thackeryのブログ -207ページ目

宇宙(59) 食(6)

薬膳で使われる食材と生薬について、 述べることにする。 


●中医学の理論を応用した薬膳
中国では、 食材や生薬の性質や効能について古くから研究され、 書物にまとめられてきた。 生薬について書かれた「神農本草経」や「本草綱目」という本の書名に「本草」という言葉が使われているように、 生薬についての学問は当時、 「本草学」と呼ばれていた。 現在では、 生薬の範囲は植物、 動物、 鉱物等にまで及ぶが、 昔の生薬はおもに植物から作るものが中心だったので、 この名前が付いたと言われている。 「神農本草経」が書かれたとされる後漢時代(25~220年)は、 穀類、 豆、 肉類、 魚、 野菜や果物等、 食材はすべて薬と考えられていた。 また、 明の時代(1368~1644)に書かれた「本草綱目」でも、 一般に食べられている食材の多くが薬として記載されている。


→ 「本草綱目」で紹介されている薬
[穀物の部]: 小麦、 大麦、 ソバ、 イネ、 キビ、 トウモロコシ、 クリ、 大豆、 小豆、 緑豆、 米等

[野菜の部]: ニラ、 ネギ、 ダイコン、 イモ、 サツマイモ、 タケノコ、 ナス、 トウガン、 黒キクラゲ等

[果物の部]: スモモ、 アンズ、 モモ、 ナツメ、 ナシ、 柿、 ダイダイ、 ユズ、 ビワ、 サクランボ、 クルミ等


→ 歴代の代表的な薬学(本草)書は、 食材研究の専門書でもある。 中国で発達した中医学に於ける薬学を中薬学と言い、 中薬学の理論を応用して、 食材の持つ薬としての効能を病気の予防・治療に生かそうとする考え(薬膳)を「薬食同源」と言う。 食材と生薬を使って薬膳を作るとき、 その組み合せも重要である。 この組み合せのことを「配伍」と言う。 食材と生薬を組み合わせて薬膳メニューを作ることは、 弁証施膳の最終的なステップである。 薬膳には基本となるメニューが沢山あるが、 自分の体調等に合わせて薬膳を作るときは、 薬膳料理の決まったレシピをそのまま使う必要はない。 食材や生薬の性質や効能、 配伍を学び、 自分の好みに合った調理法や味付けで料理すればよい。 普段から慣れ親しんでいる食材を使って楽しみながら実践するほうが、 簡単に普段の食事に薬膳を取り入れられ、 長続きする。


●薬膳で使われる食材と生薬
薬膳ではおもに食材を使うが、 必要に応じて生薬も使う。 生薬には、 はっきした効能があり、 また一般に慣れ親しんでいる食材にも様々な効能がある。


●生薬とは
生薬とは、 天然の植物・鉱物・動物等を、 簡単に加工して薬として用いるもの。 一つひとつの生薬には、 様々な作用を持つ多くの成分が含まれている。 生薬と食材の大きな違いは、 薬としての効能の大きさと言える。


●薬膳に於ける食材
中国で常用されている600種類の薬のうち、 半分は一般に食材として使われているものと言われている。 例えば、 ヤマイモ、 ナガイモ、 ヤマトイモ等粘り気のあるイモは、 日本でも簡単に手に入る食材で、 乾燥させたものは「山薬」という名前で生薬として使われている。 また、 薬膳でよく使われている貝母(ばいも: アサガユリの球根で、 球根が2つに分かれて貝のようになっていることから、 貝母と呼ばれる。)や杏仁(きょうにん: バラ科の植物であるアンズの種の核にある白い部分のこと。)は咳止めの薬として使用されている。


--- つづく

宇宙(58) 食(5)

冬と薬膳について、 述べることにする。 薬膳とは、 中国の伝統医学(=中医学)の理論に基づき、 食材や生薬(薬として用いるために、 そのまま或いは乾燥させる、 煎じる等、 簡単な加工をした天然の植物・鉱物・動物等のこと)を組み合わせて作る料理、 または食事のことである。 


●中医学に於ける冬とは
冬は一年で最も寒く、 一年間の気候の変化によって疲れが出て来るときである。 気温が下がり自然界には「陰」が増加する。 五行では「水」に属し、 臓腑では「腎」と関係する。 冬は寒邪に冒されやすくなる。 人も自然界の寒さの影響を受け、 身体が縮こまり、 毛細血管が収縮し、 血の巡りが悪くなる。 また、 寒いため活動が減り運動量が少なくなり、 実際、 激しい運動にも適していない。 この季節は静かに身体を休めるのに適している季節である。


●冬に起こりやすい症状
寒邪は風邪(ふうじゃ)と結びついて風寒の邪気による感冒(風寒感冒)を引き起こしやすく、 悪寒、 毛穴が開かず汗をかかない等の症状が現れる。 また、 血の巡りが悪くなり、 冷えや痛み(頭痛、 月経痛等)も起こりやすくなる。


●冬にとるべき食材
適度に「腎」を補い、 虚弱体質の人は特に冬場は身体を温めるとよい。 肉の煮込みや煮魚、 鍋料理に、 トウガラシ、 カショウやシナモン等の辛味の食材を調味料として使うとよい。 風寒の邪気による感冒(風寒感冒)の場合も、 辛味の食材で邪気を取り除く(辛温解表)とよい。 但し、 陰虚で虚熱がある人(陰虚火旺)、 実熱タイプの人は温め過ぎてはならない。 


→ 腎の陰液(血、 津液等)を増やす(滋陰)食材
白キクラゲ、 黒ゴマ、 黒豆、 ナツメ、 クコの実、 アワビ、 鴨肉、 豚肉、 スッポン、 牡蠣、 ナマコ等


→ 腎陽を補い身体を温める(補陽)食材
エビ(干しエビ、 桜エビ)、 クルミ、 羊肉、 ニラ、 八角、 酒等
※ショウガやネギは風邪の予防にもよい。


→ 温熱性の食材
モチ米、 鶏肉、 豚レバー、 ナマコ、 タチウオ、 コリアンダー、 ネギ、 ニンニク、 ショウガ、 ヨモギの葉、 タマネギ、 カボチャ、 アンズ、 クリ、 黒砂糖、 酒、 黒酢等


●養生のポイント
冷たいものはなるべく食べないようにする。 冷蔵庫から出した果物や生野菜をそのまま食べないようにする。 野菜は温野菜にして火を通したものを食べるようにする。 温熱性で、 腎を温める(補陽)ものや、 腎陰を養う(滋陰)働きがあるものを食べるようにする。 但し、 消化のよくないものも含まれるので、 量は控えめにする。 外邪による発熱や、 陰虚による虚熱のある人には強く温める食材は合わないので、 症状が落ち着くまでは強く補陽するものをなるべく摂取しないようにする。


― - - つづく

宇宙(57) 新年のご挨拶

皆様、 新年明けましておめでとうございます。 本年もよろしくお願い致します。


世界、 日本を取り巻く環境は相当厳しいものがあり、 今正に人間というもの、 人生というもの、 国家というもの全般に亘り考えていくチャンスとも言えるのではないでしょうか。 このような事態に陥っている現状の責任を他者に求めても何んの解決にもならないでしょう。 このようなときこそ先達の智恵に耳を傾け、 自ら考えることにより何か光りが見えてくるような気がします。 1月2日(土曜)に朝早く起き、 テレビ教育番組のチャンネルを捻ると、こころの時代という番組があり、 あるお坊さんが金光寿郎氏(1954年に京都大学を卒業しNHKに入局し、 社会番組、教養番組を担当)との対談で「人生蝋燭論」という考え方を語られていました。 新年幕開けの話題としては心休まるものでしたのでお伝えしたく思います。


「人生蝋燭論」とは、 人間の一生を『蝋燭のともしび』に喩えたものである。 誕生とともに蝋燭に火が入るが如く、 ゆらゆらと生命の光りがともり始める。 このときの母親の存在は、 赤ん坊にとって絶対である。 母乳が最高の栄養源となる。 今では人工のミルクがあるが、 母乳にはかなわない。 昔隣に母乳の沢山出るひとがいて、 私の母親の母乳の出が悪いとき、 呑んだ記憶がある。 ここで「三つ子の魂百までも」という考え方が生まれる。 0歳から3歳、 極めてデリケートで人生の輝きの質を形作るときとも言えるであろう。 このとき私の場合、 祖父母の愛情を特に受けた。 また、 父母は勿論、 周りの人々から溢れるような愛情を受けた。 そのためすべからく他者を愛することのできる資質が形成された。 4歳から小学校入学前、 このときは「親によるしつけ」がとても重要である。 このとき「わがまま」な性格が根付くと、 その性格をベースに人格が形成され始める。 最近巷に「裕福な家庭から犯罪者が生まれるケースが散見される。」が、 『この時期に於ける躾』が問題と思われる。 更に、 広く目を向けると、 そのときの社会環境が重要なファクターとなる。 何故ならば、 その子供を育てる父母、 祖父母の資質はそのときの社会状況が大きく影響を与えているからである。 更に言えば、 国家の資質につながり、 そのときの世界の資質と関わってくる。 小学校時代、 前述のような流れの中で捉えると、 身震いする程重要な「人格の基礎が形作られる時期」である。 『蝋燭のともしび』に喩えると、 誕生時の「ゆらゆら」ではなく、 蝋燭の芯もしっかりし、 自らの力で輝き始めている。 周りは「小学生」という捉え方をしているが、 本人は人間として自立し始めている。 この段階では、 「学校教育の質」が重要である。 基礎学力、 更に社会を見る目が育ち始める。 頭脳だけではなく、 運動により心身の鍛錬をする時期でもある。 今の時代は、 中学受験のため「塾」の存在がある。 ここで注目すべきは、 中学受験・高校受験・大学受験という受験システムの存在である。 これは紛れもなく、 大人が、 社会が子供たちに課しているシステムである。 大きく人生を見た場合、 つまり、 128歳頃生命の光りが消えると想定した場合、 一番望ましいシステムであるのかどうか、 熟慮する必要があるように思える。 その後、 「中学教育」・「高校教育」・「大学教育」等を経て、 俗に言う社会人となる。 そして、 「青年期」・「壮年期」・「中年期」・「老年期」というステップを踏んでいく。 その間、 『蝋燭のともしび』に似た生命の光は、 消えかかるときもあれば、 燃え盛るときもある。 それは生まれ持つDNA(遺伝子)に関係したり、 周りの環境に左右されることもある。 只、 その蝋燭の芯、 つまり「生命の光」の芯は自らの努力により作ることは間違いない。 出来るだけ長く輝き続けることに人生の意味を感じる。


もうひとつの考え方。 「自然法爾(じねんほうに)」とは、 「物事は自然になるようになっていくし、 それが一番いいことである。」という意味。 「日本には四季があるが、 春になれば自然に温かくなり、 自然に花が咲く。 それは自然にそうなるのであって、 だれかが努力してそうなっているわけではない。」
「それは、 自然にそうなるべくして、 そうなるのである。 そして、 その自然の営み、 物事の移り変わりこそ、 仏の働きであり、 仏の姿そのものである。」
「大体、 この自分という存在を考えてみても、 生まれようと思って生まれでたわけでもなく、 育とうと思って育ったわけではないではないか。 そう考えると、 こうして生きておるのも、 すべては仏さまのお慈悲、 ご加護のおかげである。」
「だから『ああか、 こうか』と考えるのをやめて、 その日、一日一日をただ精一杯生きよ。 喜びと感謝をもって事を為せ。 あとはすべて仏さまにお任せせよ。 もともとお前自身はお前のものではなく、 仏さまのものである。 それを勘違いして我がものとして執着していただけのこと。 仏さまのものは仏さまにお返しして、 心配することなく毎日を楽しく生きよ。(親鸞聖人御消息「自然法爾の章」より)」


→ 私は仏教徒という訳ではないが、 新年のテレビ番組を視聴していて、 心に響くものがあったので、 ご紹介することとした。 その他、 今日の多変数解析関数論の本質的な部分をほとんど独力で作り上げた数学者・岡潔氏(1951年学士院賞、 1960年文化勲章受賞)やノーベル賞作家・大江健三郎氏の最新の大作「水死」に関する話題もタイミングをみて、 触れたく思う。


― - - つづく