賞金稼ぎ
今回は、今まで(たぶん)取り上げたことがない時代劇から「賞金稼ぎ」(75年)である。若山富三郎主演のウエスタンチックな時代劇だ。
東映では「賞金稼ぎシリーズ」として三本の映画が存在するが、まあそれのテレビバージョンというわけである。若山が演じるのは賞金稼ぎの錣(しころ)市兵衛。ちなみに錣とは兜・頭巾の後頭部から首を守る部位のことを言う。相撲には詳しくないが元寺尾関が現在は錣山親方だそうである。苗字サイトで調べると錣山は全国で2件あったが、錣という人はいないようである。
話が逸れたが、映画での主人公と同じ名前である。その市兵衛の表の顔は寺子屋「日の出塾」を経営し、塾長先生と呼ばれている温厚な人物。しかし、その裏の顔は武芸十八般の達人というスーパー賞金稼ぎ。塾は無料で開いているため、その運用資金の調達という側面がある。
ジュディ・オング演じる陽炎は伊賀のくノ一で、賞金稼ぎの相棒でもある。塾では体育の先生。陽炎は映画版にも登場するが1作目は野川由美子、2作目は真山知子が演じていた。瞳順子演じる千枝は塾の先生であり経理担当。市兵衛の裏の顔は知っている。個人的なイメージだが、瞳順子は服部妙子と並び被害者となる役が多い気がする。本作でも誘拐されたりはするが、常に気丈にふるまっている。
ミラーマンでお馴染み石田信之が演じる桜井新之介は算術の先生で、正義感は強いが腕っぷしは弱い。大村崑演じる九内は塾の用務員で子供たちの送り迎えなどを担当する。彼も武芸はからっきしで、男二人は市兵衛の裏の顔は知らない。
睦五朗演じる高坂飛騨守は勘定奉行だが、市兵衛の幼馴染である。事あるごとに市兵衛に賞金稼ぎの仕事を持ってくる。
後は準レギュラーだが、仲間の賞金稼ぎたちがいる。若林豪(山上太郎左)、石橋蓮司(片桐三郎次)、大木実(望月弥太郎)、大友柳太朗(岩見又五郎)がおり、いずれも3~4回ずつ出演している(大友は2回)。大木実演じる弥太郎は映画版にも登場している。
塾の子供たちの中に仁科扶紀という娘がいるが、川谷拓三の娘だという。子役としてだけでなく成人してからも女優は続けているようだ。本作の出演者リストに川谷の名はないが、当時なら斬られ役とかで出演していても不思議はない。
本作はウエスタンチックと書いたが、もちろん剣での戦いもあるが、ライフルによる銃撃戦が多い。火縄銃ではなく完全にライフルである。
北斗の人
前回の「大盗賊」(74年)と一日遅くスタートし、一日遅く終了したのが「北斗の人」(74年)である(全13話)。同じフジテレビ系で「大盗賊」は土曜の放送だったが、「北斗の人」は日曜21時、「白雪劇場」枠での放送であった。正直この作品に関しては一度も見たことがない。
原作は司馬遼太郎で、「北斗の人」とは千葉周作のことを指している。千葉周作といえば、北辰一刀流。北辰とは北斗七星の首座・北極星のことである。北斗の‥とくれば「北斗の拳」を思い浮かべる人も多いと思うが、この作品からインスパイアされているかどうかは知らない。
初めて千葉周作の名を知ったのは、アニメの「赤胴鈴之助」(72年)だった気がするのだが、こちらの周作は鈴之助の師匠であり、貫禄のある年を重ねた人物として描かれていたが、本作で周作を演じるのは当時28歳の伊吹吾郎である。つまり周作の若い頃を描いている話だ。伊吹の主演は「無用ノ介」(69年)以来だと思われる。
他は中々の渋いキャストが揃う。周作の父・浦山寿貞(千葉幸右衛門)に小沢栄太郎。浅利又七郎に池部良。佐藤狐雲に宇野重吉。本間仙五郎に岡田英次となっており、彼ら全員が共演しているドラマというのは中々ないのではないか。役柄はよくわからないが中村竹弥、益田喜頓なんかも出演している。
周作の門弟となるのが山本麟一(吉田川)、井上昭文(小泉玄伸)、工藤堅太郎(佐鳥浦八)、綿引洪(細野源蔵)などで山麟演じる吉田川というのは関取なのだが、周作の一番弟子だそうな。
無論、おっさんばかりではなく女性も少しばかりは登場する。田島令子(お美那)、野川由美子(雪江)、田坂都(おのぶ)などがいる。お美那は又七郎の養女で周作の妻となるのだが、周作が浅利家を出ていくことになり、夫婦関係も消失する。おのぶは浅利家を出た周作が居候することになった植木屋の娘。後に周作の妻となる。田島令子は普通に美女だが、一番有名なのは「バイオニック・ジェミー」の吹替かもしれない。声優としての仕事も多い。田坂都は青春ドラマでのヒロインの友達といったイメージが強い。田坂は既に故人とのことだが、正確な没年は不明らしい(2011年以前と思われる)。
他の出演者だが、左右田一平(又兵衛)、細川俊之(喜多村正秀)、和崎俊哉(高柳又四郎)といったところである。
実は67年にもドラマ化されており、こちらは全9回と短め。出演は加藤剛(千葉周作)、伊藤雄之助(浦山寿貞)、永井智雄(浅利又七郎)、小林千登勢(お美那)などである。
大盗賊 その2
前回の続きで「大盗賊」(74年)である。
盗賊でありながら、丹波哲郎扮する闇将軍は三つ葉葵の家紋のついた白装束に白頭巾姿で悪人たちを二刀流で斬り捨てるのである。目立つことこの上ない。三つ葉葵といえば、徳川家の家紋でモノホンの将軍家だが、特にその関わりについては触れられていないようだ。
第1話の監督は小野田嘉幹。丹波と同じ新東宝の出身である。テレビ版「鬼平犯科帳」の監督は松本白鸚版から中村吉右衛門版まで全てに携わっている。もちろん、75年の丹波哲郎版も担当している。新東宝時代に人気女優だった三ツ矢歌子と結婚。実弟は平田昭彦で、この第1話にゲスト出演している。平田は56歳の若さで亡くなっているが、小野田はこれを書いている時点では96歳となるが健在のようである。
第5話では財津一郎と横山リエは別として、納谷悟朗、梶哲也、阪脩、二見忠男、八代駿、沢りつお、山下啓介、辻村真人、沼波輝枝、安原義人、倉口佳三、林一夫、和田文夫といった当時テアトルエコーに所属していた面々がずらりと並んでいる。一般的には声優として認識されている顔ぶれだと思う。
納谷悟朗は、銭形警部なども有名であるが、やはり「仮面ライダー」におけるショッカーの首領。そのショッカーの怪人を含めて、仮面ライダーシリーズの怪人の声を演じていたのが、梶、阪、辻村、沢、八代、山下、二見、倉口、林等で、沼波輝枝は蜂女やドクダリアンなど女性怪人の声のほとんどをやっていた気がする。安原義人はアニメが多いが、刑事ドラマ「ジャングル」では明石刑事役でレギュラー出演。和田文夫は洋画が多く、テアトルエコー社長でもあった。
続く第6話には安藤昇がゲスト出演。丹波哲郎繋がりか、この回の監督の降旗康男繋がりなのかは不明だが、安藤昇のテレビドラマ出演は少ない。「三匹の侍」(丹波)と「新三匹の侍」(安藤)の主役共演ということになる。前項でも書いた原田君事の初映画出演は安藤が主演の「望郷と掟」(65年)だったという。安藤と原田がセリフを交わすシーンがあり、監督指示通りだと、原田の顔が映らないのだが、安藤が原田の顔が映るように配慮してくれたという。
最終話に至っては、七つの海を制覇するなどと言って、気球に乗って飛び立っていくのである。どこかで聞いたことのあるシチュエーションだと思ったら、人気ドラマだった「天下御免」(71~72年)の最終話と同じではないか。これは「天下御免」にインスパイアされたと言えるのではないだろうか。
本作は「大奥」や「木枯し紋次郎」と同じフジテレビ系土曜22時半からの放送だったが、本作(全13話)でこの枠は終了し、時代劇枠は木曜20時に移動した。何しろ裏番組が「必殺シリーズ」だった為(この時点では「暗闇仕留人」)、同じ時代劇では対抗できなくなっていたのである。放送時間は30分ずれてはいたが、必殺を見終わった後、チャンネル移動する人は多くなかったのかもしれない。少なくとも子供ながら必殺ファンだった自分は「木曽街道いそぎ旅」や「大盗賊」はやっていたことも知らなかった。しかし、この時点ではTBS系土曜22時からの放送だった「必殺シリーズ」も翌75年には、腸捻転と言われるネット系列の再編により、テレ朝系の金曜22時に移動してしまうのである。
大盗賊
前回の「木曽街道いそぎ旅」の約1年後に同じ枠(フジテレビ土曜22時半)で放送されたのが「大盗賊」(74年)である。「大盗賊」で検索するとまず63年の三船敏郎主演の映画「大盗賊」が出てきてしまうが、この映画とは全く関係がなく、タイトルが同じだけである。
主演は丹波哲郎である。丹波扮する人気の浮世絵師・緑川(りよくせん)の裏の顔は、「闇将軍」と呼ばれる大盗賊の頭目であった。配下である夜桜のお時(松尾嘉代)、横笛のお町(野際陽子)、狐火の新吉(三ツ木清隆)らと共に、庶民を泣かせる悪徳商人や権力者を成敗しつつ大金を奪い去って行く、というのが大まかなストーリーである。
盗賊が主人公といえば、池波正太郎の「雲霧仁左衛門」を思い出すが、実はこの74年に初出版されており、これがベースになっているのかもしれない。
丹波哲郎といえば、当時はこの前年(73年)に終了した「キイハンター」のイメージがまだ強かったが、そのメンバーだった野際陽子と再び共演。「キイハンター」の後、同じTBS土曜21時枠で「アイフル大作戦」を経て当時は「バーディ大作戦」に出演中だった(次作が「Gメン75」)。つまり、土曜の夜は丹波ドラマ祭りだったわけである。
他の出演者だが、闇将軍を追う同心の真崎左門(内田良平)、役どころは不明だが、お甲(有吉ひとみ)、お文(高毬子)、辰五郎(久野四郎)等がいる。高毬子は「プレイガール」で知られるが、宝塚出身で退団後に大映入り。その大映入りを薦めたのが丹波だったという。久野四郎は「月光仮面」(58年)で五郎八を演じていた。久野征四郎という役者もいるが、もちろん別人である。
また、本作は丹波プロダクションが制作に関わっているが、所属していた三島新太郎、原田君事、大杉雄二らが闇将軍の部下として出演していた。大杉雄二は元大野剣友会のメンバーで、大杉雄太郎の名で仮面ライダー1号のスーツアクターを務めていた。
「キイハンター」仲間の野際陽子や丹波の一番弟子と言われる宮内洋も丹波プロの所属となるが、原田君事は自身のブログで宮内主演の「怪傑ズバット」(77年)に出演した時のことを書いている。この作品はタッカーという悪の大本となる組織があり、毎回違うタッカーの下部組織とそのボス・用心棒が登場する。第9話の組織(TTT団)のボス・鉄の爪を原田が、用心棒・釣師十兵衛を三島新太郎が演じているのである。
原田は当時、こういう特撮物には偏見があり、丹波プロの社長に言われ(丹波ではない)、嫌々出演したという。いざやって見るといつもよりセリフも多く楽しかったというが、以降も特撮ものに出演することはなかったようだ。俳優を辞めてからも「鉄の爪」の人ですよね言われることがあり、ずっと覚えてもらえるならもっと特撮ものに出ておけば良かったと後悔したという。
木曽街道いそぎ旅
今回は前回の「弥次喜多隠密道中」と同じく二人旅を描いた「木曽街道いそぎ旅」(73年)である。
本作はあの「木枯し紋次郎」の後番組であり、紋次郎同様の股旅ものである。しかし人気番組の後番ということもあってか、再放送の機会もあまりなく、知る人ぞ知る番組という感じである。
道中ものは大抵、東海道とか中山道とかがが舞台になるのだが、木曽街道=中山道である。狭義には美濃国と信濃国の境界部にあたる木曽地方の一部区間のことをさすらしいが、それだと11の宿場しかないらしく、連続ドラマには不向きだと思われ、まあ実質中山道と言ってよさそうだ。
主演は山口崇と露口茂。山口演じる成りゆきの辰は陽気な渡世人で、その時々で「早耳の辰」「風花の辰」など思いつきの通り名を名乗ったりする。露口演じる裏街道(うらみち)の銀次は、無口なお尋ね者である無宿渡世人。賭場でいかさまを見破る名人で、賭場荒らしとして各土地の博徒から目の敵にされている。
陽気な男と静かな男というお決まりなパターンな組み合わせだが、実は辰の正体は勘定奉行配下の役人・堀越三四郎というのもパターンではないだろうか。前回の「弥次喜多隠密道中」の二人も正体は公儀隠密だし。
銀次は、女壺振りの元女房・お篠乃(加賀まりこ)を捜して旅をしている。堅気の職人だった銀次が無宿渡世人になる原因を作ったのがお篠乃である。お篠乃は初回と最終回のみ登場する。銀次は背後に回られることを嫌うという「ゴルゴ13」のような設定がある。銀次が辰と吊るんでいるというわけではなく、銀次の前に辰が現れるというパターンのようだ。もう一人レギュラーがおり、流浪の女壺振りである追分のお千加(町田祥子)である。二人の行く先々に現れ、二人の手助けをする。
露口茂といえば「太陽にほえろ」の山村刑事だが、その妻である高子を演じていたのが町田祥子である。206話で死んでしまうのだが、10回ほど登場している。56年17歳のときににミス松竹に選ばれ、松竹入り。レギュラー出演作品はほとんどなく、本作くらいではないだろうか。
あまりビッグスターは出演していないようだが、女性ゲストは力が入っているほうだと思う。八千草薫、大原麗子、山本陽子、早瀬久美、竹下景子、吉行和子、北沢典子、榊ひろみ等である。男性ゲストでは水島道太郎、加賀邦男、河津清三郎、徳大寺伸、藤原釜足、加藤嘉、加藤武、坊屋三郎といったベテラン勢に加え、なべおさみ、清水?治、早川保、藤岡重慶、田浦正己、橋本功などである。
弥次喜多隠密道中 その2
前回の続きで「弥次喜多隠密道中」(71~72年)である。裏番組が強力な「肝っ玉母さん」ということもあって、色々な話題づくりを行っている。
まず、番組タイトル文字を当時の国民的スター読売巨人軍の長嶋茂雄と王貞治に書かせたのである。「弥次」が王で「喜多」が長嶋だったそうな。一部の文字マニアしか喜ばない気もするが、まあ話題にはなるであろう。また、放送局であった日本テレビは、素人大学生二人(共に中大三年)に弥次喜多の扮装をさせ、東京~大阪間600kmを徒歩で歩かせたという。日テレは当時からそういうのが好きらしい。
主題歌は水原弘が歌う「隠密大作戦」。花札賭博への関与で、表舞台から遠ざかった期間もあったが、カムバックを果たし表面上は順調に見えたが、元々酒量が多く、徐々に体を悪くしていったようだ。そんな水原は第9話にゲスト出演。この回はアラカンこと嵐寛寿郎も出演した回である。当時70歳である。ちなみに亡くなったのは水原が78年で、アラカンが80年のことだ。
ついでにゲストについて触れておくと、前回書いた目黒ファミリーである近衛十四郎、松方弘樹、江夏夕子を含め、中々豪華な顔ぶれに思える。
坂上二郎、高城丈二、梶芽衣子、津川雅彦、工藤堅太郎、沢村精四郎、戸上城太郎、江戸屋猫八、田村亮、里見浩太朗、
市川海老蔵(現・市川團十郎)、ピーター、品川隆二、東千代之介、園まり、扇ひろ子、伊藤久哉、加賀邦男、笠置シズ子など。由美かおる、奈美悦子、江美早苗といった西野バレエ団「レ・ガールズ」のうち三人がゲスト出演している。
8話に人見明、13話に人見きよしが出演しているが、たまに二人を混同してしまう。東宝のクレージーキャッツ映画にでているのが人見明で、「プレイガール」によくゲスト出演していたのが人見きよしである。人見明の方は存命らしく、今年で100歳になろうとしている。
第3話のサブタイが「仇討めくら剣法」といい、梶芽衣子の他、神田隆、川合伸旺、田中浩、石橋雅史という中々の面子が出演している回だが、サブタイの扱いはどうだったのだろうか。地上波ではそのまま放送できないだろうから差し替えたりするのだろうが、衛星波ではそのままかもしれない。同時期に放送されていた「シルバー仮面」にも第17話「シルバーめくら手裏剣」というのがあったが、同じCSでもチャンネルによっては差し替え(「大阪SOS」に)とそのまま放送と対応は分かれていたようだ。
弥次喜多隠密道中
NHK時代劇シリーズは、前回で取り敢えず一段落ついた。ネタを探すのが面倒だったので、ずっと続けていたのだが、何分見たことがない番組ばかりなのがネックだと思っていたが、まあそれなりの行を埋めることはできた。
で今回からどうしようかと思ったのだが、未見を理由にまだ取り上げていない番組はあるので、そこを拾い上げていこうと思う。ジャンルはもうちょいテレビ時代劇で行きたいと思うのである。
そんなわけで今回は「弥次喜多隠密道中」(71~72年)である。近年、BSで放送されたらしいが、BSは見ることができないので、未見のままである(おそらく)。タイトルから大体の想像はつくのだが、「東海道中膝栗毛」の弥次さんと喜多さんが登場するわけではない。
老中・水野忠邦はいままで伊賀や甲賀の忍びにやらせていた隠密を素人にやらせてみようと思い立ち、二人の男を呼び出す。一人は貧乏旗本の次男坊・村上弥次郎、もう一人は「素人」ではなく元は伊賀の忍びという同心・青山喜多八である。性格は真逆で弥次郎は普段は堅物だが酒乱。喜多八は腕はあるが大の女好きというもの。この二人が旅をしながら各地にはびこる悪を退治していくというのが大雑把なストーリーである。
配役は弥次郎が尾上菊之助(四代目)で当時29歳。。現在の尾上菊五郎(七代目)である。喜多八は目黒祐樹で当時24歳だ。父である近衛十四郎は第5話に、兄である松方弘樹は第8話、妻である江夏夕子は第20話にゲスト出演しており、一家総出という感じである。江夏との結婚は81年のことだが、出会いは69年の映画「栄光の黒豹」ということで、本作の時点では既に交際中だった可能性が高い。
レギュラーはこの二人だけではない。榊竜軒(中村敦夫)は公儀隠し目付で弥次喜多の上司にあたる。色々と姿を変えながら彼らを見守る。本作の放送中に「木枯し紋次郎」がスタートし、本作の後半はあまり登場しなくなる。お駒(岡田可愛)は竜軒配下の甲賀のくノ一で、二人の監視役であるが、19話伊賀にて命を落とす。早苗(八木孝子)は弥次郎の許婚であり、二人(というより弥次郎)の後を追ってくる。おるい(土田早苗)は18話より登場する隠密だが、死亡したお駒の後任となる。小判鮫(林与一)は討幕を狙う謎の盗賊。23話からの登場なので、出番は4回のみである。本作の前は「人形佐七捕物帳」の主演。本作終了後は「必殺仕掛人」に出演する。そして水野忠邦(大友柳太朗)は全部で8回登場するようだ。ところで大友柳太朗の正式な表記は「友」の字の右上に“丶”を付与したものらしい。漢和辞典にも載っていないと思われる。
武蔵坊弁慶
「真田太平記」の後番組が新大型時代劇の第3作となる「武蔵坊弁慶」(86年)である。
弁慶が登場する時代劇自体は結構あると思うが、「弁慶」をタイトルつまり主役にしたドラマや映画はそれほど多くない。ドラマとしては、おそらく本作は2本目だったようだ。ちなみに」1本目は丹波哲郎主演の「弁慶」(65年)である。どうしても、牛若丸(源義経)が主役になることが多いからだろう。原作は富田常雄で「姿三四郎」や「柔」の作者でもある。
配役だが、主演の弁慶役は中村吉右衛門。歌舞伎の「勧進帳」や「義経千本桜」でも弁慶を演じていたことが、決め手になったようである。吉右衛門といえば「鬼平犯科帳」のイメージが強いが、こちらは89年のスタートである。
牛若丸こと義経役は川野太郎。デビュー作でもある前年の連続テレビ小説「澪つくし」で一躍有名となっていた。第3話にて有名な五条大橋での対決シーンがあったが、川野を吊っていたワイヤーが切れるという事故があり、川野は足に重傷を負った。その為、川野の登場場面はしばらく上半身のみとなり、立ちシーンは代役が演じていた。
義経の主従関係にある面々は、岩下浩(常陸坊海尊)、ジョニー大倉(伊勢三郎)、真夏竜(佐藤継信)、中村扇雀(佐藤忠信)、村田雄浩(片岡経春)、布施博(片岡為春)など。弁慶と伊勢三郎、佐藤兄弟は義経四天王と呼ばれる。ちなみに俳優・浅野忠信の本名は佐藤忠信だ。真夏竜はウルトラマンレオで、中村扇雀(当時・浩太郎)は坂田藤十郎と扇千景の次男である。
弁慶や義経の関係者は、荻野目慶子(玉虫=弁慶の妻)、高橋かおり(小玉虫=弁慶の娘)、長岡輝子(弁慶の母)、麻生祐未(静御前)、山咲千里(若の前=義経正室)、藤村志保(常盤御前)、高品格(播磨の太平)、加藤茶(徳)、寺尾聰(金売り吉次)など。長岡輝子は当時78歳であったが、102歳まで生き抜いた。加藤茶がこうしたドラマにドリフを離れてピンで出たのはこれが初だったようだ。
他の主な登場人物は、菅原文太(源頼朝)、内藤武敏(北条時政)、神崎愛(北条政子)、平泉成(後藤新兵衛)、児玉清(富樫家経)、佐藤浩市(木曽義仲)、大地真央(巴御前)、久米明(源頼政)、芦田伸介(平清盛)、隆大介(平知盛)、長塚京三(平宗盛)、真野あずさ(右京大夫)、津嘉山正種(藤原泰衡)、坂東正之助(藤原忠衡)、萬屋錦之介(藤原秀衡)などである。
大河ドラマが87年より時代劇路線(独眼竜政宗)に戻ることが決定したため、本作は12月に全32話をもって終了した。この「新大型時代劇」の枠も本作をもって終了している。
真田太平記
前回の「宮本武蔵」の後番組、つまり「新大型時代劇」の第2弾が「真田太平記」(84~85年)である。原作は池波正太郎で、74~82年まで「週刊朝日」に連載されていた長編小説である。当初でた単行本は全16巻だった。
池波正太郎の長編作品ということで、何度も映像化されているようなイメージがあるが、原作の完結が82年ということもあり、このNHKでのドラマ化が初ということになる。また意外にも、これ以降はドラマ化も映画化もされていないようである。池波の「真田もの」作品は数多くあるようだが、本作はその集大成的な作品で、真田家の面々や配下の忍者などの活躍を詳細に描いている。もちろん、史実の部分もあれば創作の部分もある。
物語の中心となるのは、もちろん真田一族であり真田昌幸とその長男である信幸(後に信之)と次男である幸村の生涯を描く。恐らく、この中では真田十勇士との絡みもあり幸村が一番有名だと思われるが、本作の主人公となるのは信之である。何故なら昌幸は1611年、幸村は1615年に死んでしまうのだが、信之は1658年まで生き抜いたからである。ちなみに93歳だったというから、今の時代でもかなりの長寿といえる。しかし、決して健康だったというわけではなく、40代以降は病気がちだったそうだ。
関ヶ原の戦いでは東軍に味方する信幸と西軍に味方する昌幸・幸村とは袂を分かっていた。信幸から信之への改名も昌幸・幸村と「幸」の字が繋がるからだが、二人を憎んでいたわけではない。
さて、ドラマの配役であるが、主演の真田信之には渡瀬恒彦、弟の幸村は草刈正雄、父・昌幸は丹波哲郎である。他の真田一族は小山明子(山手殿=昌幸の正室)、坂口良子(お徳=昌幸の側室)、香野百合子(久野=山手殿の妹)、紺野美沙子(小松殿=信幸の正室)、中村久美(於利世=幸村の正室)、片岡孝太郎(真田大助)、榎木孝明(樋口角兵衛)、岡田有希子(於菊=昌幸の娘)。岡田有希子は当時のアイドル歌手。86年に投身自殺、まだ18歳であった。
真田家の家臣の役では、加藤嘉(矢沢頼綱)、大谷友右衛門(矢沢頼康)、庄司永健(金井権之助)、広瀬昌助(望月半助)、角野卓造(馬場彦四郎)、長谷川初範(杉本主馬)、木之元亮(向井佐平次)、音無真喜子(もよ)、堀江しのぶ(三輪)。50年代に映画で活躍した大谷友右衛門は七代目で、本作に出演しているのは、その息子で八代目。堀江しのぶはグラビアアイドルとして活躍していたが、88年胃癌のために23歳の若さで亡くなっている。
草の者つまり忍者役は、夏八木勲、遥くらら、中村橋之助、花沢徳衛、堀田真三、范文雀、真田健一郎、渋谷天外など。
甲賀山中忍び、つまり徳川方の忍者は、佐藤慶、戸浦六宏、石橋蓮司、江角英明、鈴木瑞穂、井川比佐志、丹波義隆、待田京介、北村総一朗、多々良純など、忍びイメージのないベテラン役者が多い。
その他、誰でも知っている歴史上の人物は中村梅之助(徳川家康)、中村梅雀(徳川秀忠)、加藤武(本多忠勝)、菅貫太郎(井伊直政)、長門裕之(豊臣秀吉)、円谷浩(豊臣秀頼)、岡田茉莉子(淀君)、津島恵子(高台院)、竜雷太(加藤清正)、清水綋治(石田三成)など、まだまだ挙げればキリがないのである。
宮本武蔵(83年版)
前回取り上げた「壬生の恋歌」の後番組が「新・なにわの源蔵事件帳」(82~83年)で、全23回が多かった「水曜時代劇」では短めの17話で終了した。これには83年3月一杯で「水曜時代劇」枠の終了という事情があった。キレの良い83年4月初週から始まったのが「新大型時代劇」という枠で、その第一作がお馴染みの「宮本武蔵」(83~84年)である。
同じ時代劇なのに、わざわざ枠名が変更されたのには大河ドラマが関係している。この年1月から放送されていた大河は「山河燃ゆ」だが、これは太平洋戦争を描いたものであり、現代劇の範疇に入るものだったのである。大河といえば、時代劇という視聴者も多かろうということで設定された枠であり、いわば大河ドラマをもう一本制作するような感じだったわけである。というわけで放送期間も約1年で全45話となっている。
吉川英治の原作にほぼ忠実に沿っており、特に映画やドラマであまり詳しくは描かれない序盤の「地の巻」の部分を意図的に膨らませているという。ところで、吉川が「宮本武蔵」を執筆したきっかけは菊池寛と直木三十五の論争にあったという。菊池は「武蔵=名人説」、直木は「武蔵=非名人説」を唱え、吉川は菊池に同意した。すると直木に「その理由を発表せよ」と迫られた。その際は沈黙したというが、数年後に吉川は「宮本武蔵」を発表したのである。これを基に映画化、ドラマ化されることが多く、一般にはあたかも真実であるかのように思われている節があるが、小説の多くの部分は
創作である。お通や又八なども創作上の人物だ。
配役だが、宮本武蔵は役所広司である。当時28歳で本作が初の主演である。前年の大河ドラマ「徳川家康」での織田信長役で注目を集めたところからの抜擢である。プロデューサーが同じということもあり、「徳川家康」から引き続いて本作に出演している俳優も多い。奥田瑛二(本位田又八)、池上季実子(朱美)、津川雅彦(沢庵宗彰)、石坂浩二(本阿弥光悦)、江原真二郎(青木丹左衛門)、伊藤孝雄(池田輝政)、高橋惠子(吉野大夫)、宅麻伸(柳生兵庫助)、鈴木光枝(お杉)、岩本多代(武蔵の母)などがそうである。
他の主なキャストは、古手川祐子(お通)、草笛光子(お甲)、田村高廣(長岡佐渡)、南田洋子(小次郎の伯母)、小林麻美(お光)、西村晃(柳生石舟斎)、竹脇無我(柳生宗矩)、藤堂新二(吉岡清十郎)、三浦浩一(夢想権之助)、黒沢年男(宍戸梅軒)、丹波哲郎(平田無二斎、武蔵の父)といったところだ。
武蔵の宿敵・佐々木小次郎には中康次が抜擢された。「戦国自衛隊」(79年)でメインに近い若手隊員を演じたりしていたが、一般的にはあまり知られていなかった。長門裕之がプロデューサーの渋谷に引き合わせ、渋谷が彼を気に入ったという経緯だった。長門と中といえば「スケバン刑事」を思い出す人もいるだろうが、この翌年の番組である。
武蔵と小次郎、共に「コウジ」が抜擢され一見、役所の方が年長に見えるのだが、中は当時36歳と8歳も上である。中は51年生まれとされていたが、2015年の死後48年生まれだったことが明らかになった。