恋蛍⑭
「桜が好きな人は誰?」
ユノの低い声が響く。
桜は答えない。
「答えてよ…俺は、桜が好きだよ」
その時、不意に、遠雷が響いた。
すっと、桜の顔色がなくなり、
その場に、耳を押さえてしゃがみこむ。
「…どうしたの?」
ユノもつられてしゃがみ込む。
「…だめなのよ」
「何が?」
「…カミナリ」
「大丈夫だよ、まだ遠い」
「ホ、ホントにダメなんだってば」
…さっきまでの落ち着きはらった顔とは別人のようだ、とユノは思った。
「落ちついた?」
「…なんとか」
ユノは立ち上がり、桜に手を差し出した。
桜はその手を借りて立ち上がりかけたが、ユノはそのまま抱きしめた。
「じゃあ、教えてよ」
何もかも、知りたいんだよ。
桜に、恋してるから…。
間の抜けた音で内線電話が鳴り出した。
恋蛍⑬
「好きだったのになぁ、この仕事」
桜は、何事もなかったようにユノに背を向けると、立ったまま、管理端末を操作しながら呟いた。
ユノは桜の背中をを見つめた。
「好きだったのは、仕事だけ?」
「どうして?」
振り向いた桜の表情は普段と変わらない様に見えた。
「…だって」
「何?」
「なんか…」
「…うん?」
ユノは言葉を探した。
上手い言葉は見つからなかったが、今の桜なら、本当の事を教えてくれそうな気がした。
「…好き、だったの?」
「え?」
「さっきの人」
ユノは管理端末を指差した。
桜は一瞬、きょとんとしたが、仕方ないな…と笑った。
「…好きって言うか…うーん」
ブゥンと小さく低い音がして、端末の電源が落ちる。
「そういう時もあったかなぁ…」
「…じゃあ、今は?」
「え?」
「今は、誰が好き?」
桜は、何事もなかったようにユノに背を向けると、立ったまま、管理端末を操作しながら呟いた。
ユノは桜の背中をを見つめた。
「好きだったのは、仕事だけ?」
「どうして?」
振り向いた桜の表情は普段と変わらない様に見えた。
「…だって」
「何?」
「なんか…」
「…うん?」
ユノは言葉を探した。
上手い言葉は見つからなかったが、今の桜なら、本当の事を教えてくれそうな気がした。
「…好き、だったの?」
「え?」
「さっきの人」
ユノは管理端末を指差した。
桜は一瞬、きょとんとしたが、仕方ないな…と笑った。
「…好きって言うか…うーん」
ブゥンと小さく低い音がして、端末の電源が落ちる。
「そういう時もあったかなぁ…」
「…じゃあ、今は?」
「え?」
「今は、誰が好き?」
恋蛍⑫
E‐2ブロックは、0時で業務終了している、と予定表に記載が有った。
…何か問題が有ったんだろうか?
ユノは急いでE‐2ブロックに向かう。
E‐2ブロックは、Eブロックの中にある、管理端末1台、通常端末2台しかない個室だった。
最初はパーテーションで仕切られているだけのスペースだったが、
顧客情報管理に慎重なクライアントからのたっての願い…
クレームで、個室になっていて、なぜか回線トラブルも多かった。
「失礼します」
「お疲れ様です」
中で桜が待っていた。
「何か問題?」
「この…管理端末切忘れ、センター長なんだよね」
「…?」
「こんな人でも続けられるのになあ…」
「ログアウト出来ない?だったら…」
話が見えなくてユノはイライラと答えた。
「…私、10月いっぱいでここ辞めることになった」
「え?」
「契約満了になっちゃった…更新なくなった」