宇宙(74) 原子の正体(8)
原子核の中はどうなっているのか。
ラザフォードによって発見されて以来、 原子核についてわかっていたのは、 プラスの電気のかたまりということだけだった。 しかし1917年、 原子にアルファ粒子をぶつける研究をつづけていたラザフォードは再び重大な発見をした。 窒素原子にアルファ粒子をぶつけると、 その原子核から未知の粒子が飛び出したのだ。 この粒子は電子1個分のプラスの電気を帯びていた。 このことからラザフォードは、 この粒子を「陽子」と名づけ、 原子核は陽子の集まりと考えた。 原子が中性なのは、 陽子の数と電子の数が一致しているからである。 このときの陽子の数を「原子番号」と呼ぶ。
但しこれでは事実と矛盾する点もあった。 例えば、 ヘリウムは重さが水素の約4倍で、 原子核の電荷の大きさは水素の2倍である。 原子核を構成する陽子の数が4個では電荷が多過ぎるし、 2個では原子の重さを説明できない。
この矛盾を解いたのがイギリスの原子物理学者ジェームズ・チャドウィック(1891~1974)である。 チャドウィックが目をつけたのは、 1930年頃に見つかっていた正体不明の「電気的に中性の粒子」である。 この粒子は、 ベリリウムの薄膜とパラフィン(ろうそくの材料)にアルファ粒子をぶつける実験で見つかった。 実験の結果からは、 アルファ粒子がベリリウムの薄膜から「電気的に中性の粒子」をたたき出していると推測された。 チャドウィックは粒子の速度等を計算し、 この粒子が陽子とほぼ同じ質量であることを突き止め、 これを「中性子」と名づけた(1932年発表)。 それは、 電子、 陽子に次ぐ、 原子を構成する3番目のメンバーだった。 チャドウィックによって、 原子核は陽子と中性子でできていることがわかった。 この二つの粒子はまとめて「核子」と呼ばれる。 水素の原子核は陽子一つ、 ヘリウムの原子核は陽子二つと中性子二つでできている。 従い、 ヘリウムの重さは水素の約4倍なのである。
●アルファ粒子が飛び出る。
ポロニウムという元素からは、 プラスの電気を帯びた、 強い放射線であるアルファ粒子が飛び出る。 その先に電気を帯びたものを感知するセンサーを置くと、 センサーが反応する。
●アルファ線はベリリウムで止まる。
センサーの手前に、 ベリリウムという金属の薄膜を置くと、 センサーは反応しなくなる。 アルファ粒子は、 ベリリウム薄膜で進行を妨げられたと考えられる。
●パラフィンから何かが出た。
パラフィン薄膜とセンサーの間に、 パラフィン(炭素と水素でできている)を置くと、 再びセンサーが反応する。 パラフィンから電気を帯びた何かが出ていると考えられる。
●原子核から「中性の粒子」が出ている。
アルファ粒子はベリリウム薄膜に当ると、 ベリリウム原子核と融合し、 炭素原子核になる。 このとき、 炭素原子核から「電気的に中性の粒子」が飛び出る。 この粒子は、 パラフィンにぶつかると、 炭素原子と水素原子の結合を切り、 その結果、 水素の原子核(陽子)が飛び出てセンサーに当る。 粒子は実際には見えないが、 実験結果を総合してチャドウィックはこのように考えた。 そして、 この電気的に中性な粒子「中性子」が、
陽子とともに原子核を構成していると考えた。
― - - つづく
宇宙(73) 原子の正体(7)
すべての化学反応は、 電子雲が担う。
元素はそれぞれ異なる性質を持っている。 水素は酸素と結合して爆発し、 水を生じる性質がある。 このような性質を化学的な性質という。 周期表で隣り合っている水素(H)とヘリウム(He)では、 化学的な性質が大きく異なっている。 ヘリウムは水素のように爆発はせず、 燃えない。 安全なので、 風船や気球を浮かせるガスとして使われている。 ではこの化学的な性質は、 何によって決まるのであろうか。 それは、 電子の数である。 特に、 最も外側の電子殻にある電子の数(最外殻の電子数)が影響する。
●最外殻の電子数とは何か。
「最外殻の電子」について知るためには、 まず、 「希ガス」を説明する必要がある。 ヘリウムは酸素と反応しにくい。 また、 他の元素とも反応しにくい。 このような性質を持つ元素を希ガスと呼び、 周期表では右端に並んでいる。 他の元素と反応しにくい理由は、 これらの元素の原子が「閉殻構造」をしているからである。 閉殻構造とは、 電子の数が2、 10、 18、 36、 54である状態をいう。 このとき原子は非常に安定的な状態になり、 他の原子とは反応しない。 最外殻の電子とは、 閉殻構造より余分にある電子のことである。 周期表で縦の列に並ぶ元素は、 この最外殻の電子数が等しい。
●電子の雲形成の流れ(例: 水素原子)
1)二つの水素原子 → 2)電子の雲が引き合う。 → 3)電子の雲が一体になる。 → 4)原子核と原子核の間に電子が多く集まるようになる。 → 5)もとの水素原子の電子雲とは別の大きな電子雲となる。
●燃焼
物が燃えるということは、 物質が酸素と結合し、 光や熱を発することである。 このとき、 物質の原子と酸素原子の電子雲が一体化する。 燃焼の速度が速く、 一気に燃えるのがダイナマイト等でみられる爆発である。 また、 光や熱は出ないが、 原子が酸素原子と結合することを「酸化」という。 金属のサビはゆっくりと進む酸化の例である。
●溶解
水に食塩を溶かすことも広い意味では化学反応の一つである。 食塩を構成するナトリウムイオンと塩化物イオンは、 食塩の結晶になっているときは、 電子をやリとりして結合している。 ところが水の中に結晶を入れると、 ナトリウムイオンと塩化物イオンがバラバラに分れ、 それぞれが水分子と結合するようになる。
●酸とアルカリ
酸性のものとアルカリ性のものを混ぜると、 「塩」ができる。 これも化学反応の一つである。 理科の実験でよく行われるのは、 アルカリ性の水酸化ナトリウムと酸性の塩酸を混ぜて、 水と食塩ができる反応である。 絶対にやってはいけないが、 身近な例では、 塩素系のアルカリ性洗剤に酸性の洗剤を混ぜる反応がある。 「混ぜるな危険」と注意書きがされているのは、 反応によってできた塩に酸性の液体が更に加わることで有毒な塩素ガスが発生してしまうからである。
― - - つづく
宇宙(72) 原子の正体(6)
電子の“雲”は重なり合う。 複数の電子が重なり合うと、 球のように見える。
電子の「存在し得る領域」をあらわしたのが電子雲である。 この存在し得る領域は、 電子ごとに異なっている。 たとえば酸素原子は8個の電子を持っていて、 それぞれ存在し得る領域が異なっている。 各電子の雲をイラストで描くと、 それぞれ違った形の雲が描ける。 1924年にスイスの理論物理学者ヴォルフガング・パウリ(1900~1958)は、 ある一つの「存在し得る領域」を持つことができる電子は、 最大2個までであると主張した。(※厳密には、 「電子の“自転”(スピン)方向が上向きのものと下向きのものは、 ペアで存在する」と主張した。 これを「パウリの排他律」という。) つまり、 同じ形の電子雲は2個まで存在できる。 酸素原子の場合ならば、 8個ある電子のうち、 同じ「存在し得る領域」を持つもの、 つまり同じ形の電子雲の電子が2個ずつ、 4組あることになる。
天然に存在する最も重い原子であるウランになると、 電子雲の種類はの数は48にのぼる。 但し、 電子雲は同じ場所に重なっていくので、 全体を眺めれば、 大きな一つの球状の雲に見えることになる。
●雲の形はどのように求めるのか。
複雑な雲の形はすべて、 シュレーディンガーが打ち出した「波動方程式」という波をあらわすための数式から導かれる。 方程式の解をグラフにし、 それを立体の図形に変換すると、 雲の形となる。
●電子雲の形は次の三つの要素で決まる。
1)一つ目は、 原子核からの距離。
2)二つ目は、 電子雲の基本型。 同じ基本型の雲でも、 原子核から遠くなるにつれてパーツが増え、 複雑な形になっていく。
3)三つ目は、 電子雲の方向。 例えば、 上下・左右・手前奥の3方向。
→ 以上の3要素で、 電子雲の形が決まる。 一つの電子殻の中には、 同じ形の電子雲が2個まで存在できると決まっている。 例えば、 K殻には2個の電子が入れるが、 それらは同じ形の電子雲となる。
― - - つづく