haruのブログ~争いはいらない ほしいのは愛だけ~ -222ページ目

君に逢いたくなったら…⑫

車を出すのに思いのほか時間がかかって…一瞬、見失いかけたけれど、

照らしたヘッドライトがその背中を見つけた。



雨の中、前だけを向いて、一心不乱に歩いている後姿。










…その一途な背中が、いつもいじらしいくらい愛おしくて…ずっと抱きしめていたかった。












後ろから、ゆっくりと車を近づけると、俺は運転席の窓を開けて、ジェジュンの腕を引っ張った。
振り向きもせず、俺の手を必死に振りほどこうと身をよじる。


「乗れよ」

「…!」



俺の声に振り返ったジェジュンは、これ以上ないくらい驚愕に目を見開いていた。


「俺の顔、忘れた?」


ジェジュンは無言で腕をさすりながら頭を振る。


「だったら、乗れって。歩いて帰れないだろ」


ジェジュンは俺に言われるのまま後部座席に乗り込んだ。


「家まで送るよ。家、どこ?」

「チャンミンが」


俺の声なんて耳に届いていない様子で、ずぶ濡れになって。

それでも心配するのは、マンネの事…自分の事じゃなくて。


「…なんであの子、こんなことしたんだろ」


ジェジュンの虚ろな声と、ハザードランプの点滅音だけが対照的に車内で響く。

「恨まれてるのかな…やっぱり」

「違うと思う」


その時、初めて俺に気がついたようにはっとして言った。


「あ、ごめん、ユノ…ってかなんで判ったの、

僕がここにいること」

「お前がどこで何してるかってくらい

いつでも判るっ…て言いたいところだけど、

あの子から連絡が有ったんだよ」



以前、まだチャンミンが天使のようにあどけないころ、

俺たち二人はチャンミンを『あの子』って呼んでいた。

お前、いつもあいつのこと、心配してたよな。




俺たちは、…知らない間にあの頃のように話していた。


君に逢いたくなったら…⑪

「チャンミン、馬鹿~っっっ!」



咽喉が裂けるほど、叫ばずにはいられなかった。



チャンミン…僕、何かした?

こんなどこだかわからないところに真夜中、しかも雨の中、

着のみ着のままで放置されるほど悪いこと、何かした??

叫んだり、落ち込んだりしたところで、現実は変わるはずも無く…とは言え財布、携帯電話、家の鍵さえ…そう言えば、チャンミンがさっそく鍵を使って戸締りしてくれてたっけ。



大事なものはすべて… 置いて出て来た。


どうしよう…仕方ないか。

怒りから脱力、そして諦め…。




…いつかに似てるな。




こんな感じ、いつか有ったような気がする…ああ、そうか。


逡巡するまでもない。





ユノに最後に合った日、僕の気持ちの移り変わりがそんな感じだった。


あんまり判ってくれないユノに腹が立って、泣いて叫んで。


判り合ってたつもりがそうじゃなかったって落ち込んで。


そして、もう会えないって諦めたんだ。









でも。


その後しばらくしたら、やっぱり会いたくなって。


逢えるにはどうしたらいいかなって、いつも考えてた。


それで合鍵を皆の分作って貰ったんだった。


そう言えば、キーケースも、なかなか良い色の5色の色違いって無くてて探すの苦労したな。



青は僕の。

黄色はユチョン。

白はジュンス。

黒はチャンミン…あ。


「チャンミンなんかに渡すんじゃなかった」腹立ち紛れに独り言ちる。



取り合えず歩こう。


大きな道に出て、taxi拾って、事務所に行って…歩き出した僕の右太ももに違和感が有った。






ポケットの中探ると…黒のキーケース…。


「チャンミンのばか」今度は小さな声で呟く。


要らないなら、要らないって言えば良いのに。




青は僕の。

黄色はユチョン。

白はジュンス。

黒はチャンミン…そして、赤…。



赤はユノの。







僕は土砂降りに近い雨の中、歩き出した。

























君に逢いたくなったら…⑩

電話が鳴っている。




電話の子機を探してみたけれど、台本やら何やらが床に置いてあって、


どこに行ったかよく判らない…第一、子機の着信音は鳴ってない。





俺はため息をついて本体の受話器を取った。




「お留守かと思いましたよ」


「チャンミンか」





同居人からの電話だった。





「どうした?今日は帰ってこないのか」


「はい。今日は実家に泊まります。明後日の出発には間に合いますし。それよりユノヒョン」


「ん?」


「そこから窓の外…エントランスって見えます?」


「いや、本体の所で喋ってるから」




チャンミンが大きくため息をついた。何を言いたいんだ、こいつ。




「ユノヒョン、こちらも携帯のバッテリーが危ういので一回しか言いません。よく聞いてくださいね」


「うん?」


「エントランスのところに…ジェジュンヒョンがいます」
「は?」



ジェジュン?



「着の身着のままで拉致って…連れて来ました。ジェジュンヒョンに逢ってあげて下さい」
「お前、何言ってるの?」
「あの人のことだから、自分で何とかしようとして雨の中…あ、ヤバ…で」



一方的に電話は切れた。

ジェジュンが、ここに?


拉致って…連れて来たって?


電話を置くと、とりあえず、エントランスが見える窓際にいってみた。

窓の外から、叫び声…罵声が聞こえた。
この辺りは住宅街だから珍しい…酔っ払いか?



窓際から、目を懲らして外を見てみる。



とぼとぼと、エントランスからロータリーを横切る人影が見えた…。
土砂降りに近い雨の中、ロータリーの中心に有る街灯が、その人の後ろ姿を照らす。
どこかで見たことのある、痩せぎすで肩幅ばかりある後ろ姿…。












まさか。










…俺が見間違うはずはない。


ジェジュン…。