アナタハン その2
前項の続きである。「アナタハン」(53年)は、わりあい現実にそったストーリーということだが、登場人物は30数人はさすがに多いので、10数人にということになったようだ。
主演は前項にも書いたがSTD出身で当時19歳の根岸明美で、この後「魔子恐るべし」とか、現状は封印扱いの「獣人雪男」などでも肉感的な役を演じることになる。まあ個人的に彼女を認識した時には、ちょっと口の大きなオバサンという感じになっていたような。
で、その「夫」として島で暮らしていた男を演じるのが菅沼正である。菅沼正といえば「特別機動捜査隊」において中山昭二演じる藤島班で南川部長刑事を演じていた役者だ。初期の藤島班はたまにしか登場しないこともありメンバーがコロコロ変わっていたのだが、菅沼だけはかならず出演していた。中山はデビュー作で菅沼と共演していたのである。詳しいプロフィールは不明だが、主に東映の脇役(元々刑事役が多かった)として活躍していたが、68年に「特捜隊」から姿を消し、映画出演も68年が最後となっているようだ。
共演の男優陣で有名どころはその中山昭二と近藤宏くらいであろうか。後は大映の脇役として名前はよく見かける藤川準、それ以外は歌舞伎役者である沢村紀三郎、尾上菊次、坂東鶴右衛門など、映画はこれ1作という人も多い。
ちなみに中山は近藤に殺され、近藤は菅沼に殺され、菅沼は藤川に殺される。というように、死ぬ役なのは(映画、テレビ)の俳優として長く活躍する面々ばかりのようだ。
監督、脚本はスタンバーグだが、音楽は伊福部昭、特撮は円谷英二やピープロで活躍する渡辺善夫などが担当している。
アナタハン/アナタハン島の真相はこれだ!
44年米軍の攻撃を受けた軍に徴用された船3隻の乗組員たちが太平洋のアナタハン島に流れ着く。そこには日本のヤシ農園の出張所があり、その所長と部下の妻がいた(夫は他の島へ行き帰れなくなっていた)。その結果、そこには日本人ばかり32人の男と1人の女が住むことになった。そして、たった1人の女を巡って争いが起こるのだった。
終戦を迎えても、そのことを誰も信じず(横井さんや小野田さんと同じパターン)、やっと六年後の51年に生き残りは帰国するが男は19人になっていたというような事件。
この事件は、国内で大きな話題を呼び、53年に新大都映画より「アナタハン島の真相はこれだ!」が公開されたが、この作品には張本人である比嘉和子自身が出演した。これは、男たちの殺し合いを中心に描かれたものだったようだが、これに来日中だったハリウッドの監督ジョセフ・フォン・スタンバーグが興味を持ち、新たに映画化したのが「アナタハン」だった。これも同じ53年に公開されたこともあって、さほどヒットはしなかったようである。
監督はスタンバーグだったが、日本映画として制作されている。俳優もスタンバーグ自身で選び、和子(本作では恵子)役には日劇ダンシングチームにいた根岸明美が選ばれ、男たちの一人として当時はバレエダンサーだった中山昭二も選ばれたのだった。
前に取り上げた新東宝の「女真珠王の復讐」(55年)にも、この事件をモデルのしたような個所がある。
そういえば、現在公開中の「東京島」という作品も、あらすじを見たかぎりではこの事件がモデルになっていると思われる。
ところで、比嘉和子ってそんなに男を惑わすような容姿だったのか、たまたま一人しかいなかったから奪い合いになったのか、不鮮明な写真しか見たことがないのでよくわからない。長くなったので、続く。
風雲新撰組
これらについては、あまり書くことがないので、伊達が新東宝で最後に出演(公開)した作品を探すと「風雲新撰組」(61年)だったようである。
この作品よくよく調べるとフジテレビで放映中だった30分ドラマ「風雲新撰組 近藤勇」の再編集であることがわかった。テレビといっても35ミリで撮影されており、主演の嵐寛寿郎も35ミリだから引き受けたということだったようだ。
近藤勇がそのアラカン(当時58歳)で、土方歳三が龍崎一郎(当時49歳)、芹沢鴨が並木一路(当時49歳)だ。実際の近藤と土方は33~34歳でなくなっているので、随分老けた新撰組である。沖田総司は杉山弘太郎(後に杉江弘)で、桂小五郎が伊達正三郎、西郷隆盛が舟橋元、坂本竜馬が沖竜次(後に高須賀忍)である。他に高木二朗、明智十三郎、市川小太夫、魚住純子、松浦浪路、小畠絹子など。
ドラマの方は4月から6月まで放送されているが、映画は5月に公開されているので、おそらく途中までだったと思われる。残りも映画化する予定だったのかもしれないが、新東宝がこの5月を最後に映画制作を停止し、倒産してしまったので、後半は制作されることなく終わったのだと思われる。
ところで「風雲新撰組」で検索すると同タイトルのゲーム情報ばかりでてくるので注意しよう。
鋼鉄の巨人(スーパージャイアンツ)
伊達はバイト中に知り合った丹波哲郎に推められ新東宝第5期ニューフェースに応募して合格し、館正三郎の芸名で57年にデビューした。正三郎は丹波の本名から。Wikiでは「舘」になっているが、本名(大館義保)からも「館」が正しいのではないだろうか。
新東宝では時代劇が多かったが、デビュー作はかの有名な「鋼鉄の巨人(スーパージャイアンツ)」(57年)である。もちろん主演は宇津井健で、ヒロインというかシスター役がつい先日亡くなった池内淳子であった。
池内は本作(正確には二週間後に公開された「続鋼鉄の巨人」)を最後に柳沢真一と結婚し、引退したのである。しかし翌年スピード離婚し、女優に復帰したが大蔵貢には冷遇された、と いう話は以前にも書いたと思う。関係ないが黒柳徹子は幼稚園時代の同級生だったそうだ。
話を戻すが本作には刑事役で中山昭二も出演しており、伊達は「特別機動捜査隊」でも中山の部下を演じているが、デビュー作で早くも共演していたのである。
他に御木本伸介や鮎川浩は秘密結社アトム団の団員で、デビューしたばかりの伊達や浅見比呂志は何の役だか不明である。しかし、この2ヵ月後のシリーズ3、4作目の前後編では、伊達も浅見もそれなりに目立つ役が与えらるようになっている。結局、このシリーズには伊達は館正三郎名義で全9作中6作に出演している。
暁の翼/勝利と敗北
その第1作となるのが「暁の翼」(60年)。航空自衛隊のジェット機が遭難する話で、主演は遭難する菅原謙次と友田輝。菅原は翌61年からフリーとなり、「七人の刑事」に出演する。友田は何度か触れたことがあるが、映画だけでなくテレビでも主役級の活躍をするが、五年程度で姿を消してしまった役者である。他の出演者もほぼ自衛隊員の役で、高松英郎、三田村元、先日亡くなった早川雄三、後に自殺してしまう丸井太郎、幹部役であろう藤田進、そして村上不二夫も隊員役のようだ。菅原の妻役で左幸子、息子役に「天国と地獄」で誘拐される島津雅彦など。
もう一本は井上梅次監督の「勝利と敗北」(60年)。当時の実際のチャンピオンも出演するボクシング映画。ボクサーを演じるのが川口浩、本郷功次郎の「秘密指令883」コンビと前述の三田村元。三田村は57年のミスター平凡(61年は倉石功)で、70年代前半くらいまでは見かけられた役者である。他に山村聡、安部徹、船越英二、高松英郎、友田輝、女優陣は野添ひとみ、若尾文子、新珠三千代(東宝)など結構豪華な顔ぶれである。また、藤巻潤(当時・藤巻公義)もボクサー役で出演、江波杏子がノンクレジットでホステス役を演じている。引退直後の白井義男や解説の郡司信夫など本物のボクシング関係者も多く出演している。
藤巻はこの作品をきっかけしてに、同じ井上梅次監督の「三人の顔役」では、野添ひとみの恋人役に抜擢されたという。村上不二夫は何の役かはよくわからないが(ヤクザかな?)とにかく出演している。
重臣と青年将校 陸海軍流血史
話は戻るのだが、村上不二夫が三村俊夫だった時代の新東宝映画から「重臣と青年将校 陸海軍流血史」(58年)を取り上げてみたい。
エログロ路線とは別に、「明治天皇と日露大戦争」(57年)がヒットしたこともあり、当時の新東宝はオールスターキャストによる戦争史実大作を何本か送り出している。
「陸海軍流血史」も張作霖爆殺事件から五・一五事件、二・二六事件を描いた作品である。まあ80分ほどの作品なので大作とは言えないと思うが。
出演は宇津井健、細川俊夫、中山昭二、沼田曜一、丹波哲郎、松本朝夫、御木本伸介、伊達正三郎、浅見比呂志、杉山弘太郎、そして三村俊夫といった若手に加え林寛、龍崎一郎、小林重四郎など男ばかりだが、三ツ矢歌子と高倉みゆきが紅二点で顔を見せている。新東宝の主立った若手で出演していないのは高島忠夫と天知茂くらいであろうか。
登場人物はほぼ事実に基づいており、細川俊夫(橋本欣五郎中佐)、中山昭二(藤井少佐)、丹波哲郎は思想家の大川周明役で若手役者陣は二・二六事件の青年将校役が多く、宇津井健(安藤輝三大尉)、松本朝夫(野中四郎大尉)、御木本伸介(磯部浅一元主計)、浅見比呂志(林八郎少尉)、三村俊夫(栗原安秀中尉)といったところで、いずれも事件後に処刑されている(野中は自決)。
ちなみに沼田曜一は両事件の間に起こった、永田鉄山陸軍省事務局長を相沢三郎中佐が斬殺するという事件(相沢事件)の相沢を演じており、出番は数分のようだ。
毎度のことながら未見なのだが、やはり青年将校たちの処刑シーンというのはあるのだろうか。となると、宇津井=スーパージャイアンツ、浅見=ハンマーキッド(知っている人はほとんどいないだろうが)、三村=遊星王子が揃って銃殺されるのである。特に死なない男・宇津井が処刑されるというのも非常に珍しい気がする。
ひとつ付け加えると、宇津井、御木本、天知茂は五・一五事件(32年)の前年、つまり31年の生まれである。
特別機動捜査隊 「女でない女」
今回はまた「特別機動捜査隊」からの特別編である。現在放映中の364話「女でない女」から藤島班が一年数ヶ月(約70回)ぶりに、何事もなかったかのように復活した。
これは藤島主任演じる中山昭二が「ウルトラセブン」にキリヤマ隊長として出演していたためである。同様に藤島班のメンバー笠原刑事役の伊達正三郎も「ジャイアントロボ」に東支部長役で出演していたため番組を抜けていた。その代わりかどうか知らんが、「セブン」でマナベ参謀を演じた宮川洋一が資料にもなかった田宮刑事として二度だけ出演したり、ソガ隊員の阿知波信介がチンピラ役で出演したりしている。
で、今回はその宮川がちょっと情けない役で出演したほか池田昌子、野沢雅子の声優コンビ、「999」で言えばメーテルと鉄郎のコンビがゲストで出演していた。
注目は、毎回のように夜の酒場で歌う歌手である。今回はオカマバーで歌う石川竜二であった(オカマ役ではない)。石川竜二といってもピンとこないかもしれないが、「忍者部隊月光」で水木襄(月光)、山口暁(名月)とともに月輪役で全130回にフル出演した俳優である。
実は「特捜隊」には「月光」のメンバーがたびたび出演している。水木は水木刑事として500話くらいからレギュラー入りするし、山口も何度か刑事役(最終回にも神谷刑事として)で登場する。他にも浅沼創一(新月)、加川淳子(銀月)、子役の児島康則(半月)などもゲストで出演しており、石川も何度も出演しているが、犯人でも容疑者でもないチョイ役が多かった。その石川が「歌手」としてチラッと歌っただけで、エンディングでピンでクレジットされたのである。まあ俳優が歌を出すのは珍しいことではないが、彼もレコードを出したのであろうか。まあ調べてもわからなかったのだが、売れなかったことは確かだろう。
水木や山口が特撮番組などで活躍する中、石川はいつの間にか姿を消してしまったようである。まあ、水木も「特捜隊」を最後に一線からしりぞき、山口も86年に41歳の若さで急逝する。石川も既に故人のようだが、いつ頃亡くなったのかは不明である。水木襄も同じように不明だったりするのだけれども。
ところで「忍者部隊月光」といえば中山昭二も第1話や劇場版にあけぼの機関長として出演している。最近話題にした松原光二も「幻仮面」という敵役で出演したりしている。
天国はどこだ/検事とその妹
これは主演が木村功と津島恵子という、あの「七人の侍」(54年)でも“いい仲”になったコンビである。このあまり知られていないだろう新東宝作品でもカップルを演じていたのである。他の出演者も加藤嘉、西村晃、織本順吉などで、沼田曜一や田原知佐子(現・原知佐子)、三村などが出ていなかったら新東宝感のないメンツである。木村は正義感の強いヤクザで、悪人ヤクザの親分が加藤嘉で、西村晃や「事件記者」の清村耕次、そして三村などはその手下役だったようである。
もう一本が「検事とその妹」(56年)。これは35年に岡譲司、原節子で映画化された作品のリメイク版ということである。
主演は丹波哲郎、日比野恵子。新東宝時代に丹波の主演作はなかったと言われているが、本作では主役である検事の役だったことに間違いはない。その妹役の日比野は新東宝では専ら時代劇の多かった人である。その恋人役が天知茂で、他に筑紫あけみ、その弟役で北原隆などが出演している。
北原は「特別機動捜査隊」の森田刑事を長く演じた役者だが、元々は日活ニューフェースの1期生(54年主役でデビュー)、つまり宍戸錠などの同期生である。しかし、すぐに松竹に移籍しているので、新東宝作品にも出演していたのは意外であった(二本だけのようだが)。ちなみに村上不二夫こと三村恭二はその「特捜隊」でも演じる新聞記者役をここで早くも?演じている。
いずれも、大蔵貢率いる新東宝らしくない作品に思えるが、この年後半くらいからエログロ路線がお目見えしてくる。上記は56年前半の作品である。
遊星王子
デビューは54年で、三村恭二という芸名であった。三村というのは彼をスカウトした撮影監督の三村明にちなんだものだろう。57年に三村俊夫に改名しているが、この三村俊夫時代に出演したのがドラマ「遊星王子」(58年)であった。どういう経緯で彼が抜擢されたのかは不明である。当時30歳で、体系もスラッとしているわけではなく、おっさん体系だし。とにかく、この時は新東宝との契約を解除し、撮影に望んでいたようだ(終了後、二本だけ新東宝映画に出演している)。
「遊星王子」といえば「月光仮面」の後番組。当時、宣弘社が新たに文芸部員として採用したのが伊上勝と阿久悠だったというのは有名な話。この伊上が入社早々、企画書として提出したのが「遊星王子」であった。伊上は全46話の脚本を一人で担当し、60~70年代を代表する(特撮)脚本家となっていった。
作品自体は今見ると、大変滑稽で稚拙なものとしか言えないが、国産テレビ初の宇宙人ヒーローに挑戦したことは特筆ものだろう。OPの王子の決めポーズがもがいてるようにしか見えないのが笑える。
三村以外のレギュラーは「月光仮面」にも出ていた子役の日吉としやす、刑事役の武藤英司、そして早ミチ子。ゲスト陣もさほど有名な役者は出ていないようで、初期に「月光仮面」の大瀬康一、中期に高木二朗、後期に嵯峨善兵が出演しているくらいだろうか。
ちなみに翌年東映で映画化され、当時はスリムな二枚目だった梅宮辰夫が王子を演じたのは有名だろう。テレビ版に比べると数倍カッコよく見えるのは仕方ない。
とまあ、「遊星王子」の話題は以前取り上げたかもしれないが、そこはスルーで。
桃色の超特急/私は嘘を申しません
まずは「桃色の超特急」(61年)。読み方は「ピンクの超特急」である。主演は松原だが、ヒロインである大空真弓がなんと一人四役を演じる。主題歌も大空が歌っているという。
他に鳴門洋二、花井蘭子、杉山弘太郎(杉江弘)、映画版「まぼろし探偵」の中岡慎太郎、そして丹波哲郎など。丹波は前年の60年に社長の大蔵貢とケンカして新東宝を去っているのだが、その60年末に大蔵が退陣したので、出演したのだろうか。
もう一つは「私は嘘を申しません」(61年)。主演は松原で、ヒロインは新人の水原ユカ。この水原ユカについては、以前触れたことがあるが、まあ新東宝最後の新人女優といっていいだろう。デビューして立て続けにヒロイン級の役を四本演じたと思ったら、新東宝が倒産してしまった。デビューから半年もたっていなかったのである。翌年から松竹映画に出演していた水原ユカリは同一人物ではないかと思われる。
さて本作には大物喜劇人がずらりと登場する。柳家金語楼はじめ、デンスケこと大宮敏光、泉和助、トニー谷、並木一路、南利明、由利徹、坊屋三郎などである。泉和助は日劇ミュージックホールの専属コメディアンだった人で、映画出演は多くない。70年に50歳の若さで亡くなっている。同じ日に日活などで活躍した二本柳寛(52歳)も亡くなっている。
ちなみにタイトルは当時の首相である池田隼人の発言からで、流行語にもなっている。