haruのブログ~争いはいらない ほしいのは愛だけ~ -209ページ目

恋蛍⑰

「…何で?」


「話があって」


「何?今、聞くけど?」






ユノの言葉に桜は黙り込んだ。







「…どうしたの?」

「会いたくない…ってこと?」

「違うよ」







ユノはちょっと笑って、それでもきっぱりと答えた。




そして言葉を探しながら続ける。







「きっと…桜の顔見たら、また困らせたら悪いから…さっきみたいに」

「…さっき?」

「うん」

「あのさ、ユノ…今…何時か知ってる?」


「知らない…何時?」


「もう夜の9時なんだけどね」




くす、と笑い合う。






そして、静かな沈黙が流れる。







「前さ、桜言ったよね」

「何?」

「俺に電話かけてくれた時…Neutralって」

「…うん」

「今は?」

「…違うかも」







ユノは、一つ息をついて続けた。






「じゃ、教えてよ…」

「うん」






桜はゆっくりと話し始めた。












ユノと初めて会った時のこと。


ラーメン会のこと。


夜勤で逢えるか楽しみだったこと。






それから。




契約のこと…悔しかったこと。












そして、今の気持ちを…。












「好きって言ってもらってうれしかった」


「…ホントに?」


「うん…ありがと…ホントに」


「だったらそれでいいだろ」


「…?」


「そのままずっと、一緒に逢ったり、飯食ったり…」


「うん…」


「ずっと一緒に、居れるだけ、居ようよ…」
「そんなのは無理だよ…」
「だから、居れるだけって言ってるだろ。いい加減、言うこと聞いて」
「うん…」

恋蛍⑯

結局…ユノは、桜に気持ちを伝えたけれど、返事をもらえないまま、ぐったりと疲れ果てて


その日の勤務を終えた。








心身ともに疲労困憊し、ユノは泥のように眠った。








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深い眠りから覚めたのは、携帯の呼び出し音のせいだった。


今が昼なのか夜なのか判らない。










「誰が出るかよ」




ヤサぐれ気味に呟く。










そのままにしておくと、留守番電話に切り替わる。




吹き込みしないつもりなら、きっと切るだろう。




そう思ってユノはそのまま、まどろんでいた。




ところが、数秒の沈黙の後、思いがけない声が聞こえた。












「桜です…」
















一気に目が覚めたけれど、電話はそのまま切れた。




ユノは起き上がり、枕元の携帯を見つめ…そして意を決してかけなおす。












「桜…さっき電話くれた?」


「…うん」


「どうした?」


「…逢いたいんだけど」



















恋蛍⑮

「落ちついた?」
「…なんとか」
「大丈夫?」



黙って頷く桜を、ユノはその逞しい胸にもう一度抱いた。



「こんなに好きなこと、判らない?」


「…内線。とらなきゃ」


桜は内線電話を取ろうとしたが、ユノは離さなかった。


「はい、チャンです。水上さん…?さっき、そちらに。はい…じゃ」




内線電話を切ると桜は大きなため息をついた。



「ユノもそんな嘘つくんだ…知らなかった」

「もっと知ってよ、俺の事」
「そういうこと言うの、やめてよ」


拒絶ともとれる言葉に、一瞬、ユノの桜を抱く力が弱まった。

桜はユノを押し返し、体を離す。


「…今、弱ってるんだから…ホントに好きになっちゃうじゃない」


桜はそう言って笑うとユノを残して部屋を出た。


いつか見た仇っぽい笑い方。


でも、すぐにそれは涙でゆがんでいた。