実存主義、はぁ? | texas-no-kumagusuのブログ

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トミオ・ペトロスキー(Tomio Petrosky、日本名:山越富夫)のブログです。

実存主義って哲学で良く出てくる言葉ですよね。皆さんその言葉で何を意味するか想像できますか?

私には全く想像ができなかった。最近になてやっとこの意味が判るようになりました。これって、 philosofy を「愛智学」と訳さずに「哲学」と訳したくらい下手くそな訳だったのですね。「哲学」って訳したのは江戸から明治にかけて活躍した西周だそうですが、以前にも論じたように、これほど下手な訳はなかった。その証拠に、未だに「哲学とはなんぞや」なんて本を書いて金儲けができるくらい、この言葉を聞いてその意図することが判らないほど下手な訳だったのですから。まさか、生物学や航空工学という言葉を聞いて、「生物学とはなんぞや」とか「航空工学とはなんぞや」なんて本を書いて金儲けができる人はいないでしょう。

「実存」ってそれに匹敵するくらい下手くそな訳なんですね。これは「現実的存在」という言葉の実と存をとって短縮した言葉なんだそうです。 九鬼周造という戦前の哲学者って言うか、哲学輸入業者が作った言葉だそうです。西周と言い、九鬼周造と言い、哲学輸入業者って、どれもこれもどうしてこんなに訳の判らない言葉を捻出するのでしょうか。私だったら、もう一晩寝て、初めて聞いた人でも意味が直感的に判るもっと透明な言葉を探します。「実存」なんて言葉を聞いて「現実的存在」の略だなんて思い至る人はいないんじゃないかしら。

 

きっと、哲学を勉強している人は、
 「実存て意味わかるか、お前はわからないだろうけど、俺は知っているんだぜ」

ということで恍惚感でも味わいたいのかしら。

私だったら、「実存主義」と訳さずに、「事実主義」と訳しますね。それに対して、それに対比する考え方を「理念主義」と訳す。要するに、理念主義とは、人間が現実とは無関係に頭の中で描くことができる理念に重きを置き、そこに物事の普遍的な本質があるのだと考える。それに対して、事実主義とは現に起こっている個々の事実の中に世界の本質が存在しているのだという主張なんだと理解しました。要するに、この世界を認識するには「普遍的な理念」が重要なのか、それとも「個々の現実に起こっている事実」が重要なのかという力点の置き方の違いです。そう言ってくれれば、なるほどと思うのに、実存主義じゃ初めて聞いた人にはなんのことか判らない。

似たような言葉で哲学輸入業者の使う言葉にイデアというのがあります。私は若い頃、イデアって相当高度な言葉だと思っていた。ところがあるとき英語の本を読んでいてイデアってidea、すなわちアイデアのことなんだと知りました。なんだ、それならアイデアと言えば良いじゃないか。イデアなんて言うから、なんか底知れぬ深い意味が含まれているように錯覚してしまっていたんだと気づかされました。少なくとも英語国民はイデアとはアイデアのことだと思っているはずです。多分、日本の哲学輸入業者って宣伝業者の電通やキャッチコピー製造業者のように、実は中身が片っぽなことでも仰々しい名前を案出して金儲けを企むキャッチコピー業者なのかも知れないと気づかされたのです。

西周さんのおかげで、相変わらず哲学輸入業者が「哲学とはなんぞや」なんて本を書いて金儲けができる。きっと、哲学輸入業者にとっては西周さんは飯の種を提供してくれた大切な先輩なんでしょうね。

 

哲学輸入業者の馬鹿さ加減について『哲学考1』と『哲学考2』2013-01-30も参考にしてください。ついでに『哲学考3』と『哲学考4』も。

追記です:このような下手くそな命名法が最近では巷でも大手を振っているようです。今朝ネットの新聞記事を読んでいたら、TDLって言葉が出ていた。多分今の若者はそれで意味がわかるかもしれませんが、この言葉に初めってお目にかかって何のことだか判る人っていないのじゃないでしょうか。他にも、EVだのDVだLGBTだの、字面を見て意味がわからない不透明な言葉が大手を振って新聞記事に出ていますね。このような言葉は流行り言葉としてそのうち皆に飽きられてきてしまう言葉です。そこでクイズです。EVってなんのことだかわかりますか。多分electric vehicleて答える人が多いと思います。ところがこの言葉を全く違った意味で使っていた毎日新聞のネット記事を読んだことがあります。