「おヤエ」シリーズ
前項で、ちょっと話題に出た若水ヤエ子。個人的には明確なイメージがなく、丹下キヨ子あたりと同じような印象だったのだが、亡くなったのはまだ45歳のとき(73年)で、思っていたより全然若かったことを今さらながら知った。
この人は東北訛りのズーズー弁で人気を得たようだが、実は千葉県生まれで東北弁は独学だったという。注目されたのは、柳家金語楼の「おトラさん」シリーズに女中お八重役で出演してから。これは東宝の作品だが、スピンオフのような形で日活が彼女を主演にした「おヤエ」シリーズを製作した。
59年の1年間だけだが、8本も作られている。並行して東映の「月光仮面」シリーズにもメガネの助手・カボ子の役で出ており、この年だけで20本以上の映画に出演している。
さて「おヤエ」シリーズだが、タイトルは全て「おヤエの○○」となっており、1「ママさん女中」、2「家つき女中」、3「身替り女中」、4「あんま天国」、5「女中と幽霊」、6「女中の大将」、7「もぐり医者」、8「初恋先生」である。
基本レギュラーは若水だけだが、森川信が全作に違う役で出演。藤村有弘は3作目以降の6本に、他に目立つのは柳沢真一、神戸瓢介、坊屋三郎、武智豊子あたり、日活の脇役では弘松三郎が5本に顔を出している。
1本だけのゲストとしては1作目の清川虹子、2作目の小沢昭一、西村晃、6作目の手塚茂夫、7作目の待田京介といったところである。
基本職業は女中だが、タイトルにもある通り、あんまをやったり、無免許医をやったり、最終作では高校の先生になったりしており、役名も「おヤエ」さんから最終的には若水ヤエ子先生になっている。
陽気な天国/忘れないよ/歌くらべ三羽烏
第1作が「陽気な天国」。近江は原案と製作・総指揮を担当。監督と脚本は古川緑波である。出演は近江、緑波に加えて森繁久弥、三木のり平など。特別出演で作曲家・古賀政男、洋画家・東郷青児、コロムビアトップ・ライト、神楽坂はん子と結構豪華なキャストである。
第2作が「忘れないよ」。近江は監督、製作を担当。基本、近江の作品はコメディだが、本作は多少違うようである。出演は近江の他、宮城まり子、森川信、市村俊幸など。
第3作は「歌くらべ三羽烏」。近江は監督、企画、製作、脚本そして出演と大奮闘。小畑実、青木光一、そして近江と当時の流行歌手三人の共演である。近江の妹役でこの年デビューの浅丘ルリ子や、その1つ下(14歳)由紀さおりの姉・安田祥子、これが映画初出演の若水ヤエ子なども出演している。特別出演として再び古賀政男や東郷青児の娘である東郷たまみが顔をみせている。
この三作すべてに登場するのが三木のり平、城美保子、丹下キヨ子。城美保子の映画出演はこの三作だけらしく、詳細は不明である。丹下キヨ子と若水ヤエ子って何故かイメージがだぶっている。名前の構成が似ているからだろうか(浅丘ルリ子も同じ構成なのだが)。
翌56年、兄・大蔵貢の新東宝社長就任で、近江は活躍の場を新東宝(富士映画)に移すのであった。
006は殺しの番号
新東宝が潰れた後も数本、撮っているのだが、最後となったのは「006は殺しの番号」(65年)という作品である。日活で公開されているが、それは10年ぶりのことで、映画製作をスタートした55年に日活(近江プロ)で三本の映画を撮っており、つまり最初と最後だけは日活だったのである。
さて「006は殺しの番号」だが、日活っぽい人は一人も出ておらず、主演は三沢あけみである。演歌歌手のイメージが強いと思うが、元々は東映ニューフェースの7期生(同期に宮園純子、三島ゆり子など)としてスタートし、まもなく歌手に転向しており 、この頃は既に歌手デビューしていたようである。そして近江映画には、ほとんどといっていいくらい出演している由利徹、南利明という脱線トリオの面々。佐山俊二も出ているので、この頃はメンバーだったのかも(由利、南、佐山の三人だった時期がある)。他にも松村達雄、人見明、(ビクター)とついているので歌手であろう勝三四郎と向島しのぶ、そして近江の娘である近江佳世。この人は「欽ちゃんのどこまでやるの」で見かけたことがあったが、この頃から活動していたのである。CSで放映中の「特別機動捜査隊」でもたまに見かけることがある(まだ10代だと思うが)。
事情は不明だが、これを最後に近江が映画監督をすることはなかったようだが、亡くなるまで大蔵映画副社長という位置にはついていたようである。
オールスター家族対抗歌合戦
この審査員の顔ぶれが今考えると大御所揃いだったと思う。水の江にくわえ、古関裕而、近江俊郎、立川清登、ダン池田という面々。それぞれがどいういう人物か何となく知ってはいたが、近江や水の江が映画に携わっていたということは当時は知らなかった。
司会は萩本欽一で、同時期にやっていた「スター誕生」の審査員と混同する人もいるかも。こちらは松田トシ、阿久悠、都倉俊一、三木たかし、中村泰士、森田公一と松田を除けば、前者より若いメンバーであった。
ちなみに水の江と松田は同じ15年生まれで、松田は健在(96歳)である。そしてダン池田と森田公一は共に北海道の留萌高校出身だ。
アシスアントは朝加真由美で、当初は平仮名表記であった。翌年の「ウルトラマンタロウ」に出演していた時は漢字表記だったように思う。二代目は坂下裕子だが、全然覚えていない。まあ番組自体そんなに見てはいなかったが。84年に萩本が降板するまで、アシスタントはこの二人だけ。審査員の顔ぶれも変わらなかった。
後を継いだのは小川宏で、アシスタントも菅原歌織→榊原郁恵、審査員も古関は降板し、東八郎や木原光知子が加入したようだが、この頃のことは完全に知らない。
85年に立川清登が急死し翌年には番組も終了した。その後、古関は89年、近江は92年に死去。ダンと水の江は共にスキャンダルに巻き込まれ(ダンは自分が原因だが)、晩年は寂しく引き取った。そういえば、東や木原も若くして急死してしまった。
そんな中、朝加真由美は現在も女優として活躍中である。
飛行機雲
映画のほうは、二本しか出ていないようだが、テレビの方は60年代に以外と出ていたようである。ゲストとしては「ザ・ガードマン」「これが青春だ」「でっかい青春」といったメジャーなものにも出ている。
おそらく主演と思われるのがNHKの「飛行機雲」(65年)というドラマ。共演は兄の津川を始め、佐藤英夫、山下洵一郎、月丘夢路の妹である月丘千秋など。まる一年放送されていたようだが、内容は農村を舞台とにしたドラマ、ということ以外はまったく不明である。
記録上最後となっているのが、やはりNHKの「ある女の四季」(68年)というおそらく全四回のドラマ。共演には先月ここで話題になった青山恭二の名がある。ちなみに青山も記録上はこのドラマが最後となっており、ともに引退作となった可能性がある。
ところで、美空ひばりの妹も加藤勢津子という全く同じ名前である。この人は55歳にして加藤ではなく佐藤勢津子として歌手デビューしている。まあ、結婚して佐藤になったのであろう。加藤勢津子で検索すると「もしかして佐藤勢津子」と表示された りするのだ。
江戸の小鼠たち
水の江滝子のプロデュース映画といのは数多くあるわけだが、その中から、「江戸の小鼠たち」(57年)を取り上げてみたい。ようするに鼠小僧次郎吉の話であるが、東映あたりがやりそうな題材だが、日活の作品である。
次郎吉に扮するのは、当時17歳の津川雅彦で、この前年にデビューしたばかりである。本作には父・沢村國太郎、兄・長門裕之も出演しており、さらに実姉である若水みや子も出演という親子四人が共演している唯一の作品である。
というのも、この若水みや子という人、本作含めて3本の映画(いずれも57年)にしか出演しておらず、早々と引退してしまったようだ。彼女のデビュー作である「青春の抗議」では、津川の姉役で出演しており、沢村國太郎も出ているが長門は出ていない(南田洋子はでているけれども)。
ちなみに、長門・津川兄弟の妹である加藤勢津子も60年代に女優として活躍していた。しかし、この親子全員が違う苗字を名乗っているというのも面白い(本名は加藤)。
さて「小鼠」だが、他には芦川いづみ、植村謙二郎、坂東好太郎、宍戸錠、河野秋武、美多川光子などが出演している。出演者の中に長谷川一 男という名があるが、あの長谷川一夫とは別人であろう。昔、ロッテ(だったと思う)に長谷川一夫という選手がいたりしたこともあるので本名ならしょうがないが、芸名だとしたらたいした度胸である。まあ本作以外にこの「長谷川一男」の名は見当たらないのだが。
お転婆三人姉妹 踊る太陽
主役の三人姉妹を演じるのはペギー葉山、芦川いづみ、浅丘ルリ子というメンバー。勝手なイメージではペギー葉山がかなり上な気がしていたが、当時24歳、芦川が22歳、浅丘が17歳(上から大学生、バレリーナ、高校生)と役柄とさほど替わらない年齢であった。三人の母親役が轟由起子で、その相手役となるのがなんと安部徹。しかも安部の役名は轟だったりして、ややこしい。やがて結婚して轟になったという意味だろうか。
他の出演者だが、石原裕次郎、フランキー堺、岡田真澄、津川雅彦、青山恭二、柳沢真一、ジョージ川口、高英男など。映画ではいつも悪役の安部徹も高英男もここではいい人?であるようだ。ジョージ川口とフランキー、津川、青山はバンドのメンバー(ジョージは本職だが)という設定、石原裕次郎は浅丘ルリ子のボーイフレンドである。ちなみに前項の「火の鳥」で仲代達矢の演じた役は元々は裕次郎の予定だったとか。しかし、監督の井上が「イメージに合わん」とつっぱねったそうである(もちろんブレイクする前の話)。
そして特別出演だが、井上の妻となる月丘夢路をはじめ、南田洋子、北原三枝、新珠三千代、三橋達也、大坂志郎、葉山良二、丹下キヨ子などが顔を見せている。そして出番は似たような感じでも、クレジットなしなのが、杉幸彦、稲垣美穂子、植村謙二郎、小林重四郎、天草四郎、山田禅二など。植村、小林、天草などは戦前から活躍しているのにもかかわらずである。まあ、ネームバリューは先にあげたメンバーより低いかもしれんが。
井上梅次といえば、アクションのイメージだったのだが、この頃はこういったオールスター的な作品もよく撮っていたようだ。
火の鳥(56年)
出演は月丘夢路、大坂志郎、中原早苗、山岡久乃、市村俊幸らに加え、三橋達也、仲代達矢のタツヤコンビなど。三橋、仲代のタツヤコンビは共に東宝のイメージが強いが、三橋は54年から58年までは日活に所属しており、主演作も結構あったりする。
一方の仲代だが、この作品が実質的なデビュー作である。「七人の侍」でセリフのない歩いている浪人を俳優座同期の宇津井健とともにやったのは有名だが、その後は主に俳優座で舞台に出ていたのである。その舞台を見た月丘夢路の推薦で本作に出演することになったという。月丘の相手役という仲代初の大役は評判になり、他社にも招かれるようになる。実は仲代は一度も映画会社に所属したことはないのだが、断然東宝作品が多いため東宝俳優のイメージが強いのである。ちなみに、日活作品には本作以降出演していないようである。
本作は映画会社が舞台となっており、友情出演として本人(と思われる)役で、北原三枝、長門裕之、芦川いづみが登場。またその北原嬢の誕生パーティのシーンで、浅丘ルリ子、岡田真澄、フランキー堺、葉山良二、名和宏、二本柳寛、上野山功一、稲垣美穂子が、また三國連太郎や川島雄三監督などがいずれもクレジットなしで顔を見せているという。
本作の監督は、川島ではなく井上梅次である。井上はこの翌年、本作の主演である月丘夢路と結婚している。井上は日活監督のイメージが強い気がするのだが、日活で活躍したのは55年~60年の間のみで、フリーとなった以降は日活では撮っていないようだ。その井上もつい先月、86歳で亡くなっている。
東京バカ踊り
わずか50分程度の作品だが、出演は南田洋子、フランキー堺に加え、「からたち日記」島倉千代子、「憧れのハワイ航路」岡晴夫という歌手コンビ、そして水の江滝子がプロデューサーではなく、出演者(役名はルパンの金ちゃん)として参加している。
水の江はこの年、三本の映画に出演しているが、それ以降は日活ではプロデューサー業に徹しおり、次の映画出演は74年のことになる。ちなみにその次は94年で最後の映画出演となっている。
ところで当時、実際に「東京バカ踊り」なる踊りが流行っていたかどうかはわからなかった。ただ翌年に「高円寺バカ踊り」が開催(現在は阿波踊り)されたりしているところを見ると何かしらあったのかも。島倉、岡のコンビで「東京バカ踊り」という歌も歌っている。
実はこの作品には浅丘ルリ子も顔を出しているらしく役柄が「バカ踊りを踊る人」だそうである。他にも「特別出演」として、月丘夢路、大坂志郎、宍戸錠、三島耕、小園蓉子、柳谷寛なども顔をだしているらしい。要するにワンカットのエキストラ的な出演のようである。
水の江滝子だが、何故か何年か前に亡くなっていたようなイメージがあったのだが、つい昨年のことであった。それも森繁久弥の亡くなった6日後の話で、それほど話題にならなかったような気がするのだが、私が知らなかっただけか。94年に水の江は生前葬というのをやっており(前述のイメージはこのためかも)、その葬儀委員長が森繁だったという。ちなみに享年森繁96歳、水の江94歳という長寿であった。
若い爪あと/十代の狼
和泉雅子は同じアパートに住む二枚目の歯科医(波多野憲)と知り合いになり、ある日一緒に映画を見に行く。帰ってくると同じアパ-トに住む女給(南風洋子)が殺されるという事件が起きていた。歯科医はその女給と関係があったことがわかり、警察は彼を疑う。雅子も。彼には自分と映画を見ていたというアリバイがあるはずだが、途中で席をはずしていたことを思い出し、真実を確かめようとするが…。というようなストーリー。
真犯人がいるかと思わせ、結局彼が犯人だったというパターンである。波多野憲は以前ちょこっと触れたことがあるが、活動期間は長いわりに出演本数はそれほど多くない役者である。その波多野を追い回す部長刑事役が我らが?青山恭二である。他に山岡久乃、松尾嘉代、井上昭文、草薙幸二郎、上野山功一、杉江弘など。
ほんと青山恭二って、刑事役ばかりやっている印象だが、もちろん違うときもある。「十代の狼」(60年)という作品では逆に愚連隊の役をやっている。佐野浅夫や垂水悟郎が刑事役で、前述の波多野憲も逆に刑事役である。ただし刑事Aというちゃんとした役名もないキャラだったようだ。吉行和子が青山の彼女役で、他にも梅野泰靖、内藤武敏、大滝秀治、杉山俊夫など。
主演作品の数は多いのだが、そのほとんどがビデオ化、DVD化されていないため、世間的には忘れられた存在になってしまったのが青山恭二なのである。まあ、助演としては渡り鳥シリーズなど小林旭の主演作品にけっこう顔を出しているのだけれども。