君に逢いたくなったら…⑥
あぁ、ずっとこうしたかったんだ…。
再会して、すぐに抱き寄せて…抱きしめられて。
メール送ってみても何のレスポンスもないから、あの人の中には僕はもうナイのかと思ってた。
『今夜…ライブが終わったら待っててね。ご馳走作るから』
最後のつもりで送ったメールに初めての返信なんて…ジェジュンヒョン、ずるい…。
「どうやって来たの?」
「Taxiです」
「じゃあ今日は付き合って貰えるね」
凄い喜んでいるのが判る。
可愛い顔に似合わず酒豪のジェジュンヒョン。
「誰にも、見つからなかったの?」
「ええ、今日は実家からですし」
「…そう」 一瞬、その笑顔が淋しそうに陰る。
「じゃ、こっち来て座ってよ。足りるかどうか心配だけど…」
テーブルいっぱいに料理が並んでいた。
「足りるかな」
「微妙ですね」
「口に合えばいいけど」
「…それも微妙ですね。いただきます」
しばらくは、無言で食べていた。
「ねぇ、何か話してよ」
向かい有って座ってるジェジュンヒョンは、ニコニコしながらグラスをぐいぐい空けている。
「食べるのに忙しいんです」
「そうだね…ワインも飲んでね」言いながら自分のグラスばかりをいっぱいにして。
「はい」
「…ねぇ」
「はい」
「ねぇ」
「…なんでしょう」
何をか言いたげに、酔って潤んだ双眸で、僕を見るのはやめて下さい。
そんな風にねだってないで…言いたいことが…聞きたいことが有るなら、はっきりと言って…。
「ね…」
「はい」察しないで、言わせるのは、意地が悪いんだろうか。
「ユノ、…どうしてる?」
君に逢いたくなったら…⑤
テレビは台風を告げている。台風のわりには、雨音は穏やかだ。
僕は、テーブルいっぱいにに料理を並べていた。
何日か前から、届く動画のみのメール。動画なんて観なくても、本当に頑張ってる二人を知ってたし、返信は敢えてしなかった。
ところが、一番最後に届いたメールには、一言
『ご褒美下さい』
…これには思わず吹き出して、
『今夜…ライブが終わったら待っててね。ご馳走作るから』
って返信してしまった。
結局、その日は都合が悪くて、今日になった。
メールの主はチャンミンだった。
料理もお酒も足りるかな…。
久しぶりに逢える可愛いマンネ。
可愛くて、昔は食べちゃいたいくらい可愛くて…キス、しちゃった事も有ったね。
インターフォンが、来客を告げる。
室内器のカメラに映し出されてるのは…。
僕は急いで玄関を開けた。
「…ご無沙汰してます」
「チャンミン…」
礼儀正しく挨拶されて、不覚にも、涙ぐんでしまった。
なんて、大きくて美しい、大人の男になったんだろう。
「どうぞ、上がっ」言いかけたら、抱き寄せられた。
「逢いたかったです」
「僕もだよ…ね、顔、もっとよく見せてよ」
体は以前にもまして、筋肉質になってたけど、涙ぐんでる顔は昔はおんなじだった。
「…大きくなった」
「そうですね…ユノヒョンとかわらないですよ」
ユノ…。
その名前を聞くと、胸の奥がズキン、と痛んだ。
君に逢いたくなったら…④
最後に逢った日の事は、ほとんど覚えていない。
覚えているのは…ジェジュンが、大きな涙をこぼして言った一言だけ…。
「ユノが護りたいものって、結局何だったの」
…結局、って言わなきゃ判らなかったんだろうか。
そんなこと言わなくても判りあえてると思ってたのに…。
久しぶりに見た夢はジェジュンの夢で、しかも一番思い出したくない日の夢だった。
疲れすぎると、夢も見ない。
最近のスケジュールの詰まり具合は、ほぼ理想的だ。
欲を言うともう少し詰まっててもいいくらい…以前に比べたら、まだちょっと余裕はある。
限界まで体を動かして、考え事をする余裕もないくらいに
追い詰められるような、そんな忙しさには残念ながらまだならない。
そうこうしているうちにオフになった。
チャンミンは無邪気に喜んでいる。
…休みっていったい何して過ごしてたっけな。
「明日…実家に帰るのか?」
「そうですね…ちょっと立ち寄る程度には」
「その様子だと、他に予定があるのか」
「はい、ちょっと」
楽しそうに支度する様子に、少し付き合えよ、とは言えなかった。
夢に見たあの日は、人生最悪の日、とも言える…実際、幸か不幸かあの日より最悪な日は未だ来ていない。