立憲民主党・岡田克也による国会質疑での執拗な追及をきっかけに、高市早苗総理が台湾有事に関して述べた答弁をきっかけに、中国政府の対応がエスカレートしている。
■高市答弁について
これについては、以下に正確に全文を書き起こしていただいた方がいるので、ぜひ全文を読んで判断すべきである。
「集団的自衛権の一般の行使を認めるものではなく、他国を防衛すること自体を目的とする集団的自衛権の行使は認められないという政府の見解に変更はございません」。
「これはやはり他国に、….台湾でしたら他の地域と申し上げた方がいいかもしれませんが、あのときは確か、台湾有事に関する議論であったと思います。その台湾に対してですね、武力攻撃が発生する、まあ、海上封鎖っていうのも、これ、戦艦で行い、そしてまた他の手段も合わせて、まあ、対応した場合には、武力行使が生じ得る話でございます。あの、例えば海上封鎖を解くために米軍が来援をする、それを防ぐために何らかの他の武力行使が行われる。まあ、こういった事態も想定されることでございますので、まあ、そのときに生じた事態、いかなる事態が生じたかっていうことの情報を総合的に判断しなければならないと思っております」。
中国政府が過剰反応したのは、答弁そのものよりも、「朝日新聞」の当初の見出しに中国大阪総領事が過剰反応したのがきっかけだろう。
「産経新聞」が「朝日新聞」記事の見出し訂正を報じている。

「朝日新聞」はXにて、見出し訂正を認め、政治的な意図はないと釈放するポストをしている。
さて、中国による対応がエスカレートする中で、文化芸術関係の公演が中国政府の指示で中止が相次いでいる。
具体的には、『劇場版鬼滅の刃』や『劇場版クレヨンしんちゃん』の映画上映が中止され、ライブなども中止に至っている。
その時々の政治の都合で文化イベントが中止されるのは、全体主義国家だとあらためて感じたところである。
昔から、中国は共産党幹部の胸先三寸で朝令暮改が起こり得る国である。
■中国と台湾
台湾は国名は中華民国であり、中華人民共和国とは別の国家である。1949年に大陸で中華人民共和国が成立した後、中華民国の中央政府が台湾に移転し、戒厳令を敷いて統治していた。
そして国際的には、中華民国と中華人民共和国で中国の国際的な代表権をめぐって争ってきた。
国連では1972年まで中華民国が常任理事国として中国の代表政府だったが、1972年以降、中華人民共和国が常任理事国となり中国の代表政府となっている。
日本は1972年に中国と国交を結び、中華民国とは断交となっている。
だが1980年代末には、台湾で大きく政治状況が変わってくる。
台湾で民主化闘争が高揚し、1987年には戒厳令を解除。総統選挙で国民党だが台湾独立派の李登輝総統が選ばれ、自由民主主義国家として改革が進む中で、状況が大きく変わってきた。
さらに2000年の総統選挙では台湾独立を党是とする民主派政党・民主進歩党の陳水扁総統が選ばれ、中国の台湾政策は「台湾独立を認めず中国に編入する」という方向を鮮明にする。
台湾の方では、自由と民主主義を享受する多くの人々は中国への編入を望まないが、表立って独立を宣告すると、自分たちが享受する自由や民主主義が壊される懸念がある。だから中華民国のまま現状維持を望むという声が多数となる。
だが、こんどは中国で、毛沢東主義者の習近平が国家主席の座に就く。それは、それまでの鄧小平以来の改革開放路線の流れを引き継ぐ指導者からの一党独裁内部の「政権交代」であり、習近平は香港に対して強硬姿勢で統制を強化し、香港の民主主義は圧殺された。そして台湾に対しては軍事的威嚇を繰り返すようになる。その先には、台湾武力侵攻もありうるとの見方がある。
なお、「一つの中国」とは、国際社会に中華民国と中華人民共和国という2つの中国があることを認めず、国際的な代表権はどちらか一カ国のみという考え方である。
日本政府は、中国が要請する「一つの中国」を認めていると書いているメディアがあるが、これは日中共同声明を正確に読むべきである。
日中共同声明の第3項には、こうある。
「中華人民共和国政府は、台湾が中華人民共和国の領土の不可分の一部であることを重ねて表明する。日本国政府は、この中華人民共和国政府の立場を十分理解し、尊重し、ポツダム宣言第八項に基づく立場を堅持する」。
https://www.mofa.go.jp/mofaj/area/china/nc_seimei.html
「台湾が中華人民共和国の領土の不可分の一部である」と述べているのは中華人民共和国政府である。
そして日本政府は、この立場を理解、尊重するとある。
ポツダム宣言第8項とは、日本国の主権が及ぶ地域は本州、北海道、九州、四国および連合国の決定する諸島に限られるというものである。
「「カイロ」宣言ノ条項ハ履行セラルヘク又日本国ノ主権ハ本州、北海道、九州及四国並ニ吾等ノ決定スル諸小島ニ局限セラルヘシ」。
ポツダム宣言第8項は、サンフランシスコ平和条約及び日華平和条約で上書きされており、その後、沖縄や小笠原などアメリカが統治していた諸島は日本に返還されている。
ここで問題にすべきは、日本政府は「台湾が中華人民共和国の領土の不可分の一部である」という立場を理解、尊重しているが、「承認」しているわけではないということである。
これは、
前原 志保(九州大学准教授)が『東洋経済』オンラインで寄稿しているが、
そもそも立法文書や行政文書を読み慣れていれば、その言い回しから気付くことである。気付かない人は、「一つの中国」を「台湾が中華人民共和国の領土の不可分の一部である」を意味するものだと思っているであろう。
■公演中止と音楽関係者の反応
ここまで長々と高市答弁や中国と台湾をめぐる問題について述べてきましたが、いよいよ本題に入りたい。
中国政府の指示による観光やイベント中止に関連して、シンガー・ソングライターによる発言をきっかけに、ミュージシャンや音楽ライターの中から、中国政府でなく、高市総理を批判する声が出始めている。
全体主義的な監視統制国家が、すぐ隣の自由民主主義国家の領有権を主張して、国際法違反の「武力による威嚇を伴う現状変更」または直接の武力侵攻を示唆している。しかも有事となれば、日本のシーレーンが封鎖される懸念が大きいわけで、日本も無縁ではない。
そうした覇権主義・領土拡張主義の野望を抱く全体主義国家の問題、それも文化統制を平気で行う行為をスルーして、日本の総理を叩くというのは、本末転倒としかいいようがない。
それも思想的な理由だけではなく、中国での公演というビジネス上の利害が絡んでいることが見え隠れする。
中国ビジネスを行う人たちは、中国批判をすれば一発で終わりですから、中国政府については不問ないし擁護しつつ、中国政府にとって邪魔だったり楯突く人たちを非難するようになるのだろう。
分かりやすい例としては、香港返還後のジャッキー・チェンの発言がそのようなものだから。
この点では、大阪大学名誉教授でテルミン奏者の菊池誠さんのnote記事が的確である。
https://note.com/kikumaco/n/nc9ec18aed71b
そもそも中国でのポピュラー・カルチャー、ポピュラー・ミュージックをめぐる地位は緊張関係をはらんでいる。
1980年代にはロック・ミュージックは「西側資本主義の頽廃文化」として禁止されてたが、半ば黙認という形で活動していた。
その後、天安門事件を経て、公演は事前申請をして歌詞や楽曲の検閲を経て許可され、当局の都合次第で開催が不許可になるという統制下に置かれている。そして習近平政権以降は、文化統制を強化している。たとえばテレビなどのメディアからヒップホップが排除されている。
西側諸国のミュージシャンでも、たとえばU2のボノはチベット支援のコンサートに出演したことから中国での公演での入国許可が降りなかったとか、ビョークがチベット独立を発言したことから中国政府により抗議を受けたりしている。
つまり、西側諸国のミュージシャンは「大目に見られる」ということはないようである。
西側諸国では、政権の政治的な都合での公演中止などは、ありえない。
音楽をはじめ表現活動をする人たちは、このことをよく考えるべきである。
この間、日本の政権批判をするミュージシャンたちの言動からは、そうした問題性というものがまるで見えてこない。
また、ミュージシャンがそういう利害がらみであるというのなら、それは「セルアウト」というべきだろう。
セルアウトとは、アーティストやミュージシャンが、商業的な成功のために自分の信念や作品への制作態度を曲げる行為のことである。
「全体主義に媚びるミュージシャン、下心丸見えセルアウト!」(ライムを踏んで読んでもらいたい(笑))という感じであろう。
そういうわけで、再びキングギドラの「公開処刑」を貼っておきたい。
「星の数ほど居るワックMC これ聴いてビビって泣くMC」
「キメェ曲作ってヒット狙う でまた今月も1個セルアウト」
「あまりに大金払う精出る 資本主義モロ出しレーベル」