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妻「猫」のバックナンバーはこちら→泥棒猫の言い分 目次
猫から送られてきた、身も心も凍り付くようなメール。
私は訳が分かりませんでした。
確かに傷つく事は言ってしまいましたが、あの程度で大袈裟なと言う気持ちも正直ありました。
メールを読んだ私は、彼女に電話を掛けます。
一回目……。出ません。
二回目……。出ません。
三回目……。出ません。
空しく響く呼び出し音だけが、延々と続きました。
幾ら掛けても電話には出ないかも知れないと思った私は、次にメールを送りました。
「別れるとか意味が分からないよ。とにかくこのままモヤモヤしたままお別れなんて出来ないから、せめて電話に出てくれよ。頼む」
送信してから数分後に電話を掛けると、やっと猫は電話に出ました。
「あ、もしもし?」
「……はい」
猫はか細い声でそう答えました。鼻をすすっていたので、恐らく泣いていたのでしょう。
「いや、ごめん。本当に悪かったよ。たださ、俺も本気で言った訳じゃないよ。ほらさ、男子が好きな女子に良くするやつだよ。わざと悪く言ってさ、からかうみたいなね。でも、傷ついたのなら謝るよ。ごめんな。ほんと悪かったよ」
「わたしもな、あなたが本気で言ってない事も分かる。男性が女子にする悪ふざけなのも分かっとる」
「うん」
「これはな、わたしの悪い所なんや」
「悪いとこ?」
「エルくんには知られたくない」
「いや、言ってくれないと分からんやんか」
「わたしはそれを言うのと、ちんぽ一時間しゃぶるのどっちがええって言われたら、迷う事無くちんぽしゃぶる方を選ぶ。わたしにとってはそれぐらい嫌な事なんや」
「え!?そんな凄い事なの?」
「うーん……、たぶんエルくんが聞いても、ふーん何だそんな事かって言うかもしれん。けどな、わたしにとっては、ほんま一番知られたく無い部分やねん」
「そっか……、ま、言いたく無かったら言わなくても良いけどさ」
それから、暫くの沈黙がありました。
「分かった。言う」
沈黙を切り裂くように、猫がそう言いました。
「え?言うの?あ、じゃ……」
「直接は言いたく無いから、メールする。それ見て今後わたしと付き合うかどうか決めて」
「分かった」
「もう辛いから電話切ってもええ?」
「ああ、良いよ。じゃ」
私はそう言って、電話を切りました。
(それ程俺に話したくない事って何だろう)
私はそう思いました。
電話を切った後、色々と思考を巡らしましたが、これと言った答えは見つかりませんでした。
それから数時間が経過してから、猫から長文のメールが届きました。
さすがに内容は公開する事は出来ませんが、幼い頃に親から受けた虐待によって、自分が醜形恐怖症になってしまった事。そしてその醜形恐怖症とはどう言った病気で、自分はそのせいでああ言った冗談を冗談と受け止められない事。そんな面倒くさい自分を受け止められるのか?嫌いにならないかと心配する内容へと続いていました。
醜形恐怖症。
初めて聞く病名でした。
ただ、私の感想はやっぱり、
「ふーん、何だそんな事か」
でした。
本人にとっては、とても勇気のいる告白だったのでしょうけど、今は細分化されて色々な病名がついているだけで、昔はそんな病気は無かったと思います。そう言う意味で言ったら、何も抱えていない人間の方が少ないと思います。私だって病名を付けようと思ったら、幾つもの精神疾患を抱えていると自分でも思います。
ただ、今後二度と彼女の顔の事で、冗談を言ったりする事が無い様に気を付けようとは思いました。
さて、メールを読んだ私は、直ぐに猫に電話を掛けました。
そしてこう伝えました。
「もう二度と、あなたの顔の事を話のネタにはしない」
事と、
「猫は可愛いよ」
って事です。
猫は言いました。
「もう一度だけ、あなたの言葉を信じる」
と。
私は、改めて宜しくねと答えました。
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