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前稿「その12「醜形恐怖症」」からの続きです。
これまで誰にも言った事が無かった心の病、「醜形恐怖症」である事を告白した猫。
私は仕事の手が空いた時に、醜形恐怖症に関して調べる事にしました。
この病気の特徴的な点として、自分の顔が一般的に言って美人、美形であっても、自分を醜いと感じてしまうという点でした。
つまり元々の造形が酷いので、醜形恐怖症になるのでは無く、幼い頃の親からの虐待によって自分は醜いのだと思い込んでしまった結果そうなるようでした。
猫の名誉の為にも書いておきますが、彼女の顔は不細工ではありません。好みは人それぞれでしょうけど、私は可愛いと思っています。(笑顔がたまらなく愛おしい。彼女が馬鹿笑いしてくれると、それだけで幸せな気持ちになります)
彼女の打ち明け話を聞く度に、私は彼女に一つだけ隠し事をしている自責の念に駆られていました。
そうです。
過去の不倫の数々です。
私は自分で言うのも何ですが、倫理観の非常に高い人間でした。ですから一般的に不倫をする事が如何にいけない事であるかを重々承知していました。
それにこの時の私は、共依存によって元配偶者の事を完璧な妻だと思い込んでいましたから、その完璧な妻を裏切ってしまった自分は、とても最低な男であるとも考えていました。
(※共依存に関してはこちらをご覧下さい→①「共依存の恐怖」、②「モラハラ被害者が、加害者から逃れられない理由」)
ちなみに、今までの彼女には、前妻の愚痴を結構言っていましたが、猫には決して嫌われたくなかったので、前妻の愚痴はほとんど(と言うか全く)言っていませんでした。(愚痴話をしなくても、猫とは他の話で盛り上がれたと言うのもあります)
つまりこの時点では、私が20年もヒステリーな前妻から、モラハラや中傷、DVの類を受けて来た事を、猫は全く知りませんでした。
自分が過去に不倫をしていた事を、言おうか言うまいか……。
言って嫌われないだろうか?最低な男だと思われないだろうか?
こんな心の葛藤が暫く続きました。
人は心で考えている事が、口に出てしまう生き物です。
私は時折、こんな台詞を吐くようになりました。
「俺は最低な人間なんだよ」
とか、
「俺は駄目な男なんだよ」
などの自虐的な言葉です。
当然、猫は不思議に思います。
「なんで?なんでエルくん駄目な男なん?それならわたし、その駄目な男に惚れたって事になるやん」
「うーん……」
私は暫く考えました。言うべきか言わざるべきか。
「これ言ったら、猫ちゃん俺の事確実に嫌いになると思う。だって、それぐらい最低な事だからね。でも、いつかは言わないと駄目だと思うんだよね。いつまでも隠し通せる事じゃ無いしさ。ま、でもやっぱ今は無理かな。もうちょっと猫ちゃんと仲良くなってさ、よし、今なら言っても大丈夫って時が来たら、ちゃんと話すよ」
「まあ、別にええんちゃう?誰にでも隠し事の一つや二つはあるんやし、エルくんが話したくなった時に話してよ」
「……うん。分かった」
その日はそれで会話は終了しました。
しかし近いうちに言わなければならない。
私の心は重く重く沈んで行きました。
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