1993年(第66回)アカデミー賞作品賞ノミネート作品 | FLICKS FREAK

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いやぁ、映画って本当にいいもんですね~

 

『シンドラーのリスト』 ★★★★★★★ (7/10) -受賞作- 

『父の祈りを』 ★★★★★★★ (7/10)

『ピアノ・レッスン』 ★★★★★★★ (7/10)

『逃亡者』 ★★★★★★ (6/10)

『日の名残り』 ★★★★★★ (6/10)

 

この年のノミネート作のリストを見て、初見の印象を元に判断すれば自分のベストは『父に祈りを』だった。受賞作でもあり非常に評価の高い『シンドラーのリスト』を、公開当時全くと言っていいほど評価していなかったから。

 

再考の余地もあるかと、久々に『シンドラーのリスト』を再鑑賞してみた。そして、公開時に自分がこの作品を評価しなかった理由も理解できるような気がしたし、素直に悪くない、どころかとてもいいと考え直した。

 

まず違和感を覚えざるを得ないのが、主役の二人がアイリッシュ(リアム・ニーソン)とブリティッシュ(レイフ・ファインズ)でドイツ人ではなく、ホロコーストを題材としながら英語でセリフが語られていること。その違和感は、洋画を日本語吹き替えで観ていることに通じる。

 

それとスピルバーグの映画造りのうまさが、あざとさとなって受け止められたということ。オスカー・シンドラーは、ビジネスマンであり善人として見られることをむしろよしとしなかったかのように描かれている。それが観客に受ける要素の大きな部分なのだが、そこに作為的なものを感じなくもなかった。しかし、そのように斜に構えずに観れば、やはりオスカー・シンドラーの人物像は非常に魅力的であり、彼のなし得たことは、その意義を考えると感動に値する。

 

オスカー・シンドラーが、ドイツ降伏後収容所を去る際に、車やナチのバッジと引き換えに更に多くの人を救えたはずなのに「自分はその努力をしなかった」と悔いて泣き崩れるシーンは、「出来過ぎでありハリウッド的に『盛っている』だろう」と天邪鬼的に見るのでなければ、やはり感動的。また、モノクロの中に少女とロウソクに色を配する演出も(これまた「上手過ぎる」と言えなくもないのだが)効果的だった。そして何よりよかったと思えたのは、歴史の犠牲になった多くの無名の人にスポットライトを当てるかのように、個人の名前にこだわった点だった。

 

四半世紀前に観た時には素直によいとできなかったものが、自分の天邪鬼的なものではなかったかという反省と共にこの作品を再評価したいと思った。そして、DVDに特典映像として収録された「シンドラーのリストの生存者の声」が、本編以上に感動的であったことを付け加えておきたい。

 

父が息子に身をもって信念を貫くことの尊さを教える『父の祈りを』は、冤罪ものであることや父子ものであるという自分のツボであることを除いても、共感させられる秀作。また『ピアノ・レッスン』は、現代では少々キモい感もある恋愛ドラマだが、相手を全く知らずに結婚を決める昔の状況で、相手の愛するものを理解することが愛情を得る上で重要であるということと性愛が恋愛のベースになり得るということを、パワフルに描いた恋愛物の佳作と評価できる。

 

つまるところ、この年のノミネート作は非常に高水準の作品ぞろいだったと言える。