thackeryのブログ -193ページ目

宇宙(100) 遺伝子あれこれ(16)

細胞は寿命が来ると自殺するのか
 - 細胞は遺伝子によって、 死ぬべき寿命が予め決められており、 そのときになれば細胞は自殺してしまう。


細胞の分裂回数を決めるテロメア
細胞は永遠に生きている訳ではなく、 いつかは死ぬ運命にある。 米国の老化研究者、 レオナード・ヘイフリック博士は生物や臓器などによって細胞の分裂回数が決まっており、 その後は細胞が老化して死んでしまうことを発見した。 ヘイフリック博士の説を裏付けるように、 分裂回数を決めているテロメアという塩基配列がDNAの端にあることが見つかり、 その塩基配列がなくなると分裂を止めることもわかった。 細胞が老化して死ぬときには、 細胞が膨張して、 細胞が破裂し、 跡形もなく消える。 また、 細胞が傷ついたり、 エネルギーがなくなって弱ったときにも同様に、 細胞質が膨張して死んでしまう。 このような死はネクローシス(壊死)と呼ばれていた。 しかし、 細胞の研究が進むにつれ、 ネクローシスでは説明できない細胞の死があることがわかってきた。


アポトーシスによって生物の形が決まる
例えば、 オタマジャクシがカエルになるときに、 尻尾がなくなっていくが、 これは細胞が膨張、 破裂して死ぬ訳ではない。 また、 ヒトの胎児は初期のうちには、 手の指の間に水かきがあるのに、 大きくなるにつれてなくなり、 5本の指になる。 これも、 細胞のネクローシスでは説明がつかない現象だった。 これらの現象をDNAレベルで見ると、 どの細胞でもある時期になると、 細胞が小さくなるにつれ、 DNAがブチブチと切れて、 細胞も細かい断片に分解されてしまう。 そして、 マクロファージという白血球の一種である「掃除屋」がきれいに食べてしまう。 あたかも、 細胞が自殺をするように、 死んで消えるので、 「細胞の自殺」とも言われ、 ネクローシスに対してアポトーシスと呼ばれるようになった。 生物の発生段階で遺伝子に操られるように細胞が死んで、 生物の形ができるときに起こる現象なので、 当初は遺伝子のプログラムによる細胞死と同一視されていた。


医薬品開発や治療への応用も
しかし、 研究が進み、 エイズなどウイルスに感染した細胞や、 癌組織内の細胞が消えたり、 リンパ球の攻撃による細胞死などが発見され、 医学分野、 特に免疫の領域でもアポトーシスが起こっていることがわかった。 そのために、 アポトーシスは遺伝子のプログラムによる細胞死だけを指す言葉ではなくなった。 アポトーシスを起こす遺伝子が次々と発見され、 どうして細胞が細かく切れていくのかといったメカニズムの解明は進んできている。 医療薬品の分野でも、 アポトーシスを誘導する新薬の開発をするところもある。 また、 アポトーシスの遺伝子を利用して、 癌の細胞を破壊できれば、 治療などにも役立つのではないかと期待されている。


アポトーシスとネクローシスの違い
・アポトーシス(オタマジャクシのしっぽが消える
 ①遺伝子が細胞に自殺を命令する。 → ②酵素の働きで細胞が小さくなる。 → ③細胞が細かくちぎれ、 マクロファージに食べられてしまう。
・ネクローシス(人間が火傷をして、 組織が崩れる
細胞が老化或いは外から刺激を受ける。 → ②膨張する。 → ③破裂し内容物が流出し、 あとかたもなく消える。


― - - つづく

宇宙(99) 遺伝子あれこれ(15)

遺伝子は、 子孫を残すために自分のコピーを作る
 - 遺伝子の働きは大きく分けて二つ。 一つは、 自分自身をコピーして子孫を増やす自己複製」の働き。 もう一つは、 皮膚や筋肉などの体細胞複製」の働き。 その二つの仕組みには違いがある。


細胞分裂とDNAの自己複製
早回しビデオで、 細胞が次々と分裂していくシーンを見てみると、 大腸菌や受精卵が2倍、 4倍、 8倍と分裂していく様子が観察でき、 いずれの場合も分裂してできた細胞はもとの細胞とそっくり同じである。 外見だけでなく、 細胞の中に入っている染色体も等しい。 つまり細胞がコピーされたことを意味する。 人間の体が成長したり、 新陳代謝を繰り返すために、 皮膚や爪、 骨髄、 筋肉などの細胞(体細胞)が分裂して複製されるときには、 遺伝情報の担い手であるDNAが自己複製をしている。 逆に言えば、 DNAが複製することによって、 細胞がコピーされているといってもいい。


DNAの二本鎖が分かれてコピー
DNAの複製は「複製開始点(複製起点)」と呼ばれるDNAの特定の場所から始まる。 DNAの二本鎖は開始点から2つに裂け始め、 2本の一本鎖に分かれる。 次に、 それぞれの一本鎖を鋳型とし、 酵素の働きによって鋳型にAがあったらT、 GがあったらCというように相補的なDNAが合成される。 DNAの二重鎖をポジ(+)とネガ(-)に例えれば、 まず鎖が(+)と(-)に分かれ、 次に(+)鎖を鋳型にして(-)鎖が、 (-)鎖を鋳型にして+鎖が合成されるようなものである。 その結果、 元のDNAと全く同じDNAが2つできる。 DNAの鎖には構造的な方向性があって、 螺旋をなす二本鎖は互いに逆方向を向いている。 DNAが自己複製するときに働く酵素は、 一定の方向にしかDNAを合成できない。 従って、 2本に分かれたDNA鎖の内片方の鎖とペアを成すDNAは連続して合成できる。 しかし、 もう片方の鎖とペアになるDNAを作るときには短いDNA断片を少しずつ作って、 これをつなげる必要がある。 こうして複製されたDNAは、 分裂していく細胞にそれぞれ分配される


減数分裂(成熟分裂)で生殖細胞を作る
精子や卵子など生殖細胞を作るときに起きる特別な分裂を減数分裂といい、 皮膚や爪、 筋肉などの体細胞の分裂の仕方とは異なる。 大腸菌のような単細胞生物の場合は、 細胞の分裂がそのまま親から子への遺伝情報の受け渡しに相当するが、 人間の場合は、 この「減数分裂(成熟分裂)」と呼ばれる仕組みによって卵子や精子を作り、 親から子へと遺伝情報を複製していく。 人間の体細胞には44本の常染色体と2本の性染色体が入っているのに対して、 減数分裂してできた卵子や精子は22本の常染色体と1本の性染色体を持つ。 つまり染色体の数が体細胞の半分に「減数」されている。


卵子と精子が受精することによって44本(22本x2)の常染色体と2本(XXもしくはXY)の性染色体を持つ受精卵ができ、 両親から子へと遺伝情報が受け継がれていく。 減数分裂は複数のステップを踏む複雑な分裂だが、 女性の場合、 卵子を作る減数分裂の最初の段階ではすでに胎児の時期に終っている。 男性の場合は思春期になると精巣で減数分裂が起こり、 精子が作られるようになる。 減数分裂で卵子や精子が作られるときには、 「遺伝子組み換え」と呼ばれる現象が起きて、 対になっている染色体同士の間で遺伝子の一部を交換する。 このため、 卵子や精子の遺伝子はそれぞれ少しずつ塩基配列が異なり、 親子や兄弟がクローンのようにそっくりになることはない。


― - - つづく

宇宙(98) 遺伝子あれこれ(14)

遺伝子研究で「不老長寿」が可能になるか。 
 - 老化に関係する遺伝子が次々と発見されている。 それらの遺伝子を利用して、 近い将来老化を防げるかも知れない。


老化を制御するクロトー遺伝子
老化を制御する遺伝子として注目を集めているのが「クロトー遺伝子」である。 クロトーというのはギリシャ神話に出て来る女神の名前。 人の運命を司る女神の一人で、 生命の誕生に立会い、 生命の糸を紡ぐ。 クロトー遺伝子が精子や卵子の成熟を制御して、 次の世代の誕生に深く関わっているとともに、 生体が成熟するために、 体の機能を正常に保ち、 健康にいきていくことに寄与しているところから、 この女神の名前を取った。 この遺伝子が注目されているのは、 同じ遺伝子がヒトでも見つかったことである。 しかも体全体の老化現象を制御する遺伝子が発見されたのはこれが初めてである。 これまでの老化の遺伝子といえば、 個々の細胞の機能を低下させたり、 細胞が死んでいくのに関係する遺伝子を指していた。 というのも、 それによって生物の機能も落ちて、 老化につながるとされていたからである。 


クロトー遺伝子の制御も一部でしかない
老化というのは、 年を取ると共に、 体の様々な部分の機能が低下していくことである。 脳の萎縮、 骨粗しょう症、 動脈硬化はその一部でしかない。 免疫機能の低下や心肺機能の衰え等多様な現象が老化と共に現れてくる。 クロトー遺伝子はこれら多様な老化現象のほんの一部を制御しているに過ぎない。 まだまだ未知の老化に関連する遺伝子は沢山あるはずである。 考え方によっては普通の健康な人より寿命が短くなると言われている糖尿病や年齢と共に高くなる血圧に関連する遺伝子も、 老化遺伝子という見方もできる。


遺伝子の異常で早期老化
早期に老化してしまうプロジェリア、 コケイン症候群、 ウェルナー症候群という病気がある。 プロジェリアとコケイン症候群は幼児期や小学生くらいで成長がとまり、 老化現象が現れる。 ウェルナー症候群は、 動脈硬化による心臓病や癌を伴うことが多いと言われている。 ウェルナー症候群については、 たった一つの遺伝子の異常によって発症していることがわかっており、 他の二つの病気に関しても研究が進められている。 こうした早期老化症候群を発生させる遺伝子の研究が進み、 機能がよりよくわかれば、 クロトー遺伝子と共に、 老化現象を解明し、 これらの病気の治療法や、 老化を防ぐ有効な方法をみつけるカギになるかも知れない。


細胞の老化を支配する遺伝子
細胞レベルの老化に関する遺伝子で注目されているのはテロメアである。 テロメアはDNAの端にあり、 細胞が分裂する度に短くなって、 なくなると細胞は分裂ができなくなり、 死んでいく。 しかし、 テロメアを複製させる酵素、 テロメラーゼが見つかっており、 これも老化を防ぐ可能性があるとされている。 さらに、 モータリンという細胞の分裂を制御する遺伝子の存在も明らかになっている。 この遺伝子も日本人の研究グループが見つけた。 モータリンⅠとⅡの2種類の遺伝子があり、 Ⅰは分裂を抑制し、 Ⅱは分裂を促進させて、 細胞を不死化させている。 この両者によって、 老化を制御できる可能性があるとして、 研究が続けられている。 老化の研究は世界中で莫大な研究費が費やされており、 これから遺伝子デベルで老化がさらに解明されていくであろう。


遺伝子が関係する老化の病気
・ウェルナー症候群 ・コケイン症候群 ・プロジェリア ・末梢血管拡張性アタキシア ・家族性頸部リポジスプラジア ・筋緊張性ジストロフィー症 ・家族性アルツハイマー病 ・家族性高脂血症 ・Ⅲ型アミロイドーシス


生命誕生から老化への道(テロメア構造を解明: 細胞の老化、癌化に関連)  
2009年ノーベル医学生理学賞は、老化と深く関係するテロメアについて多くの業績を残した、アメリカの科学者(エリザベス・ブラックバーン米カリフォルニア大サンフランシスコ校教授、 キャロル・グライダー米ジョンズ・ホプキンズ大教授、 ジャック・ショスタク米ハーバード大教授)が受賞することになった。


細胞が生まれて、機能が衰えて、そして死んでいく。 地球上に生命が誕生してから延々と繰り返されてきたこの過程 ―― つまり老化についての研究が、 最新科学を評価するノーベル賞で認められた。 老化とは、 最新科学をもってしてもまだまだ未知の分野であるということもできる。 失われてしまった細胞が担っていた機能は、その近くに存在するグリア細胞の働きによって、 周辺の神経細胞同士のネットワークであるシナプスを増やすことでカバーされる。 このようにして脳に新たなネットワークができるということは、 脳の機能を維持するだけでなく、 脳の機能をいままで以上に向上させることすら可能なのである。 神経細胞同士のネットワークの数を増やすことによって、 情報が記憶されることから考えれば、 我々はいくつになっても記憶力を増し、 認知症を予防することができると言える。 いままで常識と思われていた、 「失われた脳の機能は戻らない」という考え方は、 すでに完全に否定され、 何歳になっても脳の機能を向上させることが可能であると、 科学的に証明されている。


[テロメア説]: テロメア説は比較的新しい学説である。 我々の身体ではつねに細胞分裂が繰り返されている。 しかし、細胞が分裂できる回数にはかぎりがある。 それを決めているのが、 DNAのテロメアと呼ばれる部分である。 テロメアは染色体の先端に伸びている核酸で、 染色体を保護する役割をしているが、 細胞が分裂するたびにこれが短くなる。 何度も分裂を繰り返して、 テロメアが短くなりすぎると、 もう、 その細胞は分裂できなくなる


細胞が分裂して若返ることが、細胞の機能維持には欠かせない。 つまり、年齢を重ねて、細胞の分裂できる回数が減っていき、 ついには分裂できなくなることで、 細胞の機能が低下し、 老化を引き起こす、 というのがテロメア説である。


→ 老化に関わる遺伝子について述べてきた。 生命誕生から老化に至る過程で、 様々な病気を経験し、 人間は一つの物語を完成させる。 その中で重要な役目を担うのは、 健康である。 しからば、 西洋医学のみならず、 東洋医学との両面で人間の健康像を構築していく必要があるのではないか。 世の中まだまだ、 健康の本質がつかめず、 手探りの状態にあるような気がする。


― - - つづく