2019年(第92回)アカデミー賞作品賞予想 | FLICKS FREAK

FLICKS FREAK

いやぁ、映画って本当にいいもんですね~

 

2月9日(現地時間)に発表される第92回アカデミー賞。今年の作品賞ノミネート作品は以下の9作品。

『フォードvsフェラーリ』

『アイリッシュマン』

『ジョジョ・ラビット』

『ジョーカー』

『ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語』

『マリッジ・ストーリー』

『1917 命をかけた伝令』

『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』

『パラサイト 半地下の家族』

 

現時点で日本未公開の2本(『1917』 2/14公開、『ストーリー・オブ・マイライフ』 3/27公開)は未鑑賞という段階で、個人的には『ジョーカー』が断トツだが、個人的評価を置いておき「当てに行く」予想をしてみる。

 

オスカー前哨戦として重要なのが、PGA Awards(全米製作者組合賞)とSGA Awards(全米映画俳優組合賞)。それがなぜ重要かは、オスカーがハリウッド業界内輪の賞であり功労賞的性格を持つことから説明を要しないだろう。前者は1989年に創設され、以降オスカー作品賞とのシンクロ率は21/30=70%。後者は1995年に創設され、以降オスカー作品賞とのシンクロ率は11/24=46%。その差は、俳優の選ぶ作品よりもプロデューサーの選ぶ作品の方が、作品全体の出来をより正当に評価していることから来ていると想像できる。

 

そして、アメリカにおいてアカデミー賞と並ぶ映画賞と言えばゴールデングローブ賞。これはハリウッド外国人映画記者協会の投票であるため、より批評家的観点から選ばれることがアカデミー賞との差であるが、ゴールデングローブ賞はドラマ部門とミュージカル・コメディ部門とに分かれていることも特徴。つまり、ゴールデングローブ賞の行方からオスカーの行方を占うとすれば、2作品候補作が挙げられるということになる。

 

(SGA Awardsが創設された)1995年以降、PGA Awards、SGA Awards、ゴールデングローブ賞両部門の受賞作とオスカー作品賞とのシンクロ率は21/24=88%に上る。即ち、オスカー作品賞はその受賞作から選ばれると見ることが順当。

 

今年の受賞作品は

PGA Awards 『1917 命をかけた伝令』

SGA Awards 『パラサイト 半地下の家族』

ゴールデングローブ賞 ドラマ部門 『1917 命をかけた伝令』

ゴールデングローブ賞 ミュージカル・コメディ部門 『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』

 

『ジョーカー』はこの時点で選から漏れる可能性が高いと考えられる。作品のテーマは反社会的な雰囲気が濃厚であり、リベラルなハリウッド関係者が右傾化著しいアメリカ国内の空気を読み取って、この作品を敢えてこの時期に選ぶことはないと考えることに違和感はない。

 

下馬評ではかなりいい線に行きそうな『パラサイト 半地下の家族』。アメリカでのヒットはブームとなり、テレビドラマ化も決定しているこの作品。ポン・ジュノ監督のこれまでの作品と比較して、個人的にはベストとは言えないこの作品だが、ハリウッド進出後の二作品(『スノーピアサー』『オクジャ』)を経て、よりグローバルに訴求力を身に付けた感がある。しかし、昨年の『ROMA/ローマ』の例もあり(昨年のノミネート作の個人的ベストは『アリー/スター誕生』だが、作品賞は『ROMA/ローマ』が受賞すると思っていた)、外国語賞候補作品が過去に作品賞を取ったことはないというジンクスはまだ生きている。ハリウッドのカンヌ嫌いもあり(過去にW受賞は1955年の『マーティ』まで遡らなくてはならず、半世紀以上もパルム・ドールとのW受賞は出ていない)、パルム・ドール受賞の『パラサイト』は見送るというのが順当だろう。

 

前哨戦として最も重要なPGA Awardsを受賞し、ゴールデングローブ賞とのW受賞である『1917 命をかけた伝令』はどうだろうか。いかにも大作嗜好のアカデミー賞らしい作品でもあり、前哨戦レースの結果から見ると、この作品が一番近いと考えるかもしれないが、この作品にとって大きなネガティブは、今年の演技賞(主演男優・女優/助演男優・女優)に誰一人この作品からノミネートされていないこと。過去のデータは未検証だが、そうした作品が作品賞を取ることは非常に考えにくい。

 

今年のアカデミー賞は、圧倒的優位の作品がない混戦であり、作品賞と監督賞を異なる作品が受賞というパターンだと思われる。であれば、予想の簡単な監督賞から考えるのが筋。なぜならオスカーの監督賞はほぼDGA Awards(全米監督協会賞)とリンクしているから。DGA Awardsは1938年から続く歴史ある賞だが、その長編映画監督賞はアカデミー賞監督賞とほぼ一致しており、今世紀に入ってからだけ見てもシンクロ率は16/18=89%に達する。今年のDGA Awards受賞監督は『1917 命をかけた伝令』のサム・メンデス監督。オスカーの監督賞はサム・メンデスで当確であり、作品賞は別の作品が取るということが今年の流れとなるだろう。

 

消去法的に残るのが『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』。シャロン・テート事件を題材にした作品だが、その時代背景として描かれているのがハリウッドのgood old days。いかにもハリウッド業界関係者が郷愁を持って高い評価をつけそうな予感がする。

 

以上を元に予想すれば、

◎ 『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』

〇 『1917 命をかけた伝令』

▲ 『ジョーカー』

△ 『パラサイト 半地下の家族』

 

そのほか主要部門の個人的予想は以下の通り

監督賞 サム・メンデス 『1917 命をかけた伝令』

主演男優賞 ホアキン・フェニックス 『ジョーカー』

主演女優賞 レネー・ゼルウィガー 『ジュディ 虹の彼方に』

助演男優賞 ジョー・ペシ 『アイリッシュマン』

助演女優賞 スカーレット・ヨハンソン 『ジョジョ・ラビット』

長編アニメ賞 『クロース』

外国語映画賞 『パラサイト 半地下の家族』

脚本賞 『パラサイト 半地下の家族』

脚色賞 『ジョジョ・ラビット』