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「どう?決まった?」
収録終りに松潤が寄って来る。
「決まるわけないじゃん。」
さっき話したばっかなのに。
俺がクスクス笑うと、松潤が俺の肩に腕を回す。
「取りあえず、来ちゃえば?ウチ。」
松潤のニヤニヤ笑いはいつものこと。
でも、いつもより楽しそうなのは……。
「おもしろがってんだろ?」
「ん?何が?」
松潤の片眉が上がる。
「……周りの反応。」
「え?そんなことないよ。」
松潤のニヤニヤ笑いが顔いっぱいに広がって……。
他のメンバーの様子を窺いながら、俺の頭を抱き込む。
「俺と一緒は便利よ?飯は作るし、掃除はするし。」
「そんなん、俺だってやるわ。」
「あなた好みの音楽と料理とお酒……いつでも用意しちゃうよ?」
それはちょっといいかも~。
一人暮らしもいいけど、何かとめんどいかんな。
疲れて帰って風呂沸かす気になんねぇし、飯作るのもなぁ。
朝ならいいんだけど。
朝なら、逆に作りたくなっちゃったりするし。
朝ごはんの買い物して、しっかりした朝ごはんとか食べると、
ちゃんと生活してるような気がする。
「リーダーが料理作りたかったら、作ったっていいよ?
朝ごはんはリーダーが作る?俺、朝苦手だし。」
おー、そうだな?
そういうのもありだよな。
夜は松潤がツマミにもなるいいもん作って、
朝は俺が体に良さそうなもん作って。
「ね?一緒に暮らすのも良さそうじゃない?」
いいかも~!
っととと、松潤の口車に乗るとこだった!
ダメだ、ダメだ。
松潤、すぐ友達呼びそうだし、第一、家にいんのか?
毎晩飲みに行ってんじゃねぇの?
それじゃ一緒に暮らしても、掃除も料理も俺ばっかになるんじゃね?
「やめやめ、さすがに一緒はなぁ。」
「そんなことないと思うけどな……。
あ、じゃ、試しに今日ウチ来ない?」
「え?今日?今から?」
「そ、今から!善は急げ!」
「何が善だよ!」
「いいから、いいから!」
「え、ちょ、ちょっと!松潤!」
松潤に腕を引っ張られ、楽屋を出ようとすると、俺を呼ぶ声。
「智君?」
「リーダー!」
「おおちゃん、どこ行くの?」
「え、なんか……わかんねっ!」
ニヤッと笑った松潤が勢いよくドアを閉め、
俺はそのまま松潤のマネージャーの車まで拉致られて……。
強引に乗せられると、そのまま松潤のマンションへ。
「マジか。」
真剣な顔を作った松潤が、俺に顔を近づける。
「マジ。」
またまたニヤッと笑って、楽しそうに背もたれに体を預ける。
俺も仕方なく……シートに体を沈め、がに股の太腿をパンパンと叩く。
なんか……ちょっと緊張する……。
芸能人の家だぞ?
松潤の家だぞ?
キラキラとか、すっげぇ広いとか……。
超高い、高級家具とか並んでたりして……。
すごくね?
「あ、今、芸能人の家、とか思ったでしょ?」
「え?わかった?」
「言っとくけど、あなたも立派な芸能人だからね?」
「え……そう?」
松潤は、ったくってつぶやいて、呆れたように俺を見る。
「これだから、あなた、ほっとけないんだよ。」
そんなこと言われても~。
ほんとに俺、なんかちょっと違うような気がすんだよなぁ。
松潤みたいなげーのーじんと。
「で、どうする?」
「何が?」
「ご飯。食べるでしょ?」
言われて思い出した。
確かにお腹減ってる。
「今からだと、家にあるものになるけど、いい?」
いいも何も!
食べさせてもらうのに、贅沢なんて言いません。
俺がうなずくと、松潤が身を乗り出して、指を広げる。
「イタリアンならできるかな?タコとモッツアレラあるし。
あとは……俺が適当に作るテキトー創作料理。
どっちがいい?」
言いながら、指を折る松潤。
どっちも旨そうだよなぁ。
松潤、イタリアン得意だし。
適当に作ったものでも旨そうだし。
さて、どっちにするか?
a イタリアン
b 創作料理