♦︎J
「お願いしまーす!」
収録前の楽屋。
メンバー、スタッフが、入れ替わり立ち代わり慌ただしい。
「リーダー、その衣装の着方、変くない?」
相葉ちゃんが首を傾げながら俺に近づいてくる。
「へ?そう?」
「そのストール、変でしょ!」
俺の首に巻いたストールに手を伸ばす。
「ありがと。」
首を伸ばして、相葉ちゃんのいいように直してもらう。
相葉ちゃん、おしゃれだかんな~。
俺、こういうの、わかんねぇもん。
「え?それより、こうじゃないの?」
おしゃれ番長、松潤も加わって二人掛かりになった!
「違うよ~、こうじゃない?絶対こっちのがカッコいいって!」
「そうかな?大野さんにはこっちっしょ?」
二人でなんだかんだと楽しそうに俺の衣装を弄る。
え?本当にこれでいいの?二人とも遊んでない?
「翔ちゃん、翔ちゃん!どっちがいい?これと……これ!」
呼ばれた翔君が、俺の方を向いたから、俺もにっこりアイドルスマイル。
「どっちも……似合ってる?」
「ええ~っ!そんなことないでしょ!こっちのがいいって!」
「だから、こっちだって!」
二人がきゃいきゃい騒ぎながら俺の衣装を弄りまわる。
ええい、どっちでもいいから!って、叫びそうになった時、
ニノが近づいてきて……。
「リーダーにはこれでしょ?」
ニノがササッと直して、にっこり笑う。
「あはは、うん、似合う~っ!おおちゃん可愛いっ!」
相葉ちゃんの黒目がちな瞳が耀く。
「ずりぃよな、大野さん、カッコいいも可愛いも似合っちゃうんだから。」
松潤が楽し気に笑う。
「可愛いけど、顔に影ができちゃうと照明さん大変だよ?」
翔君が、ササッとストールを引っ張って、俺の前髪を直す。
ニノが親指を立て、何か仕掛けた時のあの顔で笑う。
え、俺……どんな?
衣装ラックの横の全身鏡の前に立つと……。
「リーダー、超似合ってる、マチ子巻き!」
みんなが大爆笑して……。
鏡に映ったのは、頭と首にストールを巻いた俺。
昔の女優みたいな?
「ニノっ!」
俺が叫ぶと、大笑いしながらニノが楽屋を出て行く。
「似合ってるよリーダー!」
相葉ちゃんが俺の肩を叩き、松潤がニヤニヤしながら、親指を立てる。
「本当に可愛いけど……。」
ストールを引っ張って首が、うぉっと苦しくなった俺を、助けてくれたのは翔君。
首と頭からストールを外すのを手伝いながら、翔君がつぶやく。
「そう言えば……引っ越すんだって?」
「そうなんだけど……まだ考え中。」
「どうしたの?何かあった?」
「いや、そういうんじゃないんだけど……そろそろかなって。」
今の家も、だいぶ長く住んだから、いろいろめんどくさくなってる。
結構知れちゃってるし、セキュリティが、とか、マネージャーが言い出して。
「いいとこ見つからないんだったら……俺のマンション、空きあるよ?
セキュリティ的にも申し分ないと思うし。」
翔君のマンションかぁ。
確かに翔君ならそういうの、ちゃんとしてそう!
「何?引っ越すの?」
松潤が話に入って来る。
「うん、しようかなって。」
「リーダー、引っ越し?」
相葉ちゃんも入って来た。
「一緒に不動産屋、回ってあげよっか?一人だと悩まない?」
そうなんだよ。悩むんだよ~。どこでもいいのに。
「なんなら、俺の家、来る?」
松潤がニヤッと笑う。
「「俺の家?」」
聞き返したのは翔君と相葉ちゃん。
「そ、シェアハウス!」
松潤が楽し気に笑って、楽屋を出て行った。
顔を見合わせた相葉ちゃんと翔君が、ブンブンと首を振る。
「一度見においでよ、マンション。」
「いっぱい物件見た方がいいって!」
楽屋を出ながら両脇から言われ、交互に二人を見る。
「結構、いいと思うよ、俺のマンション。」
「今はいろいろ最新式だから、勉強した方がいいって!」
そうだよなぁ、物件、いっぱい見た方がいいんだよなぁ、きっと。
翔君のマンションも、しっかりしてそうだし……。
スタジオに着くと、松潤と話していたニノが、俺らの方にやってきた。
翔君と相葉ちゃんは、スタッフに呼ばれて松潤のとこへ。
「何?引っ越し?」
「うん、考え中。」
「しょうがないなぁ、話し聞いてあげるから、ご飯行く?」
「どうせ、俺のおごりだろ?」
「当たり前でしょ!」
「ラーメン以外は出さないからな。」
「じゃ、ラーメンで!」
ニノがニヤニヤ笑って、松潤のとこに戻って行く。
「え?あれ?行くって言ってないかんな!」
ニノが頭上で手をヒラヒラさせたのと同時に、
翔君が俺に向かって、おいでおいでをする。
小走りに駆け寄りながら考える。
さて、どうしよう?
a 翔君のマンションを見に行く
b ニノと食事に行く
c 相葉ちゃんと不動産屋さんを巡る
d 松潤の部屋に行ってみる