黒帯探偵/少年X
まずは「黒帯探偵」(58年)。まあ内容は全くわからないが、単純に考えると柔道技を使う探偵が活躍する話なのだろう。主演は松本朝夫。新東宝スターレット1期生(同期に天知茂、高島忠夫)だが、新東宝ではおそらく主役は1本もなかったはずである。しかし、テレビの方ではこの50年代に意外と主演作があったことを発見。だが、ほとんどが単発ドラマで連続ものは本作と「白い桟橋」というドラマくらいだろうか。
共演に設楽幸嗣、沢阿由美など。設楽は当時12歳。5歳の頃から映画に出演しており、本作の翌年には小津安二郎の「お早よう」などに出演するなど、名子役として名高い存在であった。やがて音大に進み、役者の世界からフェードアウトしている。現在は音楽家として、コンサートを開いたり、作曲をしたりと精力的に活躍しているようである。沢阿由美は詳細不明だが、60年に1本だけ映画に出演しており(「美しき抵抗」)、吉永小百合の姉役を演じている。
もう一つは「少年X」(59年)。こちらは少年向け科学冒険ドラマということだが、わずか4回の番組を覚えている人はそうそういないだろう。主演はこちらも名子役である当時15歳の山手弘。「三日月童子」「百面童子」など主に東映の少年向け時代劇で活躍していた。「少年探偵団」シリーズでは、小林少年に扮している。彼も高校卒業とともに引退したようである。他に山内明、「ねずみ男」の声で知られる大塚周夫など。ちなみに山内の弟・久は脚本家、もう一人の弟・正は作曲家(「ザ・ガードマン」のテーマなど)である。
小天狗小太郎/龍巻小天狗
前項の続きである。
小天狗の3本目は「小天狗小太郎」(60年)である。内容は月形流の使い手を、その家来が活躍するというものらしい。主演はちょっと前に取り上げた「左近右近」でも主演だった藤間城太郎である。先にも述べたが、藤間はこの作品を最後に歌舞伎界へ転向していく。他の出演者だが、千葉信男、若柳敏三郎、浮田佐武郎など、それなりに有名な役者が並んでいる。そして岩下志麻。当時19歳だが、「バス通り裏」を始めとして、数本のドラマ出演歴があった。ちなみに、この60年に松竹に入社しており、看板女優へと成長していく。主題歌は三橋美智也で、「怪傑ハリマオ」は有名だと思うが、こちらの主題歌も担当していたのである。
そして4本目はやはり同じ60年の「龍巻小天狗」である。豊臣秀頼の子・小太郎が幻術を使って悪を退治するといったお話のようだ。こちらも小太郎なのでややこしい。二つの番組を混同している人も多いのではないだろうか。幻術部分はカメラの高速回転や逆回転・ストップモーションなどで表現していたという。
主演は当時14歳の高峰圭二。後のウルトラマンAである。この二年後には「真 田三銃士」で猿飛佐助を演じている。他の出演者だが、長谷川みのる、中林真知子、男城輝、柴田房夫など全く知らない名が並んでいる。
「小天狗」ブーム?はこの年で終了したようだが、翌年には「牛若天狗いざ見参」が始まっている。
南蛮小天狗/ハリマの小天狗
60年前後の少年向け時代劇は何故か似ているタイトルが多い。
中でも「小天狗」と名のつく番組が4つもあったりする。
その1番目が「南蛮小天狗」(59年)。18時15分~45分の黄金時間帯に全18回の放送である。山田長政の遺児、一郎丸の数奇な運命を描くというお話らしい。出演は岩井礼一郎、カトウハジメ、上田昌利など知らない名前が続く中に、藤田まこと、シリア・ポール、吉田豊明などの名前もある。シリア・ポールは当時13歳。「モコ・ビーバー・オリーブ」のオリーブとえばわかる人もいるかもしれない。吉田豊明は関西地方での「赤胴鈴之助」(57年)を演じており、後に「特別機動捜査隊」に石原刑事役でレギュラー出演する。その「特捜隊」にたまにゲスト出ていたポール聖名子はシリアの姉である。
この作品、「少年サンデー」の創刊号にコミカライズ作品(絵・益子かつみ)が掲載されている。ちなみに「少年マガジン」の創刊号には、前項の「天兵童子」(絵・矢野ひろし)、数項前の「左近右近」(絵・忍一兵)が掲載されている。
さて、2番目は「ハリマの小天狗」(60年)。こちらも全18回の放送だったようだが、15分番組ということで実質9回という感じである。出演者には本松一成、高橋芙美子、野々村圭、日高久と知らない名前が並んでいるが、原作は日活や東映の映画脚本で知られる松浦健郎で、脚本にやはり日活映画を多く手がけた中西隆三や「遠山の金さん」や「暴れん坊将軍」の今村文人の名がある。ちなみに初の局制作(ABC)の番組だったらしい。脚本家の名前だけみると面白そうである。
残る二つについては、また次回。
天兵童子
この「天兵童子」は二度テレビ化されていて、最初が前項で触れたとおり59年。主演は尾上左近、当時13歳で後の辰之助(初代)である。他に北村和夫や稲葉義男、そして三田佳子などが出演していた。主演の尾上左近は87年に40才の若さで亡くなっている。
二度目は64年。前作は20時30分からという時間帯の放送だったようだが、こちらは18時15分という少年向け時間帯の放送である。主演は当時16歳の宮土尚治、後の桜木健一である。共演は当時15歳の土田早苗、同じく15歳の二瓶康一(後の火野正平)と後に有名になる顔ぶれが揃っていた。それに加えて既に人気を得ていた松山容子、そして東映時代劇のスターだった伏見扇太郎などが出演している。
ちなみにこの作品、55年に映画化(三部作)されているが、その主演が伏見扇太郎だったのである。50年代後半は大スターだった伏見だが、病気になったり、彼の活躍舞台であった少年向け娯楽版といわれる作品が製作されなくなったこともあり、この頃には出演本数も激減し、出ても脇役扱いであった。テレビへの出演もほとんどなかったよう で、ある意味貴重な作品かもしれない。68年頃には引退してしまったようだが、86年に一度だけ「玄海つれづれ節」という映画に出演している。
死亡説、生存説色々出ているが、やはり亡くなった(しかも自殺)というのが有力なようだ。
ヒマラヤ天兵
前項で名前を出した中から「ヒマラヤ天兵」(59年)を取り上げてみたい。これも当時の子供番組タイム18時15分~45分に放送されていた番組だ。
個人的には、タイトルを知っていた程度で、内容も全然知らないが、興味を引いたのは出演者に三田佳子の名があることだ。当時は18歳の高校生だが、ヒロイン役だったようである。この作品がデビュー作という記述もあるが、三田はこの番組が始まる直前まで放送されていた「天兵童子」(59年)という番組にも出演してたようで、デビュー作ではないはずだ(中学生くらいからテレビには出ていたらしい)。まあ、タイトルが似ていてややこしいが、「天兵童子」は前項と同じ吉川英治が原作、「ヒマラヤ天兵」は「めくらのお市」などで知られる棚下照生(つまりマンガ)が原作である。そういえば、「天馬天平」なんていうのもあった。
主演は松本松之助。三田と同じ18歳だったらしいが、現在は日本舞踊市山流の市山松翁(三代目)として活躍しているようだ。他に梶哲也、矢代和雄、倉田爽平など。梶は声優としてのイメージが強いが、内海賢二、森山周一郎、柴田秀勝などと同様で当時は顔出し出演も多かった。
ところで当時は何故か「ヒマラヤの魔王」とか「ヒマラヤ無宿」とか「ヒマラヤ」がタイトルにつく映画などが結構あった。ブームだったのであろうか。
「ヒマラヤ天兵」もヒマラヤ、つまりチベットやブータンが舞台ってことはないだろうし、ヒマラヤから来た男とかいう設定なのだろうか。検索して出てきたメンコの絵柄は派手な装束に「まぼろし探偵」のような仮面をかぶった怪しげな人物。彼がヒマラヤ天兵なのだろうか。原作も見たことがないからわからない。
さて、翌年高校を卒業すると同時に、断り続けていたという映画デビューする。二年間だけ存在した第二東映(ニュー東映)からデビューした数少ない女優の一人となっている。
左近右近
前項で話題が出た内田良平だが、70年代のあたりのアクション物よ時代劇にはゲストにしろレギュラーにしろ、必ずといっていいほど顔を見せていたようなイメージがある。
映画の方は52年のデビューらしいが、テレビの方はいつごろから出ていたのか調べてみた。その結果、最初に名前が出てきたのが「左近右近」(59年)という番組である。もちろん、これが本当に初めてかどうかは不明である。
で、この「左近右近」だが、主な出演者以外の情報は全くないが、どうやら原作は吉川英治だと思われる(同名の小説がある)。
出演者として名前が挙がっているのが、立花伸介、藤間城太郎、水原英美、森野五郎、田中信夫、園井啓介、天津敏、そして内田良平である。
園井啓介や天津敏あたりは説明不要(天津はやはり悪役だろうか)だろう。田中信夫は「コンバット」のサンダース軍曹の中の人(声優)である。
主役と予想される二人についてだが、まず立花伸介はこの58~60年ごろ東映時代劇映画に数本に出演している程度で、後はここで取り上げた「江戸忍法帖」で早々と死ぬ役をやっていた。60年代後半以降は不明である。もう一人の藤間城太郎だが、名前のとおり藤間紫の弟である。この二年後には歌舞伎役者に転向し、今は中村時蔵(6代目)となっているようだ。ちなみに藤田まことの父は藤間林太郎である。
放送時間帯が当時の子供向け番組タイムである18時15分~45分なので、少年向け時代劇なのだろう。ちなみに同時期にこの時間帯で放送されていた番組には「まぼろし探偵」「実写版鉄腕アトム」「矢車剣之助」「七色仮面」「ヒマラヤ天兵」など有名どころも沢山ある。しかし、ネット上ではこの番組について触れている記事は一個も発見できなかった。
ところで、「左近右近」より「右近左近」の方が語呂がいいと思うのだがどうだろうか。
戦国群盗伝(映画版)
前述の「戦国群盗伝」には映画版(59年)が存在する。というより映画の方がずっと有名だろう。テレビ版はずっと行方不明だったわけだし。
テレビ版は関心するくらい手間もヒマもかけて作られていると思うのだが、キャストは微妙な気もする。もちろん内田良平、丘さとみ、名和宏、高原駿雄、小松方正などそれなりの人も出ているが、映画版に比べるとショボく感じてしまう。
対比させてみよう(カッコ内がテレビ版)。主役の太郎次郎兄弟に鶴田浩二(矢野圭二)、平田昭彦(山波宏)、その父である左衛門に志村喬(北沢彪)、小雪に上原美佐(二本柳敏恵)、田鶴に司葉子(丘さとみ)、治部資長に千秋実(高原駿雄)、他には梵天の田島義文(木田三千雄)、岩松の堺左千夫(瑳川哲郎)、抗兵衛の小杉義男(渡辺高光)、そして甲斐六郎に三船敏郎(内田良平)という当時の東宝スターがずらり揃っている。映画版の方は他にも悪役で河津清三郎や、チョイ役で中丸忠雄なんかも出演している。
テレビ版の矢野、山波は見たところ25前後(正確なプロフィールは共に不明)といった感じだが、鶴田は35歳、平田は32歳であった。鶴田浩二と内田良平は共に24年生まれなのだが、当時の内田は年齢をサバよんでいた。65年の時点で「34歳、独身」としていたらしいが、実は41歳で内妻が二人いたことがバレてしまっている。
監督は「社長シリーズ」や「若大将シリーズ」などを撮っている杉江敏男だが、黒澤明が脚色として名を連ねている。
さらにこの作品、戦前の37年にも河原崎長十郎や中村翫右衛門などの出演で映画化されており、結構歴史があったりするのである。
戦国群盗伝
前項で大辻三郎の話題が出たが、現在CSで放送中の「戦国群盗伝」(64年)でその顔を見ることができる。
この番組は、最近国際放映でそのフィルムが発見されたという三つの番組のうちの一つ(残りは「無法松の一生」「第7の男」)だ。おそらく、四十数年ぶりに陽の目を見ることになったと思われる。
内田良平、名和宏、丘さとみといった当時のスター俳優も出ているが、主役となる太郎次郎兄弟を演じているのが矢野圭二、山波宏である。どちらも聞かない名前だと思うが、だいたい60年代に活躍していた若者である。
矢野圭二(圭一)は、この後「柔一筋」「続・柔」といった柔道物に出演、そして「ジャングルプリンス」という日本版ターザンっぽい番組でも主役を演じているが、その後は不明である。山波宏は東映ニューフェースの第6期生であるが、東映はもちろん映画自体の出演記録が見あたらない。テレビの方でも、この「戦国群盗伝」がそのキャリアで一番大きい役だったと思われる。この後はたまに時代劇などにゲストで出ていたりはしていたようだ。
「特別機動捜査隊」の「大都会」という前後編エピソードで、犯人が乗っているはずの電車の中、特捜隊は顔がわからないので二人の若い男をマークする。で、その犯人だった方を演じたのが山波で、もう一人が「特別出演」の千葉真一だったのである。実は千葉も東映ニューフェースの6期生、つまり二人は同期だったのである。この時の刑事役の一人である森山周一郎は「戦国群盗伝」では第1話にゲスト出演し、あっさり死んでいる。ちなみに東映ニューフェース6期には他に亀石征一郎、倉丘伸太郎、太地喜和子、茅島成美、真山知子らがいる。
話を「戦国群盗伝」に戻すが、レギュラーの一人に瑳川哲郎がいる。当時はまだまだ無名であり、あまり存在感もなく、ぱっと見て瑳川だとは気付かないかもしれない。これを見て、後の活躍が想像できた人はまずいないだろう。
番組はまだ序盤なので、興味のある人は見てみてはいかがだろう。
「おトラさん」シリーズ その2
前項の続きである。58年度の「おトラさん」シリーズは次の4作品。3「花ざかりおトラさん」、4「おトラさんのお化け騒動」、5「おトラさんの公休日」、6「おトラさん大繁昌」である。
レギュラー陣は不動なので、ゲストに目を向けてみると、3作目は2作目と同じ林家三平、藤尾純に加え坪内美詠子など。4作目は左卜全、脱線トリオ(由利徹、南利明、八波むと志)が登場。ちなみに脱線トリオは高校生(当時30代)の役である。5作目にも脱線トリオは高校生として、加えてミヤコ蝶々と南都雄二の夫婦コンビ(実はこの年に離婚していた)が登場。最後となる6作目には河内桃子、藤間紫らの女優陣、そしてまたまた脱線トリオ、といっても由利と南だけで、八波の替わりのような形で渥美清が出演している。
八波むと志は自分が物心ついた時には、すでにこの世になかったので(64年没)、よくは知らないのだが、単独での仕事も結構あって(要するにうれていた)出演できなかったようだ。近江俊郎の映画でも八波だけ出ていない作品が幾つかあったと思う。コント55号などが所属する浅井企画の社長・浅井良二は彼のマネージャーだったそうである。ちなみに渥美清が谷幹一、関敬六とスリーポケッツを結成するのは翌59年のことだ。
ところで、このシリーズ1作目は「原作・西川辰美」となっているが、2作目以降は西川は「原案」となり、原作は有崎勉となっている。これは金語楼のペンネームである。
本シリーズに女中お豆役で出演している小桜京子は金語楼の姪で、その夫は初代・引田天功である(後に離婚)。娘は声優の引田有美。アイドルグループ少女隊の一員となる引田とも子は天功の後妻の娘で、彼女も一時期声優活動を行っており(現在は引退)、異母姉妹で声優だったということになる。
「おトラさん」シリーズ
前項の若水ヤエ子演じる「おヤエ」は、元々柳家金語楼の「おトラさん」に登場していたキャラなので、ついでに「おトラさん」シリーズ(57~58年)を取り上げることにする。
原作は西川辰美の四コママンガ。「サザエさん」の登場人物はみんな海関係だが、本作の舞台となる日野江家の面々は主人の牛三(有島一郎)、その妻・馬子(水の也清美)、娘・トリ江(川田孝子)、息子・タツオ(日吉としやす)、そして女中でありながら主のような存在のおトラ(柳家金語楼)という十二支関係のネーミングとなっている。
そして女中仲間のお豆(子桜京子)やおヤエ(若水ヤエ子)などに加え、平凡太郎、柳沢真一、大辻三郎、何故か当時の人気野球解説者である小西得郎などがレギュラーであった。
若水が映画版「月光仮面」のレギュラーだったのは、前項でも書いたが、日吉としやすはテレビ版「月光仮面」のレギュラーだった子役である(成長してからも「ガッツ・ジュン」や「がんばれレッド・ピッキーズ」などで活躍)。
大辻三郎は50年代後半から60年代中盤に活躍していたようで、若水との共演も多い。しかし彼の情報は皆無であり、あの大辻伺郎と関係があるのかどうかは不明である。伊達三郎と伊達正三郎、渡辺篤と渡辺篤史みたいに全く関係がないのに名前(芸名)が似ているケースもある。顔を見る限り似ているようにも見えるのだが…。伺郎は大辻司郎(父、同じ名前でややこしい)の次男とプロフィールにはあるので、三郎と兄弟ということも十分あるが、断定はできない。
57年は1・「おトラさん」と2・「おトラさんのホームラン」の2本。1作目ではおトラの初恋相手の回想シーンで登場するのがなんと天津敏だったりする。セリフもないようだ。二作目にはゲストで林家三平や藤尾純が登場。ちなみに藤尾純は中原早苗の父である。「女優魂・中原早苗」というインタビュー本では、確か藤尾とは会ったこともないように書かれていた(気がする)が、まあ複雑だったようである。
長くなったので、続く。