その6)小田さんの評伝「空と風と時と」を読む | IN THE WIND

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小田和正さんの評伝「空と風と時と 小田和正の世界」(追分日出子著、文藝春秋社)で、追分さんは小田さんの中高の同級生でオフコース結成時からのメンバーだったYASSさんこと鈴木康博さんのライブを取材し、2022年8月の横須賀(270ページ)、2023年6月の東京(570ページ)にそこそこページを割いている。

 

演奏した曲やMC、観客の反応などライブの様子を盛り込み、1曲丸々の歌詞も引用している。そして去年の東京でのライブの後には、YASSさんに小田さんについてのコメントをもらおうとアポを取ったようだ。そのやりとりの一部が572ページに書かれているが、YASSさんは取材にピシャリと扉を閉じた。

 

小田さんが主体となっている本に発言することは控えさせていただきたいです

 

オフコース脱退後、YASSさんの歩んできた道を知っていれば、十分予想された答えだろう。追分さんもある程度覚悟していただろうし、YASSさんのライブを取材したのもMCでの小田さんについての発言を期待してのことだろう。本書によると「この本には鈴木さんがたくさん登場します」と食い下がってもいる。

 

でも、YASSさんは自分のことについては話しても、小田さんについてのコメントはほぼ口にしなかった。他にどのようなやりとりがあったのかは知る由もないけれど、先の答えに続けてYASSさんは「お互い歳を取ったので頑張ってくださいという以外に言うことはないんです」と語ったとされる。

 

まさに取り付く島もないと思うのだが、YASSさんもオファーがあった時点でそう答えて取材を断らなかったのはなぜだろう。それはともかく、追分さんはラジオやパンフなど他のYASSさんへのインタビューの引用で補いながら、現在の小田さんとYASSさんの関係を何とかして描こうとし、577ページに次にように書いた。

 

「二人はそれぞれの道を突き進み、ここまで来た。七十五歳を迎えてなお、二人が二人とも、あたらしい楽曲をつくり、人前で歌を歌いつづけている。もうそれでいいのではないか、そう思ってみた」

 

「そう思った」ではなく、「そう思ってみた」と書いたところに追分さんの本心がうかがえる。本書を上梓して追分さんは相応の達成感を手にしただろう。刊行後、月刊文藝春秋に掲載されたコラムにもその自負がにじむ。もし、YASSさんの取材だけやり直したいと思っているとしたら、追分さんがYASSさんの評伝を書くほかない。

 

↓以前の記事

https://ameblo.jp/tenotookaoka/entry-12836198979.html (小田さんの評伝「空と風と時と」を読む その3)

https://ameblo.jp/tenotookaoka/entry-12836066670.html (小田さんの評伝「空と風と時と」を読む その2)

【19日の備忘録】

朝=ご飯1膳、ベーコンとエリンギのソテー、リンゴ、昼=会議弁当。飲酒=赤ワイン4杯。体重=60.2キロ。