「生きる」は易々達成したので、
2016年はもうちょっとだけハードルを上げて…

「生きる」にします。
※本来の表紙『さうざんでいず』


夙ニ将棋ニ
丹念ニシテ
研鑚ヲ積ミ
練達ニ長ケ
タルヲ認メ
茲ニ四段ヲ
允許ス


将棋指しであることが周囲にばれてしまった場合、
何手先まで読む?」「棋力は何段ぐらい?」と気を利かせて訊かれる機会が多いものの…
前者に関しては「場合による」としか言えません。

序盤なら、一手も考えずに16手目までは指せます。
中盤では、三手先まで正しく読めれば絶好調です。
最終盤は、37手先に王様が詰むかどうか悩みます。
(今は五手詰も無理…健康上の理由から控えてます)

ちなみに、プロを目指すような人は読むまでもなく「匂い」で詰みの有無が判るそうです。
あと、人類史上最強候補とも謳われるO山Y晴さんは高らかに「一手!」と答えています。

…一言でまとめるなら「愚問」ということですね。


~~~~~~~~~~~~

後者の問いは、段位自体の曖昧さもあり複雑です。
かつては名人級=八段であとは駒落ちの手合いから全人類の棋力を逆算できていたはずが、
今はアマとプロとで別の体系が使われている模様。

基本的には全国大会で優勝すれば六段、
全国ベスト4かアマ竜王戦県代表で五段、
その他の大きな大会で県代表になれば四段
です。
(もちろん学生大会とかではなく無差別級でのお話)

三段以下は私の知る限り特に基準もありませんが…
社会人で週末を将棋に充てるほどの狂気があれば、
その時点で初段を名乗るに何ら不足はないのです。
(お子さんや学生さんは15級から頑張りましょう☆)

私は最高でも県大会3位止まりなので、無段です。
道場基準だと場所により二段だったり五段だったり出鱈目ながら、今は零~初段程度かと。
ただ師匠が13級を名乗るので正式には14級です(笑)



段位はこのように棋力の指標としては不安定です。(第一、弱くなっても下がりませんし…)
どちらかというと、段位とは将棋に呪われたその人の業(karma)の深さを示す刺青なのです。

この表現、道場や部活やネットで日々鎬を削る将棋指しならしっくりくるかもしれません。
(伝わらないならそれはそれで全く幸せなことです)

強い人は普通「将棋倶楽部24」のレーティングを用いて己が棋力を誇示するものですが、
あれはとても怖いインターネットなので一般人を大分離れてから始めるべきな気もします。



~~~~~~~~~~~~

最後にひとつ、四段になれなかったという余談を。

仕事のストレスが指し手に籠って強くなり日本六十余州のうち二国は手中に収めたものの、
六段が相手だと若干相性が悪かった…というお話。
(ちなみにその六段も別の六段に討ち取られていた)





76歩 94歩 26歩 34歩 25歩 88角成
同銀 22銀 48銀 33銀 46歩 95歩


横歩がわかんなくなってこの方、後手番で指す戦法が本格的に何もない。(※冗談抜きに)
仕方ないので、リスクを負ってでも主張点を作る。

9手目24歩には 同歩 同飛 35角 28飛 57角成 15角 33桂 22飛成 同飛 33角成 42飛 で後手有利
…と自己暗示を掛けて臨むのが肝で、そうすれば敵は気迫的な何かを察知して避けてくれる。

46歩で速攻が消えたのを見た後手は振らずに戦う。
三手遅れのため手順に神経を使うが、相腰掛け銀に組みきれば後手は千日手に持ち込める(?)






ここから手得を活かして66銀~55銀とブツケる仕掛けもあり、無駄に時間を使ってしまった。
強い人ほどこの銀ブツケを指さなくなっていく傾向はあるものの、理由は未だに謎のままだ。

(※ちなみに対局中は角銀を持ったら棋畜羽生流の63角~35歩~18銀で反撃する予定だった)

端歩の突き合いも短期的には損であり、悩ましい。
長考の末に結局受けたが…右玉相手に序盤から持ち時間を使うのは限りなく自殺行為に近い。






…… 98香 85歩 99飛 86歩 同歩
同飛 87歩 82飛 89飛


本譜は後手番としてこれ以上ない展開と思われる。

少なくとも85歩と打てば千日手の可能性濃厚(※同桂捨てには6筋から反撃可能)であった。
…だが現実には千日手は先後入れ換えての指し直し。時間と棋力で劣る私は戦い抜けない。

74歩として86歩には3筋7筋9筋を絡めた攻めを見るのも、いかにも本筋めいた趣がある。
…ただ実際にはそれで本当に手になるか自信がなく、待機された場合の手も判らずで断念。

そうして結局は愛する角行を筋違いに打ち、香交換からの安易な打開に走る羽目になる。
それでも一瞬は良くなった(?)ものの一手30秒で薄い攻めを支えきる地力などもとよりない。



将棋指しは斯くの如く…四季折々の不毛な戦いに向い何度でも身を投じては、負けていく。

ある者は名誉を、ある者は刹那の快楽を、またある者は一枚の免状と新たな刺青を求めて。