2006/12/11
クラブWC 1回戦@国立霞ヶ丘競技場
全北現代 0-1 クラブ…アメリカ
「日本はメキシコのようなサッカーを目指すべきだ」とはよく使われる常套句である。曰く、決して体格に恵まれているわけではないが、ショートパス主体の攻撃的なサッカーをすると。
そんな単純なもんじゃないと思うのだが、メキシコのトップチームが日本で公式戦を戦うというのだから、そういうメキシコ論者は見ておくべきだろう、このクラブワールドカップを。今回北中米カリブ海代表として参戦するクラブ・アメリカは金満クラブだそうなので、必ずしもメキシコのサッカースタイルを象徴はしないかもしれないが、そのエッセンスのさわりくらいには触れることができるかもしれない。
相手チームがチョンブク・ヒョンデというのも興味深い。今年のACLチャンピオン。いつか日本のクラブがこの立場で、と考えるのであればチョンブクに感情移入するのもよい。メキシコのチームを日本の理想と考えるのであれば、仮想日韓戦という捉え方もよいかもしれない。
決して見所がないわけではないし、これに勝てばバルサとやれるというのは両チームのモチベーションを高く保つに十分なものとなるはずだが、チケットの売れ行きは芳しくない模様。それならチケットは持たずにタダ券が回ってくるのを待つか……こういう時に限ってよい便りは聞こえてこない。ダフ屋が出てたら聞いてみるかと思ったが、信濃町で下車して青山門へ歩く間には、ダフ屋は一人もいなかった。
仕方なく当日券を購入。青山門のチケット売り場は18時40分時点で全く列など出来ていない。
「カテ4一枚。ホームとアウェイって分かれてるだっけ?」
「はい、全席指定です。」
「じゃあアメリカ側で。」
メキシコなのにアメリカ側って。エンブレムには鷲。おおよそメキシコっぽくない。
出てきたチケットは当日券にもかかわらず、チケぴの味も素っ気もないもの。いや、当日券だからこうなのであって、先行販売分はやたら立派だったっけ。チケットを見て、なんだこりゃ?と思う。
前列Cって書いてある。これはおそらく最前列だ。ひどい席を売るなあ。今年は横酷のガーナ戦も最前列だったっけ。
こんな具合で、ほぼフルフラットな上に、視界をさえぎる様々な障害物がある。こんな席からはフォーメーションなんてわからないものだが、
全北現代
GK21 クォン・ソンテ
DF 2 チェ・チョルスン
4 チェ・ジンチョル
5 キム・ヨンスン
12 チョン・グァンファン
MF 6 キム・ヒョンス
16 イム・ユファン
8 チョン・ジョングァン
22 クム・ヒョンボム
FW11 ワン・ジョンヒョン
15ゼ・カルロ
21
12 5 4 2
16 6
8 12
15 11
─ ─ ─ ─ ─ ─
7 9
11 10
18 20
4 5 16 3
1
クラブ・アメリカ
GK 1 オチョア
DF 3 カストロ
16 リカルド・ロハス
5 ダビーノ
4 オスカル・ロハス
MF20 アルゲージョ
18 ビジャ
10 ブランコ
11 ペレイラ
FW 7 クラウディオ・ロペス
9 カバニャス
どっちも4-4-2のダブルボランチ、わかりやすくて助かった。
立ち上がりはチョンブク優勢。体格は明らかにチョンブクが上回っていて、ボール際で絶対に負けない。ただ、そこから攻撃に転じても、フィニッシュまで持って行けない。徐々にペースを掌握してきたアメリカは、チョンブクの届かないところでゆっくりとパスを回す。油断していると急にリズムを切り替え、ワンタッチでゴール前のチャンスをつくり出す。こういう巧さは確かに参考になる。
でも、多用するヒールパスや股抜きにしたって、だからどうした的な感も。これは仮想日韓戦でも、仮想日本対世界のチームでもなく、野洲対鹿実の出来の悪い焼き直しなのでは。
両チームのミドルシュートがゴールからかなり遠いところへ飛んでいくのを見ていると、そんな思いが一層強くなる。見た目的にはなにかやってくれそうなパラグアイ人FW、カバニャス。彼の致命的なまでの勝負弱さを見ていて、QBKという言葉を思い出した。
かといってクラウディオ・ロペスにしても、ライン裏への鋭い飛び出しを何度も見せるが、肝心の得点には至らず。まあ、相変わらずかっこいいですけどね。
結局はチャンスを山ほどつくれば1点くらいは入るということか。CBの16リカルド・ロハスが前方につんのめりながら身体に当てたボールが、ボテボテ転がる。こんなんで決まらないでくれ!と観客の悲鳴が聞こえる中、ボールはゴールラインを越えた。
あんた、あんなゴールで喜びすぎでは……。
この試合から得たものって、なんだろう。リアリズムの重要性、だろうか。サッカーってのはこんなもの、ってことだろうか。
往年のスターを見て喜ぶという趣味はないのだが、
大将のカクカクした動きは、貫禄があってよかった。あんなに身体固そうなのに、ショートパス鋭いし。ライン際で相手2人に囲まれたとき必殺・カニばさみを試みたのには、場内から失笑が漏れていた。