こんばんは。
まず初めに、降水過程において氷粒子が関与する「冷たい雨」の概要について触れておきたいと思います。
純粋な水滴は-40℃くらいまでは過冷却の状態を維持しますが、氷晶核となるエーロゾルがありますと、これを核として過冷却の水滴は凍結したり、水蒸気が昇華して氷晶が生成されます。一度、氷晶が生成されますと、「一般気象学」p59 表3.3 にありますように、氷に対する飽和水蒸気圧は水に対するそれよりも低いので、水滴と氷晶が共存している雲の中では氷晶に対しての方が過飽和になりやすく、氷晶の方が早く成長して雪になります。これが落下中に融けた場合、雨となるわけですが、このような過程で降る雨のことを「冷たい雨」とよんでいます。
(a)
以上を踏まえて、選択肢を考えてみます。(a)は本文の通りですが、一般的に氷晶核の数は、水蒸気を凝結させる働きをする凝結核の数よりもずっと少なく、このため実際の大気中では、巻雲や巻積雲といった上層雲でエーロゾルの助けを借りず、過冷却水滴が-40℃以下で自発的に凍結することによる雲粒で構成されることがあります。したがて、本文の内容は正しいということになります。
(b)
先ほどの冒頭でも触れましたが、氷に対する飽和水蒸気圧は水に対するそれよりも低いので、水滴と氷晶が共存している雲の中では氷晶に対しての方が過飽和になりやすく、氷晶の方が早く成長して雪になります。
例として「一般気象学」p59 表3.3 を使って、ある雲の中で過冷却水滴と氷晶が混在するとき、気温が-10℃、水蒸気圧が2.70hPaである場合で考えてみます。表3.3の温度が-10℃のところに着目しますと、飽和水蒸気圧は、過冷却水滴に対しては2.86hPa、氷晶に対しては2.60hPaとあります。
すなわち、水蒸気圧2.70hPaに対して過冷却水滴の飽和水蒸気圧は高く未飽和ですが、氷晶に対してのそれは低く過飽和という状態です。つまり、過冷却水滴は自身に飛び込んで入ってくる水分子よりも自身から出ていく水分子の方が多くなるため次第に小さくなっていくのに対し、氷晶は自身から出ていく水分子よりも周囲の過冷却水滴から出ていったものも含む水分子が自身に飛び込んでくる多いことによって次第に成長が進むことを意味しています。
したがって、本文の内容は正しいということになります。
(c)
氷粒子の落下速度が異なりますと、氷粒子どうしが衝突し、付着することで質量が増加していきます。このような氷粒子の成長過程のことを「凝集過程」とよんでいます。
例えば相対的に低温の地域のスキー場では雪片どうしが付着しにくいため「サラサラ雪」で、相対的に高温のスキー場では逆に雪片どうしが付着しやすく湿った雪質というイメージがわかりやすいかと思いますが、凝集過程においても同様で、異なる落下速度の氷粒子どうしが衝突したとき、温度が高くなるほど付着しやすく、ぼたん雪のような大きな雪片になりやすくなります。したがって「温度には依存しない」とする本文の内容は誤りということになります。
(d)
地上の気温が0℃以上である場合、降水が雨になるか雪になるかは地上付近の気温とともに湿度も関係してきます。0℃以上になりますと、上空から落下してくる雪片は周囲の空気から顕熱を受けることにより融解させられる方向に働くのですが、その一方で雪片の一部が昇華するときに潜熱が奪われるという働きも起きます。気温が同じであれば、湿度が低いほど雪片が周囲から受ける顕熱の量より、昇華によって奪われる潜熱の量が多くなり雪片は融解しにくくなります。したがって、本文の内容は誤りということになります。
よって、正解は②ということになります。
では。