適格退職年金(適年)からの移行サポート -5ページ目

退職金制度と適格退職年金の関係

 退職金を安定的に支給するための外部積立として、適格退職年金の契約がなされていました。


 退職金制度と適格退職年金の関係については、いくつかのパターンがありますので、簡単に整理しておきましょう。



「退職金制度と適格退職年金の関係」


パターン1 内払い型

 (「適年」「退職金」)


パターン2 適年のみ

 (「適年」)


パターン3 並存型

 (「退職金」+「適年」)


 退職金制度と適格退職年金の関係ですが、基本的にはこの3つのパターンに集約されます。


 パターン1は、退職一時金を規定した退職金規程と適格退職年金の内容を規定した退職年金規程の両方が存在し、適格退職年金からの支給額が退職一時金の内払いとなっているパターンです。


 次のパターン2は、退職金規程は存在せず適格退職年金のみで退職金制度を運用しているパターンです。
 退職者が発生した際には、退職年金規程に基づき退職金が計算され、その全額が主幹事会社から年金もしくは一時金で退職者に支払われることとなります。


 そして最後がパターン3、並存型です。
 これは比較的規模の大きな企業に多いのですが、退職金規程に基づく退職一時金と退職年金規程に基づく適格退職年金が別々に運用されているパターンですね。


 パターン1の内払い型については、今回の適年廃止問題の対応にあたり、


1.あくまでも適年の解約ないし移換という小規模の改定に止めるのか、


 それとも


2.退職金制度全体の改定を実施するのか


 という大きく分けて2つの道があります。

退職金見直しで一番重要 現在の退職金制度の確認

 まず一番大切な、退職金制度の現状の確認について述べてみましょう。


 現在の制度の内容を確認するポイントはどこにあるのか、良く把握なさって下さい。


 この現状分析から、新制度の方向性の検討、シミュレーションの実施が非常に大切なところであり、ここが終われば、あとは事務作業です。


 この最初のところが重たいがゆえに、とっつきにくい感があるのですが、押さえるべきところをきっちりと押さえれば、人事戦略の点検にもなり、労務管理のポイントも押さえられますので、手を抜かずに点検から方向性検討までを進めましょう。


 退職金規程や、適格退職年金の資料をご用意下さい。
 退職金規程、退職年金規程、適格年金の決算報告書、就業規則一式、人事関連規程一式などです。


 それではざっと現在の制度内容について確認していきましょう。

 まず退職金制度ですが、一般的にはいわゆる最終給与比例方式の退職金制度を採用されていることが多いと考えられます。


 簡単にいえば、退職時の基本給に、その時点の勤続年数に応じた月数を乗じて、退職金支給額を計算する方式です。

  この最終給与比例方式はわが国の退職金制度の中でもっとも一般的な計算方法で、中小企業に限定すれば、たぶん8割近い企業がこの計算方法を採用していたのだと考えられます。



 簡単な例でイメージします。

 勤続40年で支給係数が31.5だとしましょう。

 60歳で定年を迎えられる方のモデル基本給は課長クラスであれば基本給で、38万円とします。

 42年勤続の定年退職であれば、38万円×31.5ですから、モデル退職金は1,197万円といった水準です。


 結構な金額になることが多いですが、認識されていないケースが多いです。

 中小・中堅の企業の場合、中途社員が多いので、実際にそこまでの金額を支給したことは、無いために認識されていなかいことが多いと言えます。


 大雑把ですが、標準的に、部長クラスで1200万円、課長クラスで900万円を少し超えるくらいが、世間相場だったと思います。


 そんなに世間と乖離があるような水準ではないことがわかっただけでも安心する経営者が多いですが、退職金は自社の中長期の人事制度をしっかりと練った上で、運用していくようにしましょう。

中小企業退職金制度(中退共)の現状はどうなっているか

適年の移行先としてスポットを浴びた中退共だが、財務的な課題は強く指摘されていた。

現状はどうなのだろうか?



適年移行で加入者数増加


2002年4月から適格退職年金からの資産の移換が始まり、それから加入従業員が増えてきた。


2012年3月末で適格退職年金の存続が許されなくなることに対する措置である。


適格退職年金から年金資産が移換されて発足した中退共は、2002年度から2008年9月まで15,244企業、加入従業員数は435,313人に及ぶ。


移換企業においては1企業あたり28.5人となっており、中退共全体平均の7.9人を大きく上回る。

これが、加入企業数が減りながらも、近年加入従業員数が増加している理由である。

また適格退職年金からの資産移換を加速するため、2005年4月からは資産移換の制限が撤廃された。

これまでは、過去10年分の勤務に相当する年金資産だけが移換でき、それを超える金額は移換時点で従業員に分配されてきたが、全額が移換できるようになり、移換の煩雑さが軽減した。

資産を移換する企業は予定利回り1%としている健全な資産である。

そのため今後も資産の移換が続けば年金資産と責任準備金の差額は縮まり、欠損額も縮小することが予想される。



加入従業員数は増加中


中小企業向けの退職給付制度である中小企業退職金共済制度は、50年近く前の1959年につくられた公的退職給付制度である。


制度発足以来加入企業数は右肩上がりで増えてきたが、バブル後の90年代後半になって企業数は頭打ちとなり、2000年度の421,708社をピークに減少傾向に転じ現在に至っている。

一方、加入従業員数も右肩上がりの増加であったが、96年度の2,806,362人から減少傾向が続いた。

しかし加入従業員数は2004年度から再度増加に転じ、300万人に迫る勢いである。


直近(2008年9月末現在)における加入状況は、加入企業数377,824社、加入従業員数2,979,596人となっている。1企業あたりの平均加入従業員数は7.9人である。




解消しない繰越欠損

バブル崩壊後の運用環境の低迷によって、中退共の資産運用も厳しさを増していた。

中退共は予定利回りを保証しているため、予定利回りと実際の運用利回りの間に逆ザヤが発生している。


2003年度末において中退共の年金資産は2兆9,886億円であったが、その一方で将来の退職金支払いのための責任準備金が3兆2,523億円に及ぶなどによって、繰越欠損金は2,673億円と年金資産の1割に近かった。


こうした状況を踏まえて2002年11月には予定利回りが見直され、それまでの年3%が1%に引き下げられた。

また実際の運用利回りが予定利回りを超えた場合に支払われる付加退職金についても極力凍結し、予定利回りを超える金額はできるだけ繰越欠損の穴埋めに回されることになっている。

ちなみに2008年3月末での年金資産は3兆5,043億円であり、それに対して責任準備金は3兆6,506億円である。


これを主因として繰越欠損金は1,553億円にのぼる。

年金資産に対する繰越欠損金の比率は4.4%である。

加入企業数や加入従業員数の減少の背景には、予定利回りの低下による魅力の低下に加えて、欠損金の存在による制度自体への信頼性が低下していることがあったためである。