君に逢いたくなったら…⑮
車を停める場所を探して、ユノが先に降りて後部座席のドアを開けてくれた。
僕も車から降りる。
「気をつけて帰れよ。雨やんでるみたいだけど…風邪ひくなよ」ユノは、僕の視線を避けるように、空を見上げた。
「ありがと、ユノ」
それから、やっぱりごめん。
僕を許して…。
もう一度僕を見て。
「ああ」
「また…会えるかな」
そして…初めて、ユノが僕を見つめる…。
「勝手なことばっかり言うなよ…自分から出て行ってて」
ユノは怒ったように僕に背中を向けた。
「ごめん…」
「だから謝るなって」
「だって許してほしいんだよ、だって、もう一度…」
「だから、俺、一回も諦めたことないって」
「ユノ…」
「大体、お前は判りにくいんだよ」
そのまま、車に乗り込む。
「こんな自分勝手で、頑固で、判りにくくて、めんどくさい奴…」
君に逢いたくなったら…⑭
謝るな。
許す、許さないじゃない…そういう関係じゃない。
それにお前に許しを乞われたら…俺はどうしたら良い?
「お前なりに考えて出した結論だろ?だったら、そんなに簡単に謝るなよ…」
俺は一気に言った。
後部座席のジェジュンの表情は判らない。
「うん…」
ジェジュンが答えたあとは、長い長い沈黙が車内を包んだ。
車は、雨の中、夜の街を走る。
ジェジュンから聞いた取り留めない説明から、この辺りか、と車を走らせる…。
「お前の話からすると、この辺りっぽいけど…」
「…あ、うちはこの裏、かな」
「そうか…大丈夫か?」
「大丈夫、大丈夫」
「何が大丈夫、だよ自分の家の住所も覚えてないのに」
大丈夫だよ、って言うお前の言葉が、一番大丈夫じゃないじゃないか…。
「ここまで送ってくれてありがと。」
こんなに危なかっしいのに…それでも、自分で歩いていこうとするんだな…。
君に逢いたくな ったら…⑬
…忘れたことなんか、無い。
ずっと、逢いたかった…。
あんなに逢いたかったのに、もっと大事なことを
言わなきゃいけないのに、いざ逢うと、
頭がぼーっとして…口をついて出たのは、チャンミンとのこと。
でも…どうして、あの日の事が、あの日以降のことが
何にもなかったようにユノは喋ってくれるの?
「家は?…まさかと思うけど…住所…?」
「う…実は、正確には…」
「…!」
「あ、でも…」
絶句するユノに大体の場所の説明をすると、思いの外近くに住んでいることが判った。
「あ、大体判った」
「ホントに?」
…どうして、こんなに僕、普通に喋ってるの?
「何?」
「ユノ、怖いから振り返らないで前見て運転してよ」後部座席から、ユノが振り返らないように頭を固定する。
「痛い!爪、立てんなって」
「あ、ごめん…」
慌てて離した手を…左手を取られる。
「冷たいな…タオル、持ってくれば良かった」
「大丈夫」
「本当?」
「うん」
「じゃ、このままな」
言われて、取られた僕の手はユノの手に挟まれて、逞しい胸を少しだけ滑り、
その鼓動が刻まれる場所の上に。
「ユノ…」
「あ、キツいか、ごめん」
ユノは慌てて手を離した。
ブレーキが少し遅れる。
中腰だった僕は、後部座席に軽くぶつかった。
「ごめん」
「大丈夫…それより…ごめん」
「ええ?」
「謝りたいかったんだ、ずっと」
「やめてくれ」