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宇宙(97) 皮膚(1)

人体最大の「臓器」は何か


人体最大の臓器は何だろうか。 肝臓だろうか。 脳だろうか。 日本人の平均では、 肝臓の重さは男子1431g、 女子1269gで、 脳は男子が1424g、 女子1256g。 心臓は約300g、 腎臓は左右あわせてせいぜい300g。 となれば、 やはり肝臓こそが最大の臓器ということなるのだろうか。 実は、 真実に「いちばん大きな臓器」は、 皮膚である。 皮膚は表皮から真皮の部分だけでも体重の約8%、 皮下脂肪織を含めると体重の約16%(欧米では25%というデータあり)も含め、 体重が70kgの人の場合は11kgが皮膚という計算になる。 もし、 全身をそっくりくるんでいる皮膚をひきはがして広げると、 大人でおよそ1.7~2.0㎡の面積となり、 畳1畳ともう少しほどの広さである。


大きな臓器といえば、 消化器を思い浮かべるかも知れない。 消化器も確かに大きな臓器ではある。 しかし消化器は、 食道、 胃、 十二指腸、 空腸、 回腸、 大腸、 直腸というようにそれぞれの部位が異なった機能を担っている。 また、 骨も筋肉も一つひとつはバラバラになって全身に分布している。 ところが、 皮膚は全身全く境界も区別もなく、 一体として広がっている。 因みに、 脂肪織は腹腔内などにも分布しているが、 皮膚の下に横たわる脂肪組織は、 真皮と一体化し、 その下の筋肉とは筋膜という膜を隔てて明瞭に区別されている。 このように、 明瞭に分離できない真皮と皮下脂肪織は別の臓器と見做し難く、 「皮膚」という一つの臓器の一部として扱うことが一般的となっている。 同じ機能を担ったものが一体となって機能している器官が「臓器」である。 とすれば、 人体最大の臓器はやはり「皮膚」である


― - - つづく

宇宙(96) 遺伝子あれこれ(13)

指紋はどのようにして出来るのか


「指紋」、 刑事事件に於いて容疑者逮捕の大きな決め手となる。 指紋はどのようにして出来るのであろうか。 指紋は個人個人で全て異なっており、 遺伝子のプログラムに基づいて形成されているので、 本人の意思で変えることはできない。 角質層には血管も神経も通っていないため、 うまくすれば指紋の突起部分を削り取り、指先を平らにして指紋を消すことができそうである。 ところが、 指紋は表皮の下の真皮によって形成されているものなので、 表皮を削って平らにしても、 時間が経つともとどおりの指紋が現れて来る。 


表皮の下(内側)には真皮があり、 真皮の表面には「乳頭」と呼ばれる小さな突起物が無数に出ている。 乳頭は部分的に連続してつながっており、 全体的には山の部分(皮野)と谷の部分(皮溝)を形成したものが指紋となる。 その形は基本的に生涯不変といわれている。 どうして指紋は擦り取っても、 少し位ケガをしても、 もとの特徴の通り再生されるのであろうか。 この疑問に対する回答は、 実のところ正確にはまだわかっていない。 しかし、 多くの臓器は「再生」能力を持っていることは事実で、 皮膚に限らず、 損傷された種々の臓器には、 遺伝子という細胞内にある設計図により、 分化を受けて特定の形態を作り自己修復する能力が備わっている


真皮の乳頭の内側には「触覚小体」という神経があり、 指紋の山の部分は乳頭が表皮に突き出ている部分である。 ここには神経が近くまできていて、 感覚が鋭くなっている。 触感が鋭敏である。 実は指紋の本来の役割は、 指先が敏感になることであると考えられている。 指紋があるから感触がはっきりするのであり、 指の中でも指紋のない部分でものに触れても、 指紋のある部分で触ったときほどはっきりした感触は得られない。 また、 指紋はものをつかみやすくするためと考える人もいる。 自動車のタイヤの溝のように、 滑り止めの役割を担っているということである。 それはともかく、 指紋には「万人不同」と「永続不変」という2つの大きな特徴がある。 世界中を探しても全く同じ指紋の人は存在せず、 また持って生まれた指紋は一生涯変わらない。 これは世界各国で、 長年の犯罪捜査等の経験を通して確認されてきたことで、 今のところ否定的な事例が出ていないということである。


2つの指紋が同じかどうかを判定する「指紋鑑定」には、 ほとんどの場合指紋の突起部分を比較して行う方法が取られている。 テレビドラマでは、 指紋のスライドを2枚重ねて見るシーンが出てくるが、 実際の鑑定でそのような方法が取られることはまずない。 近年、 コンピューターシステムの本人識別では、 パターン認識という方法が応用され、 予め登録されていた指紋と一致するかどうかコンピューターの認識プログラムで判定する方法(指紋認証)も導入されてきている。 


指紋は、 このように万人不同で尚且つ生涯変わらないものであるが故、 犯罪捜査や指紋認証に使われている。 一卵性双生児でも指紋は一致しないので、 こうした模様は、 全てが遺伝子で規定されている訳ではなく、 人生のごく初期のある過程で、 ある程度の自由度をもって芸術的な模様を描きながら、 一度構成されたら生涯不変、 という神秘的な生命現象を表現しているのかも知れない


― - - つづく



thackeryのブログ-指紋の構造

宇宙(95) 遺伝子あれこれ(12)

○「隔世遺伝」とは何か。
 - 祖父母が持っていた性質が、 1世代飛び越えて孫に伝わること。 劣性遺伝子のはたらきで説明できる。


Aさんは「一重まぶた」。 Aさんの祖父も同じく「一重まぶた」だが、 Aさんの両親はどちらも「二重まぶた」。 この例のように、 祖父や祖母の持つ性質が、 次の世代には現れず、 孫の世代に現れることを「隔世遺伝」と呼ぶ。 隔世遺伝は、 一見すると不思議な現象に見えるかも知れない。 しかし、 メンデルの法則(優性の法則)を思い出せば、 実は不思議でもなんでもないことがわかる。 二重まぶたは優性形質」で、 一重まぶたは「劣性形質」である。 二重まぶたの遺伝子(優性遺伝子)が親から子に伝わると、 その子も親と同じ二重まぶたになり、 親子で形質が一致する。 ところが、 一重まぶたの遺伝子(劣性遺伝子)が親から子に伝わっても、 二重まぶたの遺伝子(優性遺伝子)があればその影に隠れてしまうので、 ある世代の形質が前後の世代と一致しないことがある。 このようなときに「隔世遺伝」と呼ばれるが、 遺伝子の仕組みとしては何も特別なことが起きている訳ではない。


癌は遺伝するか
 - 癌は原則的に遺伝しないが、 大腸癌や乳癌等の一部は遺伝する


癌は、 遺伝子の異常(突然変異)によって起きる病気。 例えば皮膚の細胞が紫外線を受けると、 DNAに傷ができ、 遺伝情報が変化することがある(突然変異)。 この傷によって、 細胞の状態を正常に保つ遺伝子の働きが失われると、 細胞は「癌細胞」に変化する。 こうして生じるのが皮膚癌である。 しかし、 皮膚細胞のDNAが傷ついたとしても、 その人が作る精子や卵子のDNAに傷がつく訳ではない。 そのため、 皮膚癌は子に受け継がれず、 原則的に遺伝はしない。 皮膚癌だけでなく、 喫煙による肺癌等、 多くの癌は生活の中で受けた刺激や偶発的な突然変異が原因と考えられており、 原則的に「遺伝しない癌」だと言える。


一方で、 同じ家系に多発する癌、 つまり「遺伝する癌」もある。 例えば、 大腸癌が多発する家系を調べると、 5番染色体にあるAPC遺伝子に生まれつきの異変が見つかった。 乳癌が多発する家系では、 17番染色体にあるBRCA1遺伝子に異変が見つかった。 異常型のBRCA1遺伝子を持つアメリカ人女性が乳癌になる確率は、 実に85%にも及ぶという。 癌が身内に多いので心配という人は、 遺伝子検査によって自分の遺伝的な発癌のリスクを知ることができる。 遺伝的なリスクが高いとわかれば、 こまめに検診を受けることで、 たとえ運悪く発癌したとしても早期に発見でき、 治療の可能性を高めることができる。


個性や能力が遺伝で決まるなら、 努力や経験は無意味か
 - 遺伝が左右するのは「素質」だけ。 それが開花するかどうかは、 経験や環境次第。


「ヒトの個性や能力の一部は、 親からの遺伝で決まる。」と聞くと、 「どうせ遺伝なのだから、 頑張っても変えられない。」と思ってしまう人がいるかも知れない。 親から受け継いだ遺伝子の働きは「一生変化しないもの」であり、 経験や環境の影響を受けない、 というイメージを持つ人は少なくないであろう。 確かに、 血液型や瞳の色等、 親から受け継ぐ遺伝子の組み合わせで決まる特徴には、 原則的に一生変化せず、 経験や環境の影響を受けないものがいくつも目につく。 しかし一方で、 遺伝子の影響の大きさが環境次第で変化する例が、 双子の研究からわかり始めている。 


例えば慶応義塾大学の研究グループが「女性の飲酒傾向」について調べたところ、 二卵性双生児よりも一卵性双生児でよく一致していた。 つまり女性の飲酒傾向には遺伝が影響しており、 その程度は54%ほどであると見積もられている。 ところが、 未婚者と既婚者で比較すると、 遺伝の影響は未婚者で約60%、 既婚者で約40%となる。 つまり、 結婚する前の女性ほど、 “生まれつきの素質”に従って飲酒したり、 しなかったりする人が多い。 


野菜の好き嫌い」について。 幼稚園に通う双子(女子)で調べると、 一卵性の類似度は0.76、 二卵性では0.31となり、 遺伝の影響が比較的大きい(約74%)ことがわかった。 ところが、 同じ調査を高校生の双子(女子)で調べると、  一卵性の類似度は0.47、 二卵性では0.22で、 遺伝の影響は約47%に止まった。 これらのデータが示しているのは、 「遺伝の影響は一生固定されたものではなく、 時間と共に変化したり、 経験や環境によって変化することがある。」という事実である。 顔つき、 運動能力、 性格、 知能等、 数多くの遺伝子が複雑に関係するような特徴ほど、 その傾向は強いようである。 遺伝的な素質が開花するかどうかは、 その素質に合った環境にどれだけ恵まれるかによって左右されると言える


― - - つづく