お宝映画・番組私的見聞録 -178ページ目

悪銭(ぜに)/紳士淑女協定

63年の後半、天知茂が出演しているドラマが4本並行して放送された時期があった。前々項で取り上げた4月スタートの「虎の子作戦」に加え、8月より「悪銭(ぜに)」、そして10月からは「孤独の賭け」と「紳士淑女協定」の2本がスタート、すべて夜10時代の放送であった。「悪銭」は11月、「紳士淑女協定」は12月でそれぞれ終了しているので短期間ではあるが、当時の視聴者は毎日のようにドラマで天知を目にしていたと思う。
「孤独の賭け」は後に映画化もされ、割合有名なドラマだと思うが、「悪銭」や「紳士淑女協定」を知っている人はあまりいないと思うので(私も知りませんでした)、この両方を取り上げてみたい。
「悪銭」は登場人物全員が悪人というのが謳い文句のドラマ。天知が演じるのは天才的な経済知識を持って会社乗っ取りを企む男、しかも女殺し(殺人という意味ではない)。しかし、実は天知は主役ではなく、彼の部下であった芦屋雁之助が主役だったようである。要するに天知の上を行き、成り替わるという役柄のようだ。雁之助のこういった悪役というのもあまり見かけない。個人的には「助け人走る」で悪役ゲストで出ていたことくらいしか印象にはない。他のレギュラーは山茶花究、小山明子、北あけみなど。北はこれが連ドラ初出演だったようだ。ちなみに女性陣は雁之助ではなく天知がらみの役柄である。
「紳士淑女協定」は、銀座を舞台にしたハードボイルドコメディとのこと。出演者は中々豪華で、園井啓介、谷幹一、田中邦衛、熊倉一雄、そして天知茂、新東宝での同期生・三原葉子といったところがレギュラーのようだ。はっきりと分からない部分が多いが、解説や放映リストから判断すると、探偵事務所の所長が三原葉子で、男性陣はそこの探偵あるいは、そこから仕事を貰っている連中(「傷だらけの天使」みたいな感じ)といった感じらしい。園井、谷、邦衛がグループで天知と熊倉は彼らと対立しており、特に園井と天知が張り合うことが多いようである。「探偵」というよりは、銀座という土地柄上ホステスの集金を代行したり、交通事故の示談屋など何でも屋的な要素が強かったように思われる。ちなみに第1話のゲストはハナ肇、谷啓のクレージーキャッツコンビや古今亭志ん朝など。
それにしても、この時代の天知出演のドラマは東映絡み以外は謎というか幻になっている物が多いと思う。

ミスターシャネル

「虎の子作戦」に続いて、天知茂がシャネルと呼ばれる刑事を演じたのが、ずばり「ミスターシャネル」(65年)である。「虎の子」のシャネルとは別人のようだが、とにかく主役に昇格している。特命を帯びると戸籍も抹消し、ピストル密輸団やらテロ組織やら麻薬密売組織やらに潜入していく刑事ということらしい。
この作品についても、以前このブログで「虎の子」と一緒に取り上げているが、やはり詳細はほぼ不明であった。今回は前項でも参照したサイトにある放映リストから、ある程度判断できる部分がある。
レギュラー陣は天知の他、「虎の子」ではリーダーだった若原雅夫が、ここでも彼の上司(だと思う)を演じる。今回はちゃんと苗字があり高原というようだ。ただ、階級が警部なのか警視なのか警視正なのか、同じページ3通り表記されているのではっきりしない。まあ特命刑事の上司なら警視クラス以上のような気がするのだが。その娘(だと思われる)に橘公子、「地獄耳」というくらいだから情報屋の役(と思われる)に人見きよし。シャネルの妹かおりに公募新人らしい福田和子で、彼女の苗字は川草というらしいので、シャネルの本名は川草と予想される(違うケースも当然あるが)。
あと、レギュラーかどうかは不明だが、複数回に登場している刑事役で、江見俊太郎、田中弘史、伝法三千雄、そして「車椅子のボス」に二本柳寛の名がある。悪のボスなのか警察でのボスなのかはわからないが。「プレイガール」のオネエこと沢たまきも準レギュラー的に登場していたようだ。江見俊太郎は天知と同じ新東宝出身、田中弘史や伝法三千雄は専ら時代劇の悪役としてその名を見かける役者である。
ゲスト出演は、新東宝で天知の同僚であった明智十三郎や三原葉子、他に弓恵子、香月美奈子、中原早苗、茅島成美、永井秀明、そして最終回のゲストは冨士真奈美だったようである。
シャネルっていうぐらいだから、おしゃれな刑事だったのだろう。「非情のライセンス」の会田のようにハードだったかは不明だが、名前の印象はソフトだ。
ところで、当時の日本でシャネルはどれくらい認識されていたのだろうか。まだ日本法人は存在していなかった時代である(80年に設立)。「マリリン・モンローが寝巻きがわり?にしている香水」くらいのイメージだったかもしれない。

虎の子作戦(テレビ版)

天知茂は、新東宝倒産後は大映時代劇以外にもテレビへの出演が増えていった。特に63年頃からは、レギュラードラマも多くなっていったが、初めての刑事役は「虎の子作戦」(63年)だったと思われる。
実は、二年ほど前にこのプログでも取り上げてはいるのだが、五人の敏腕刑事が活躍するコメディっぽいドラマということぐらいしかわかっていなかった。
今回も、そう詳しくわかったわけではないが、天知茂に詳しいサイトにこの放映リストが載っていた。そこから、その五人というのが天知茂の他は、若原雅夫、高松英郎、河上一夫、ここまでは前回の推察どおりだったが、もう一人が市川小金吾であったことが判明した。他に北村英三が特捜部長という役柄だったようだ。
当時は、子供は勿論、大人もアダ名で呼ぶようなドラマというのは非常に多かった気がするが、この五人にもそれぞれにニックネームがついている。一発の旦那(若原)、ニンジツ(高松)、シャネルうどん(天知)、三段(河上)、パラボラボーイ(市川)というもの。ちなみに同じ年に日活で公開された映画版ではニンジツは忍術、三段は六段で、シャネルうどんはシャネルだった。なんだシャネルうどんって?
リーダー役である若原雅夫は戦前から活躍していた役者で、五社協定の影響で映画出演ができなくなり、60年代にはテレビで活躍していた。高松英郎はちょうど大映を退社しテレビへ進出し始めた頃である。河上一夫は主に時代劇や柔道者への出演が多かった役者で、市川小金吾は名前のとおり、元々歌舞伎界の人だが、60年代はテレビや映画への出演も多かった。後に青虎を襲名している。
この番組がきっかけになったのか知らないが、市川は天知との共演も多かったように思う。「必殺仕掛人」で天知が二役を演じた「秋風二人旅」において、天知の仲間の浪人を演じていたのが、市川であり天知の盟友である北町嘉朗(当時は北真知史郎)であった。
全47回と一年近く続いたわりには、話題になることのないドラマである。ほとんど再放送もされなかったようだし、映像も残っているかどうか。高松英郎が「ピストル市場」(35話)という脚本を書いたり、天知も一話書いたという話もある。

長脇差忠臣蔵

十二月といえば忠臣蔵である。というわけで「長脇差忠臣蔵」(62年)という作品を取り上げてみたい。
天知茂が大映に移籍して、最初の作品があの座頭市シリーズの第1作「座頭市物語」(62年)での平手御酒役であった。天知は新東宝時代から現代劇、時代劇を問わず出演していたが、大映での最初の二年間ほどは、ほぼ時代劇に出演している。
この時代の大映時代劇の二大スターといえば市川雷蔵と勝新太郎であった。天知はだいたい、この二人が主役の作品の助演という形での出演が多かった。
新東宝から大映に移籍したもう一人のスターといえば宇津井健。宇津井は現代劇が中心なので、天知と顔を合わせることはなかったが、本作には宇津井も出演、そして共演することが少なくなっていた雷蔵と勝新が共に出演。加えて大映の看板スター長谷川一夫の息子である林成年という「忠臣蔵」らしい、オールスターキャストとなっている。ちなみに、雷蔵、勝新、天知、宇津井、林は全員同じ年で、当時31歳であった。ちなみに、勝新と宇津井は同じ東京深川生まれで幼馴染だったらしい。
他にも当時の大映若手スター・「特捜最前線」の橘警部でお馴染み本郷功次郎、「月光仮面」「隠密剣士」のテレビスター大瀬康一、その「隠密剣士」では敵役だった友田輝、当時の大映時代劇では準主役級だった「ブラック将軍」丹羽又三郎、他にも名和宏、上田吉二郎、小林勝彦、ベテラン中村鴈治郎、女優陣では藤村志保、月丘夢路といったところが出演している。
「忠臣蔵」といえば、大抵ベテランスター勢ぞろいといった趣向が通例だが、本作はやくざ世界に置き換えて若手スターの共演という形になっている。
もっとも、主演はあくまで雷蔵で、勝新の出演はワンシーンだし、宇津井は処刑されてしまう役だ。新東宝では不死身のヒーローで、まず死ぬ役などなかった宇津井だが、本作ではあっさりと死ぬ。しかし、先に紹介した同い年五人で健在なのは宇津井だけである。

南郷次郎探偵帳 影なき殺人者/黒の挑戦者

天知茂といえば、新東宝では大抵が悪役で、主演作も何本かあるが「地獄」とか「東海道四谷怪談」とか「女吸血鬼」とかで、テレビでの会田刑事のような刑事役や明智小五郎のような探偵役というのは、ほとんどなかった。
そんな天知の新東宝でのラスト主演(出演ではない)映画が「南郷次郎探偵帳 影なき殺人者」(61年)である。南郷は正確には探偵ではなく弁護士なのだが、明智小五郎ばりの活躍をするということだろう。彼の助手役が前項でも触れた水原ユカで、麻薬組織のボスが細川俊夫、その愛人が天知と同期である三原葉子、南郷を助ける部長刑事に坂本武、他に林寛、鳴門洋二、沖竜次など。シリーズ化される予定だったらしいが、新東宝が潰れてしまったので、この一作だけに留まっている。そして天知は大映(当初は時代劇の京都)に移籍していく。
実は本作にはリメイクが存在するのだが、それがわずか三年後(64年)大映の「黒の挑戦者」である。大映の黒シリーズの第8作でもあるので、わかりづらいが、内容は弁護士・南郷次郎が活躍するものなのだ。南郷役は田宮二郎で、彼の助手役が個人的には「連想ゲーム」のイメージがある坪内ミキ子である。新東宝版で三原葉子(二代目女王蜂)が演じた役はやはり新東宝出身の久保菜穂子(初代女王蜂)で、坂本武が演じた部長刑事は山茶花究が演じている。他に見明凡太郎、木村元、伊達三郎など。
田宮の次の主演作が犬シリーズ第1弾の「宿無し犬」で、ここで天知と共演することになったのである。

湯の町姉妹

今回も末期の新東宝作品から「湯の町姉妹」(61年)をピックアップしてみたい。ちなみに「しまい」ではなく「きょうだい」と読ませるらしい。大蔵貢時代なら、まずなかったような作品で、タイトルからして新東宝っぽくない。
舞台は伊香保温泉の旅館で、そこの娘二人が主役。姉が池内淳子で、妹が水原ユカである。池内は三十になるが男っ気がないが、客である小説家志望の青年(といっても当時37歳)・沼田曜一に気があるらしい。水原には恋人・菅原文太がいた。
前々項の「ズバリ恋愛講座」では池内と文太がカップルだったが、本作では(文太から見て)恋人の姉である。個人的には沼田曜一の二枚目役というのは、とても違和感がある。若い頃も後の不気味なイメージとそんなに変わっていないし。ところで、水原ユカという女優だが、大蔵退陣後にデビューしたようで、この年の3~5月にかけて四本の作品の出演し、いずれもヒロイン級の役であった。文字通り新東宝最後のスター候補だったといえよう。しかし、新東宝倒産によりスターになり損ねてしまったようだ。翌62年から松竹作品において水原ユカリという名が見られるが同一人物の可能性が高い。すぐに姿を消してしまったようだが。
他の出演者は、由利徹、三条魔子、若杉嘉津子、御木本伸介、伊達正三郎、小畠絹子、星輝美、浅見比呂志、高宮敬二、寺島達夫、旅館の女将役で花井蘭子など。花井は本作が遺作になったようである。
文太、高宮、寺島とハンサムタワーは三人出ているが、新東宝でのラスト作品である(ほとんどの出演者がそうなのだが)。残る吉田輝雄は同時期の「火線地帯」に出演しているので、こちらには出ていないのだろう。この後、四人揃って松竹に移籍することになる。
あと、池内の友人役で島倉千代子が登場し、当然歌ったりする。加えて実弟の島倉征夫も唯一の映画出演を果たしている。島倉征夫は、この頃だけ「笛吹童子」などドラマに出演していたようだ。姉の千代子とも「人生の四季」というドラマ枠の「白い花の咲く頃に」(60年)という作品でも共演している。ちなみに現在は作曲家として活躍しているようだ。

風流滑稽譚 仙人部落

小島功の「仙人部落」は知っている人も多いと思うが、56年に連載スタートし50年を経過した現在でも続いているという超ロングラン漫画である。まあ、掲載誌のアサヒ芸能が60年以上続いているということの方が意外に思ってしまうが(創刊は47年)。
アニメの方は63年に放送、15分番組で日本初の深夜アニメ(23時台であるが)とも言われている。ちなみに早坂暁などが脚本を書いていた。
しかし、この「仙人部落」の実写版映画をご存知であろうか。それが、新東宝が61年に制作した「風流滑稽譚 仙人部落」である。前項の「ズバリ恋愛講座」の翌月の公開だ。
主人公である沼田曜一が自殺を図ったが、気が付いたらそこは仙人界だった。そこで、左卜全扮する仙人のもとで修行し、やがて部落長の娘・大空真弓と結ばれる。しかし、あることから怒りを買い、仙人界を追放される。十三階段を昇っていくうち落下する沼田。気が付くとそこは病院のベットの上だった。というようなストーリーらしいが(未見のため、あらすじより)、これはどこかで見た気が、いや聞いた気がする。そう、まさしくフォーク・クルセダーズの「帰ってきたヨッパライ」の歌詞と同じではないか。仙人界を天国に換えれば、楽しんだ末、追放され生き返るという展開は同じである。まあ、「帰ってきたヨッパライ」はこの映画が元になっている、という説は聞いたことないけれども。
さて、本作は沼田以外の出演者は全員、仙人界と人間界のキャラの二役を演じている。左卜全、大空真弓の他には、菅原文太、御木本伸介、人見明、三条魔子、魚住純子、小畠絹子、そして丸山明宏(現・美輪明宏)などが出演している。ちなみに丸山はクリーニング屋の小僧役だ。女装シーンもあるらしい。
丸山明宏はこの頃、結構映画に出演しているのだが、新東宝作品はこれ一本のようである。この次の映画出演は7年後のことで、あの「黒蜥蜴」である。

ズバリ恋愛講座

間接的ではあるが、ハンサムタワー全員が出演している作品がもう一つあった。それが「ズバリ恋愛講座」(61年)である。間接的と書いたのは、本作が三話のオムニバス形式だからである。
第一話が「吝嗇」。これで「けちんぼ」と読む。主演は天知茂と小畠絹子。出演者全員が無表情で抑揚のない早口で喋るという演出がなされている。他に新東宝末期のスター松原録郎、星輝美。松原録郎は後に松原光二と改名し「特別機動捜査隊」などで活躍する。伊達正三郎、和田孝、御木本伸介などがチョイ役で顔を見せている。
第二話が「弱気」。菅原文太が眼鏡をかけ、気の弱い青年に扮している。パッと見は文太とは分からないかもしれない。恋人役が池内淳子で、その池内の田舎に文太が訪れたところ、政府の役人と間違えられて接待されるというお話。他に若杉嘉津子、三田泰子、林寛など。宇津井健が村の青年団員、大空真弓がバスガイド、沼田曜一が本物の役人というチョイ役で出演。杉江弘(当時・杉山弘太郎)やハンサムタワー高宮敬二も青年団の若者として一瞬顔をみせる。
第三話が「好色」。結婚詐欺師の沖竜次が、事故に見せかけ花嫁の万里昌代を殺害。次のターゲットに選んだのが三原葉子だったが、しかし沖は彼女に惚れてしまい、詐欺の仲間である魚住純子を殺害する。しかし、実は三原は浅見比呂志と組んで沖をだましていたのだったという話。吉田輝雄が本人役で出演、酔った三原に絡まれる。その三原はクラブで下着姿で踊りまくるが、その客の中に寺島達夫もいる(ようだ)。アラカンこと嵐寛寿郎も牧師の役で出演している。この「好色」は石井輝男が監督で、常連の吉田や三原が出演しているが、実質的な主役は沖竜次で、オムニバスの一編とはいえ沖の主役は珍しい。以前にも書いたが、沖は後に高須賀忍と改名しテレビの柔道物で人気を得た矢先、映画の撮影中に川に流されて非業の死を遂げている。
実はこの作品、大蔵貢社長退陣後の第1作で、役者陣はノーギャラで出演したという。しかし、その健闘むなしくこの4ヵ月後に新東宝は映画の制作を停止することになったのである。

白線秘密地帯/大学の御令嬢

新東宝出身のスターで、現在も活躍している役者の一人が菅原文太である。文太は新東宝からデビューする前に既に東宝の「哀愁の街に霧が降る」(56年)という作品に出演経験があった。その時点ではまだ俳優というわけではなく、モデル時代の58年に新東宝にスカウトされ、石井輝男監督の「白線秘密地帯」(58年)に売春組織の手下の一人として出演。これが公称デビュー作ということになっているようだ。
実はこの「白線秘密地帯」には完全版というのが存在しないらしい。実際は70分くらいの作品だが、原版が欠損しているとのことで、最近CSで公開されたのはその欠損部分をカットした60分くらいのものである。これは前項の短縮版とは意味合いが違うが、古い映画にはこういったやむをえない短縮版というのも結構あるようだ。
で、この文太と吉田輝雄、高宮敬二、寺島達夫の四人でハンサム・タワーとして売り出されたが、四人揃って出演しているのは「男の世界だ」(60年)だけと言われている。しかし、それより以前に「大学の御令嬢」(59年)という作品で四人は共演しているようだ。
この作品は大学にフィリピンからの留学生(大空真弓)がやってきて、女子寮に入る。そのルームメイトが星輝美、万里昌代、瀬戸麗子、九条明子である。寮の向かいには下宿屋があり、そこに住む四人組の学生がハンサム・タワーだ。他にも三ツ矢歌子、川喜多雄二、由利徹、古川録波などが出演している。この頃の三ツ矢歌子や大空真弓はとにかく美人である。
しかし、この作品ソフト化もされていないし、ネットを探っても「見た」という記事が出てこない。CSでも放送されていないようだし、前述の「白線秘密地帯」同様、原版に問題(欠損、消失)があるということだろうか。
ところで、この作品は吉田輝雄の出演が確認できていなかったようなのだ。goo映画のキャスト表では何故か吉田が抜けているし、新東宝に詳しいサイトでも「出演しているばずだが、吉田輝雄?」と確証がないようであった。
しかし、自分の所有する資料に載っている新東宝映画新聞広告集にある「大学の御令嬢」には、ちゃんと吉田輝雄の名もあるし、別のスチール写真を集めた本にも本作の写真があり、学生服姿のハンサムタワー四人が肩を組んでいるショットがある。また、四人と大空真弓や万里昌代が一緒のショットもあり、吉田も出演していたといっていいだろうと思う。
というわけで、ハンサムタワー全員の初共演作は(二作しかないが)、「大学の御令嬢」ということになる。

改題短縮版

唐突だが、改題短縮版の話である。読んで字のごとく、過去の作品を時間短縮、ようするに一部カットし、タイトルを変えて新たに公開したものである。中には元の映画は消失して、短縮版しか現存していないというのもあるようだ。古い作品ほど多く、どこの映画会社でもあったようだが、とりあえず新東宝作品について取り上げてみたい。
古くは49年、まだ文芸作品などを撮っていた頃、太宰治の「グッドバイ」が映画化されている。これを30分ほど短縮したものが「女性操縦法」である。短縮版がいつ公開されたのかは不明だが、新東宝チックなタイトルになっている。
以前ここでも取り上げた、宇津井健の映画デビュー作である「思春の泉」(53年)。東北の農村を舞台のした、まあ真面目な作品だが、これは二度にわたって改題短縮されているようだ。一度目が「女体の泉」。いかにも新東宝なタイトルになり、ポスターもヒロインである左幸子が前面に出てきているものとなっている。ダマそうとする悪意が窺える。二度目が「草を刈る娘」って、これは石坂洋次郎の原作どおりのタイトル。これらもいつ頃の改題か不明だが、61年に日活で同じ小説を原作とした「草を刈る娘」が公開されていて、ややこしい。こちらは吉永小百合、浜田光夫というお馴染みのコンビだ。
以下は「妖かし大蔵新東宝」という本からの抜粋だが、邦画界では、55年頃から新作二本立て興行による競争が始まり、新東宝は制作能力が十分ではないので、旧作品を二本立て、あるいは地方の三本立て併映用に短縮して公開したのである。しかも新作らしく見せかかるために、監督や脚本家にも無断で改題したのだそうだ。他の映画会社はどうだったのかはわからないけれども。
改題作の例を挙げると、「右門捕物帖 帯とけ仏法」→「右門捕物帖 謎の妖艶寺」(58年)、「若さま侍捕物帖 謎の能面屋敷」→「若さま侍捕物帖 恐怖の仮面」(57年)、「歌ごよみ お夏清十郎」→「艶姿恋の乱調子」(57年)、「群狼」→「狼ボスを倒せ」(58年)などがある。
いずれも若干わかりやすいタイトルになっているのが特徴といえようか。