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考える道具を考える

The instrument which I think

しっかり、という言葉。

最初に気になったのが、
サッカーの本田選手が、
インタビューで答えていた「答え方」の中で‥。

 ‥次の試合までしっかり準備したい。

この「しっかり」の響きが、
選手の決意の表れと、トレーニングの積み重ねを感じさせて、
とても気持ちの良い言葉に感じた。

その後サッカー選手のインタビューでは、
この「しっかり」が頻発され、
最近では野球選手、ゴルフ選手も使うようになった。

昨日のテレビで、
セントラルリーグの開幕延期のインタビューでは、
巨人軍の原監督まで使っていた。

 ‥開幕までしっかり準備したい。


そして、枝野官房長官までも‥

 ‥今後も、しっかり監視していきたい。

しっかりとは、
「基礎や構成が堅固で、容易にぐらついたり崩れたりしないさま。」

あるいは、
「動作・行為を着実・真剣に行うさま。」
という意味がある。誰でもしっている感覚だ。

漢字では、確り、聢りと書く。

やはり決意、覚悟などと繋がる意識の表現だと考えられますね。


でも何となく、気になる言葉です。
私も「しっかり」しなくちゃ!



2011年3月11日金曜日、午後14時46分。

2001年9月11日火曜日、午前9時3分。

1995年1月17日火曜日、午前5時46分。

20世紀後半から21世紀の3つの大きな出来事をしっかりと記憶に留めておく必要がある。

2011年3月11日のこの時間、私は
日本橋丸善の平積みの本を眺めながら、
八重洲方面に歩いていた。

突然、一斉に人々が空を見上げた。

声にならないドヨメキが道端を突き抜ける。
小さな悲鳴‥
一時して、私はそれが、巨大な地震であることに気がついた。

脳にインプットされた瞬間、
空を見上げた。

ビルが紙のように左右に揺れている。
目の前のビルが、覆いかぶさってくるように見える。

眩暈がする。

若者が携帯で状況の把握をしようとしている。

長い、長い揺れ。

幸いにしてモノや看板は落ちてこなかった。
若者は叫んだ! 仙台沖で震度7だってさ!

理解を超えている。
未体験の揺れだ。

‥‥

それから30分後。
東北の美しい海岸に、ツナミという悪魔が襲い掛かっていたとは‥。

私がお世話になっている会社の本社は、
福島県のいわき市にある。

瞬間的に、その危機を悟った。
電話は既に通じない。携帯が通じないのは経験的に分っていた。
大災害の時は、不通が普通なのだ。

しかし、私は、電話をかけ続けた‥‥
既に、呼び鈴の信号音までも響かない。その向こうに、
暗い、暗い、虚無の空間が見えた。

‥‥

3日過ぎた。
皆、元気だった。

5日目。しかし、それ以上に過酷な現実を目の当たりにする。

原発。
まだ、予断は許さない状況だ。
だが、私は、人の覚悟を信じている。
日本人の覚悟を絶対的に信じている。

必ず、成功する!



超訳 ニーチェの言葉。
白鳥春彦氏 訳 
ディスカバー21(トゥエンティワン)という聞きなれない出版社刊。

60万部を超えた
ふしぎな哲学書。

箴言集として編集された
ニーチェの言葉。
そう言葉の断片集なのだ。


文脈を理解しようとしない日本人に、
とっておきの言葉の破片が投げ掛けられた。
だから、日本人は、
こうした破片を集めて、再編集する書物を愛する。

  自分の意見を通したいなら、断言することだ!

様々なる意匠とこれまで訳されてきた一冊の中の言葉。
書籍のタイトルが、
「さまざまな意見と箴言」という新しい訳で紹介されている。


私達の世代は、
これはやはり「様々なる意匠」でなければならないのだが、
意匠は意見と箴言となり、
大衆化されたとでもいうのだろうか?

それにしても、
気になる一冊ではある。

2月14日を特別の日と捉える人は、
結構多いのかもしれませんね。

でも、私の、この日は、また特別の日でして、
齢、還暦を迎えた日でもあったのです、
と、彼は告白してくれました。

これでようやく私も、
高齢者の仲間入りができました。
とても喜んでおります、
とも言いました。

老いを感じる年頃でもありませんぞ!
その年齢のイメージと、自分の身体の現状を比較して、
健康であることに感謝したい、
と付け加えました。

‥‥

そして彼は、私に自分の好きな田村隆一さんの、
この詩をプレゼントしてくれました。

  針一本
  床に落ちてもひびくような
  夕暮がある
  卓上のウィスキーグラスが割れ
  おびただしい過去の
  引出しから
  見知らぬカード
  不可解な記号
  行方不明になってしまった心の
  ノートがあらわれてくる
  これは
  光りと影の世界

   詩集 恐怖の研究 補遺から

有難う、私の数少ない、お友達の皆様に、
心から感謝いたします、
田村隆一さんの詩を感じることができれば、
私はまだ健全です‥‥
と彼は、つぶやきました。

世の中、サービス業でのおもてなし競争は激化していますね。
コンシェルジェとか、コンシェルジュとか。

モノが売れなくなった超成熟社会の我が日本では、
お客様一人ひとりのニーズに、
きめ細かく対応しなければ、お客様が逃げてしまう。

モノを提供するのではなく、
感動を体験していただく‥‥。

と、まぁ、そんな、おもてなし競争が続く。


立川志らく師匠がよくやる落語に、
「不精床」がある。

コンシェルジェの掛け声大繁盛の時代に、
こんな理不尽な床屋さんの話を聞いていると、
文句なく笑える。

今の時代だからこそ、笑える。

「不精床」とは、
つまり、とてつもなく不精な床屋の話。


世の中の常識が通用しない床屋とお客の対話が、
速射砲のように飛び出してくる。

  ‥床屋に入ろうとする主人公。
   「すいません! ちよっとお願いしたいんですがね‥」

   「何だ!てめえ!何の用だ!」

こんな話の入口から始まり、
言葉のアヤと洒落が連続する。

お客様を出迎えるのに「何の用だ!」はないでしょうにね。
例えばホテルのフロントに行って、
予約しているものですが‥‥と言ったとたん、
「何の用だ!」と凄まれたら、びっくりですね。

こんなありえない世界を、
笑いにまとめてしまうのが、
志らく師匠の凄いところといえますか?


とはいえ、世の中の常識を逆転したらどうなるのか、
その意外性を堪能できるともいえますね。

そして、志らく師匠の真髄であるスピード感が、
この作品をギリギリのところで笑いに留めている、
ともいえますか‥。怒りと笑いの間合いの妙ですか‥。


ということで、まぁ、不条理なことに出会ったら、
まずは笑ってしまうことですね。


あんまり噺に落ちがなかったのですが、
今日も元気で!